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ゾンビパニック

昼の投稿です。

 「ヴェアアアアア」

 きっしょい臭っさいうるさいの三点セットがそろった魔物と対峙する。奴の名はゾンビ、パニックものだともう何回出てきたか分からないぐらいには有名な死霊である。

 動きは緩慢で倒しやすい部類に入るのだが、組みつかれると噛みつかれ状態異常にされる厄介さと一撃の重さで、多くの初心者プレイヤーを屠ってきた。

 「速突…うぇえ気持ち悪い。」

 ぬちゃっとした感触が槍を伝って腕を襲う。変に肉感もあるせいで他の魔物を相手するより猶更気持ち悪さが襲ってくる。

 「うえぇまだ動くのかよ。」

 しっかりと腹に風穴を開けたというのにまだこっちに歩いてくる。その腕は何だ、ドロドロと腐った肉が剥がれ落ちていってるのか指先からポタポタと垂れ落ちてるぞ。

 「円弧」

 今度は首筋を狙って切り落としにかかる。それでもこっちに足を進めてくる。

 「これ足切ってから攻撃したほうがいい奴か。」

 多分急所の判定が無い、全部位に攻撃して体力を削りきるしか倒す方法が無いと見た。

 そうなら最早無いに等しい機動力をさらに削いで完全に動けなくしたところを叩けば完封できるだろう。すまんがそういうことだ。

 「後でちゃんと埋葬してやるよ。火葬だがな。」

 足を切り落とす。それでも腕を使って這って来る。

 腕も切る。ようやく体力が尽きたのか、動きをようやく止めた。ああよかった、内臓が動き出して襲ってくるとかだったら最悪だった。まあグロ描写抑えてるんだけどね。

 「しっかし、やっぱりカグヤの毒は効果無いか。」

 ゾンビに対して実験してみたところ、苦しむ様子も動きが止まる様子も無かった。

 麻痺の毒は、恐らくだが肺から侵入した毒素が神経系に作用し、筋収縮を行う物質を阻害しているのではないだろうか。そしてゾンビにはそういった神経組織が無い為に、妨害することが出来ないのだろう。

 ダメージを与える毒に関しては、そもそももう痛覚が無いのではといった結論に至った。一応肺から吸い込んだことは確認したのでやせ我慢の線は無い。

 「攻撃力以外で強い所が無いのが幸いだな、本当に。」

 これで某一人称ゾンビゲーみたいに走って襲ってこられたら確実に勝てないだろう。

 多分ダンゾーも勝てない、あいつの主力毒牙だし。

 「一対一ならいいけど、数いたら対処に困るな」

 範囲攻撃が出来る魔法職だったり遠距離攻撃を持っている弓兵とかならともかく、接近戦を主としている俺ら戦士は飲み込まれかねない。

 「キャタピラーの体液よりかはマシだけど、あの臭いに包まれるのは勘弁だな。」

 まだ討伐数に足りていない、正直もうやりたくはないがイベントを進める為にもゾンビを狩らないといけない。ああ、臭いものから俺は離れられないのか。


 「ヴォォォォォォ」

 さっきと違って太ったゾンビが現れる、もしかして強めの個体だろうか。こっちをまだ視認していないようで、あっちにふらふらこっちにふらふらとよろめいては前に進んでいる。

 そして体型から予想できるように動きが通常個体よりさらに緩慢。多分体力や攻撃に特化しているタイプのゾンビなのかもしれない。

 「まあ考えてても仕方が無いんだけども。」

 槍を構えて走りこむ。さっきの戦いで掴んだ定石を打つために、円弧を足に叩きこむ。

 思ったよりあっさりと切断された足、もしかして防御力は据え置きなのだろうか。

 「そっちの方がありがたい。」

 そのまま倒れこんだ背中に槍を突き刺す。柔らかいと認識したその瞬間だった。

 「ヴォロロロゥ」

 叫び出したと思ったら、どんどん体が膨張していっている。これは確実に破裂する。

 ボンと大きな音を立てて爆発する。そして体内からビシャアと辺りにその腐肉と体液、そしてガスをばら撒いた。

 「これ討伐数にカウントされるのかな。」

 自爆した場合の判定を聞いていなかったな、と内心で反省していると

 「ガァァァァァァ」

 辺りから叫び声が木霊して聞こえてくる。まさに大合唱、夏の田んぼですらここまでうるさくないだろう。

 「なんだ、何が起きた。」

 その声が段々とこっちに近づいてきている。

 ゾンビゲーのお決まりを今思い出す。あいつらは音に寄って来る、そして中には仲間を呼ぶタイプのゾンビがいる。

 「おいおい、嘘だと言ってくれよ…。」

 藪を這い出るように出てきたのは、ゾンビゾンビゾンビ!

 辺り一面ゾンビ、さっき言った最悪の状況が出来始めていた。


いつもご愛読いただき、ありがとうございます。

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