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前例破り

いつもご愛読ありがとうございます。

ユニーク接続数が5000を突破しました!5000人の方々に見られるようになったというのはなんだか恥ずかしいような嬉しいような、背中がかゆくなってきますね。

これからも本作をよろしくお願いいたします!

 「さて、お前が徘徊性か造網性かは議論の余地ありだけど、今日はこんなところでいいでしょう。」

 手帳をぱたりと閉じる。こいつの生態に関してはまた今度、コナラさんが暇なら議論してみよう。もしかしたらもう調査済みなのかもしれないけども。

 ダンゾーはようやくかと言っているのか、やれやれと足を器用に横にあげ、絶妙にうざいジェスチャーをしている。今度の餌カネナクシにするぞ。

 カグヤはというと、さっきダンゾーが食べた鳥が気になるのかずっと網を見て動かない。

 そこに突っ立ってると多分来るものも来ないぞ。あ、こらカネナクシに手を伸ばさない。

 「カグヤお前…最近食い意地張り過ぎじゃないか。」

 こんな子だったか、幼虫の時に俺が餌をやり過ぎて暴食が普通になってしまったのか。

 不味いな、昆虫は過食気味になるまで食べ続けるものもいる。もしカグヤがそのパターンに当てはまってしまったら……。

 「おデブさんになってしまう……。」

 駄目です、そんなのお父さん許しません。これからは食事を見直さないと。

 そう心に決めていると、ポロンと着信音が鳴る。

 『メッセージが届いています。』

 「お、コナラさんかな。」

 ぱっとチャット爛を開く。

  

  コナラ:ごめんなさい、返信が遅くなって。

  コナラ:単刀直入に言うとそこは適正レベル20~30のイベント村。

  コナラ:クエストをこなしきると個人依頼が受けられるようになる。

  コナラ:受けると屋敷に飛ばされて、24時間以内に従魔を探し出すゲームが始まる。

  コナラ:24時間以内に見つけられないと、その従魔は消えちゃうから注意して。

  コナラ:でも従魔の種族で何処にいるか決まるから簡単。昆虫族は屋根裏部屋。

  コナラ:道中で手に入る武器防具が優秀だからそのままやると良い。

  コナラ:もし不測の事態が起きたら連絡して。

  

 なるほど。適正レベルまであと9か、因みにさっき1だけ上がってた。

 イベントが裏で隠されながら進行していたから違和感を感じていたんだな。

 しっかし失敗したら消滅か。答えを先に見ているからまあ楽なのだろうけど、事前情報仕入れてなかったら確実にやらないイベントだな。

 情報提供ありがとうございますと返信しないと、そう思ってコンソールに手を伸ばす。

 ポロン、おっとどうやらまだ続きがあるようだ。

  

  コナラ:あとそれとクヌギさん

  コナラ:貴方の熱量が団長に伝わり、フィールドワークへの入団許可が下りました。

  コナラ:申請してくれたらそのまま入団できるようになっているから。

  コナラ:これからもよろしくね。


 「まじか」

 そう一言しか呟けなかった。まああそこまで手伝ってもらって入団できないは俺という人間の才能自体を疑わなきゃならなくなるからまあよかったんだけど。

 とりあえずすぐに返事して、申請しないと。待たせるわけにはいかないし。

  

  クヌギ:本当ですか!

  クヌギ:情報提供もですが、本当にありがとうございます!

  クヌギ:早速申請しておきます。

 

 すぐさまクラン検索を行う。程なくして出てくる、途中の偽物に騙されそうになりながら。

『フィールドワークに入団申請を行いますか。』

 はい、お願いします。

『入団申請が受理されました。ようこそクヌギさん、フィールドワークへ。』

 名前の下の欄、クラン名の場所にフィールドワークと刻まれている。初めて実感が湧いてくる。武者震いとでも言おうか、込み上げてくるものに体が震えあがる。

 叫ぼう、そう思ったときだった。ガサガサと向こうから誰かが草木をかき分けて出てきたのは。

 「うおっ人がいた…。あ、どうも。」

 俺の顔を見てびっくりしたのか、漫画のような驚き方をした人と目が合った。

 「あ、どうも。」

 ついついそう返してしまう、だってどうもと言われてどうも以外で返す方法が浮かばなかったんだもの。

 「あ、プレイヤーか。しかも装備的に初心者だし槍かよ。」

 あ、こいつ多分失礼なタイプの奴だ。今放った言葉と態度でどんな奴かは何となく理解できた。完全に舐めたような物言い、ムカつくな。

 「君も個人依頼の装備目当てかい。そんな装備じゃクリアできないことわからんの。」

 わーお謎の上から目線。いや事前に適正レベル聞いてるから今出てもまだ受けないし。

 「ねえそこのお嬢さん、そんなヌーブより俺のとこ来た方がいい思い出来るよ。」

 あろうことかカグヤもプレイヤーだと思う始末。

 「すまんがこの子、うちの従魔なんで。」

 流石にイラっときた。うちの子に勝手に色目を使わないで貰おうか。

 「は、お前何言ってるんだ。今まで人型の従魔なんていなかったんだぞ。いたとしてもお前みたいな初心者がそんなのを無理に決まってんだろ。」

 …コナラさんやフウランさんとかが最初の先輩だったからこういう輩を想定していなかったな。いいか、前例は破られるためにあるんだよ。

 「それがあるんだよ。見てみるか、ペット所有欄。」

 そういって所有欄を名も知らない相手に見せる。不快だが不愉快なこいつをどうにかできるのならこの気持ちを飲み込んでやる。

 「……っち」

 いきなり舌打ちをしたかと思うと踵を返していく。今頃内心顔真っ赤だろう、それを出さないだけまだマシな部類だったのだろうけども。

 「なんだよ、感じ悪いな。」

 この村に来てようやくあったプレイヤーが地雷だった。そういう人間がいないことの方が珍しいのに、最初に会った人の良さにやられ予想していなかった。

 一抹の気持ち悪さを残した、そんな一日だった。



毎度のことですが、評価、ブックマーク、感想よろしくお願いいたします。

モチベーションに繋がりますので…。

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