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三位一体

まだ、まだ昼のはず……。

 ログインする。いつの間にベッドに入り込んできたのか、横でカグヤが眠っている。

 ダンゾーはというと天井に引っ付いて眠っている、あ起きた。

 起き上がるとカグヤもその動きで目が覚めたのか、目をパチクリとさせてこっちを見てくる。

 「カグヤも今日は一緒に行ってみるか?」

 昨日の戦いを思い出す。範囲攻撃が可能なカグヤがいれば森林という不明瞭なフィールドで後れを取ることは無くなるだろう。それにダンゾーとも相性がいいだろうし。

 カグヤは付いていく意思を伝えるためにぶんぶんと頭を縦に振っている。どうしよう、もしカグヤのジェスチャーが日本式じゃなかったら。まあその時か。

 「ダンゾー、お前も行くぞ降りてこい。」

 上からしゅるると糸を伝ってくるのかと思ったが、そのまま飛び乗ってきた。お前の糸は何のためにあるんだまったく。

 二匹を連れて出張所へと向かう。待ってろ経験値、村の危機回避のために全部吸い出してやるよ。


 

 「お待ちしておりましたよ、クヌギさん。」

 少し顔色が悪くなったおっちゃんがカウンターに立っている。何かあったのだろうか。

 「何かあったのですか。」

 「それが昨日あれほど討伐していただいたゴブリンがまた村人を襲いまして、まだまだ群れがあるようなんです。」

 十匹狩っただけではまだ足りないらしい。現代日本の鹿のような立ち位置にいるのかもしれないな。もしくは熊だ。

 「なるほど、今回もあいつらの討伐ということで?」

 「ええ、お願いします。」

 そういって依頼書が出される。昨日と同じ量の討伐、受注のサインを書いて受付に提出する。

 「では、早速行ってきますよ。」

 「どうかお気をつけて。」

 やはりこのおっさんは何か隠していないか、またほくそ笑んだ、そんな気がしてならないのだ。



 「今日は泥濘になっていないな、これなら足を取られなさそうだ。」

 地面は昨日と打って変わって落ち着いたものとなっていた。逆に昨日は何故あれほど泥濘になっていたのか。

 最初は動物たちの沼田場になっていたと思っていたが、そういった形跡はあの後探したが見られなかった。意図的にあの場だけ泥濘にしていたのだとするのなら、一体何の意味があるのだろうか。

 考えていても答えは出てこない、今は無理矢理にでも違和感を飲み込む。

 「いた、一旦隠れるぞ。」

 少し先にゴブリンの集団を見つけたからだ。その数五、どれも昨日の奴らと同じぐらいの力量だろう、動きが一切警戒していない、外敵舐め腐ってるからな。

 「ダンゾー、お前は木から奇襲、背後を狙っていけ。カグヤ、鱗粉で敵を動けなくしてくれ。」

 二匹とも分かったと頷いて行動を始める。さて俺は

 「おいお前ら、何やってるんだ。」

 草むらから飛び出して槍を構える、敵のヘイトを買う役割だ。穂先を眼前に突き出して何時攻撃仕掛けられても、カウンターできるようにしておく。

 あいつらはというと、ゲラゲラと嗤い出している。自分たちの優位性を少しも疑っていないようだ。その笑い声がもう四つにまで減っていることにすら気が付いていない。

 ダンゾーが一匹仕留めた。どっさと倒れた音でようやく仲間が一人持っていかれたことに気づいたらしい。急いで武器を構えてダンゾーに飛びかかろうとしている、が誰も動くことが出来ない。

 カグヤが後ろからそっと出てくる。翅が開かれ、辺り一面に鱗粉が舞っている。

 吸い込んだら最後、一歩も動くことのできなくなる筋硬直の恐るべき毒である。

 「だから言っただろ?お前ら何やってるんだって。口抑えないと死ぬぞって。あこれは言ってないか。」

 槍をぶっ刺していく、もう作業だ。頭を貫通させていくその様を見せるのは教育的によろしくなかったかもしれないが、命とは簡単に消えると教えることも重要なのだ。

 「はいおしまい。次生まれてくるときはちゃんと言葉の意味を探るんだな。」

 カッコつけてみた、カグヤがパチパチと手を合わせて拍手してくれる。ダンゾーはやれやれといったジェスチャーだ。うん、ダンゾーお前が正しい。

 「この調子ならあと五匹と言わずにそれなりの数の駆除をしていこうか。」

 型にはまった動きが出来れば確実に、安定した狩を行える。獣害を抑える為にもある程度間引きしておけば、緊急性の依頼もそう来なくなるだろう。

 「さて次の獲物を探そうか。」

 だからほらダンゾー、ゴブリンを食べるのを止めなさい。後カグヤ、興味を示すのやめなさい、お腹壊すぞ。


ご愛読、ブックマーク、評価、いつもありがとうございます。

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