村の外では
祝!6万PV突破!
ありがとうございます!
「おい、どうなってんだよこれっ」
俺らはただ礼儀のなってない初心者に洗礼を浴びせてやろうとしただけだっていうのに、何でこんなことになってるんだよっ。
「なんでフィールドワークの団長副団長がここにいるんだよぉぉッ」
時は少し前に遡る。時間的にちょうどクヌギがプレイヤーキラーと戦い始めた辺りである。
「なあなあ、どうやって後悔させるよ。」
俺らの中の話題はどうやって生意気な初心者を顔真っ赤にさせてぶっ殺し、引退に追いやるかで盛り上がっていた。
「あれやろうぜ、目の前でペットずっと殺しては復活させる奴。どうせペットぐらい貰ってるだろうし。」
「いやいや、ファントムペインでボロボロになるまでいじめてやろうぜ。」
回りに普通の人間だったり現実で関わりのある奴がいたらドン引きするような会話内容、だけどそれが俺ら不適合者に会話を与える格好のネタだったのだ。
リアルを捨て人間性を捨て、ドブのような環境に身を費やしてようやく得た仲間。
だからだろうか、過激さを増していく会話を止める者はもうどこにもいなかったのだ。
「耳穴に虫詰め込んでやろうぜ、好きなんだろあいつら。」
「殺した生き物の内臓でも詰め込んでやろうぜ」
こういった残虐な会話が飛び交ったとしてもただゲラゲラと笑いこんでいるだけ、もうこの場に倫理の文字は存在していなかった。
「なあ、誰か洗脳持ってなかったっけ。それ使ってペットに殺させようぜ。」
仕舞にはここまでの考えまでが場に流れ出す。その外れたネジの具合がより俺らを惨めにさせていった。そしてそれがより俺らのネジを緩めていった。
「なあ、蜘蛛村の前になんかいね。」
その数4人、装備からしてこれも初心者だろうかこっちに向かってきている。
「なあなあ、前哨戦にあいつらボコさないか。」
「いいねぇ。」
全員負けることなんて一切考えていない。この世界においては俺らが中心だ、そういった意識を持っているからこその行動。
「囲む?それとも手加減かけて一斉に飛びかかる?」
「囲むべ囲むべ。」
ニタニタと下卑た笑みを浮かべていることなど声音で分かる。ああ可哀そうに、偶々通りかかっただけなのに。
男2に女2か、なんだよカップルチームか、これは滾るな。
「ねえお姉さん、俺らと遊ばねぇ?」
初心者相手だからと普段出来ないナンパを仕掛ける奴まで出てくる。それはいい、俺らの相手をしてくれよ、そういった声が辺りからも上がり始める。
「……くだらない。」
「…んだとこのアマぁ」
大人しそうな見た目をしている女がそう呟いた。馬鹿にされている、例えそんなニュアンスが無かったとしても、断られたということに矮小なプライドが傷つけられたのだ。
「後で泣いて謝っても済ませねぇからなっ。」
一瞬で頭に血が上った一人が拳を振るう。だが、その拳が当たることは無かった。
「……はっ?」
肘から先が無くなっていた、女の手には刀がいつの間にか握られている。
「くだらない、その程度でイキってるその姿が本当に滑稽でくだらない。」
首が飛んでいる。いつの間に切り落としたというんだ、なんで初心者がそんなこと…
「コナラ、首切るの早いぞ、もう少し待て。」
もう一人の女が飛びかかった別の奴の首根っこを押さえながらそう語っている。
なんなんだこいつら、初心者じゃないのかよ。わけがわからない。
「なんだ、さっきまでの威勢はどうした。」
振りほどこうと藻掻いている男をそのまま抑えながらそう挑発してくる。
でも誰も動けない、さっきの応答をようやく理解してしまったからだ。
「コナラ…フィールドワーク副団長じゃねーかよ…。」
一流クラン、その副団長ともなれば俺らのレベルも装備もスキルも、遥か上を言っているはずだ。中盤辺りのレベルの俺らじゃあ勝ち目なんて無いというのに。
「そっちが動かないなら切っちゃうよーん」
さっきまで後方にいた男がいつの間にか三人切り伏せている。速すぎる、見えなかった。
「これ俺の出番無くね、何で呼んだのよ団長。」
「もしもの為、流石にこの程度だけだとは思ってなかったの。」
ああ、何で。何で俺らはここでも負けるんだ……?
以上回想終わり。
「さて、色々聞きたいこともあったが。」
返り血を浴びた美人がこっちを振り返る。ああ、こんなタイミングじゃなきゃ見惚れていただろう。
「まあこの程度のレベル相手なら聞くまでもなさそうだな。」
鉄槌のワシミヤがこっちに迫って来る。ああ、止めてくれ痛みを味わう前に殺してくれ。
「団員に手を出そうとしたんだ、これぐらいの仕打ちは受けてくれるよな。」
足を潰される。痛覚機能をイキって切っていなかったことが不幸を呼んだ。頭が可笑しいんじゃないか、何でこんなこと平気でできるんだ。
自分たちがしようとしたことを棚に上げて考える。もう目の前の女を悪魔だとしか見ることが出来ない。
「流石に可愛そう。」
慈悲がやって来るのか、そう思った束の間の出来事、俺の首が飛ぶ。
「私たちが来た理由は痛めつけじゃなくてクヌ…新人の所に行く前に倒すこと。」
もはや隠せていないプレイヤーネームを聞きながら、俺の意識は暗転していった。
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