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気だるい朝、気だるい日常

早ければお昼に投稿できるかも?

 朝食を食べて出勤する。現代になっても朝の出勤ラッシュはどうにもならない。

 揉みくちゃにされながら会社に向かう。おい誰だ今足踏んだ奴、あ誰ですか今踏んでしまった方は。


 「遅いぞ斎藤、貴様社会を舐めとるのか。」

 沼河童が怒鳴り散らす。おかしいな、始業時間より10分も前に出勤してるんだがな、何であんたもういるんだよ。

 「始業30分前に来るのは当たり前だと言ってるだろ?お前の耳は飾りか?」

 いや今まであんた重役出勤連続でしとったろ、どの口で俺に説教垂れてるんだ。

 しかもそれ専務があんたに言った嫌味だろ、何良いこと言ってるみたいな雰囲気出してるん。

 「おはよーございまーす!」

 間が悪いな、後輩が勢いよく入って来る。ばるんと豊かな胸が揺れる。沼河童はそっちに夢中のようで俺に説教垂れ流しながらも目は確実に震源地を捉えている。何でセクハラで失職しないんだろうか、いやそんなこと続けたからうちらの部署に回されたのか。

 説教は始業時間から30分経ってようやく終わりの兆しを見せた。

 だがそれからというもの、姿勢が悪い、資料のまだ印刷も校閲もしていない草案段階のものの誤字を見つけては俺に詰め寄って食って掛かる。

 これパワハラとして上に話通せませんかね。

 

 「先輩、沼河童に嫌われてません?何かしました?」

 社割の効く食堂で昼食を取る。後輩が前の席に座ってオムライスを頬張っている。

 デミグラスか、俺はケチャップ派だ。

 「知らん、何か内部告発でもあって俺を疑ってるんじゃないか?」

 あるとしたらその線しかないだろう。有給の時のつっかかり、これをきっかけに誰かが内部告発したんだとしたら必ず警告を出されているはず。

 自分が退職させられる前に不満の元を消し去れば大丈夫とでも思っているのだろうか。

それとも、可能性は無くは無いのだが、ガチ目にこいつを狙っている説。今の職場、異性

でこいつと距離感が近いのは多分俺だと思う。大学の頃からの後輩だしな。

 下世話な話だが、こいつは胸が結構デカい。海に行けば毎回ナンパされるぐらいにはスタイルも顔もいい。沼河童からしてみれば年下の恵体、顔も性格も良しの優良物件だ。唾つけたくなるものだろう。

 朝の挨拶になると毎回胸に視線行ってるし、八月に部署で海行こうなんて言い出したし、

その時に亜紀くんは来るよねと後輩に対して完全に目付けてたしな。

 そんな相手にライバルが近づいていたら折りたくなるものだろう。勝手にライバル視されるのも可笑しい話なのだがな。

 以上、実話からなる俺の妄想。

 「ふーんそうですか。あ、そういえばナチュプラどうでした、面白かったですか。」

 「ああ、とても。教えてくれてありがとな。」

 もぐもぐとオムライスを堪能していた亜紀は思い出したかのように聞いてきた。

 教えてくれなかったらこう楽しい思いをすることはできなかっただろう。

 「世界の再現度、あれヤバいな。虫も人も植物も、全部が生きているみたいだったよ。」

 「そうっすよね、そうっすよねぇ!別世界に旅行に行ったみたいですよね!」

 そう盛り上がっていると入り口方向に沼河童のような奴を見かける。もう食べ終わっているし離れるか。

 「ごちそう様。」

 「あ、私もごちそう様。」

 沼河童がこっちに気づく前に俺らは退散したのだった。



 「先輩のキャラ名聞けなかったなぁ。」

 これも全部沼河童のせいだ、オフィスに戻ってからもそう思い続ける。

 社会人になってから先輩と遊ぶ機会が減ってしまった。去年は私の初任者研修もあって遊ぶ時間が無かった、まあこれは仕方がない。

 でも、今年のは納得できない。私が誘おうとすると何処から聞きつけたのか沼河童が顔を出してくるのだ。誰がお前みたいな体目当てのスケベオヤジなんかと海行くかっての。

 ゲームなら逆にすぐ運営にネットストーカーとして訴えればBANしてくれるから先輩を誘いやすかった。でも名前を聞けてないのが残念で仕方がない。

 「亜紀くん、ちょっとお茶汲んできて。」

 沼河童が指名してくる。お局様方はかわいそうにといった顔をしている。結構な理解者たちである、お願いだから代わってくれ。

 「はい、ただいま」

 今度証拠貯めてセクハラとパワハラで告発してやろう。




 ただいま、誰もいない一人暮らしの部屋に声が木霊する。時刻は午後6時、沼河童の押し付け残業をどうにか回避した俺だったが、明日は分からんな。

 風呂にしよう、飯にしよう。それからゲームをしよう。

 家に帰ってからここまでワクワクしているのは何年振りだろうか、あいつにはもっと感謝しないとな。


いつも拙作をご愛読、評価、ブックマーク、感想ありがとうございます。


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