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代用品

祝!4万PV突破!

本当にありがとうございます!これも今まで応援してくださった皆様のおかげです!


これからもどうぞよろしくお願い致します!

 勝ったは良かった、あのレベル相手の戦闘は今の間はなかなか無いだろうしな。

 だが問題はこれ、手に持った折れた直剣を見る。俺の唯一の武器がぶっ壊れた。どうしようか、あの村で武器が調達できなかったらクエストなんて言ってられない。

 こん棒を使うといった手もあるかもしれないが、まあ無理だろう。青銅の剣より確実に壊れやすいこいつを代用品として使うには無理がある。残り一体を倒す程度であったら問題ないのだが。

 生憎だが、さっき奴が持っていたこん棒はドロップしなかった。徒手空拳のスキルは持っていないしどうしたものか。

 そう悩んでいると蜘蛛が何かを引きずって来る。明らかに自分の体積の数十倍以上のものを持ってくる様は異様な光景として夢に出てきそうだ。

「何持ってきたんだ、お前」

 その糸に巻かれたものからは腐敗臭がした。まさしく腐肉の臭いなのだ。

 糸を解き始める。中から出てきたのは死体だった、服装からして同業者の。

 何故持ってきたんだ、そう思っているとその死体の手にはまだ武器が握られていた。

 槍だ。少し柄は短めで円柱状、これを見て槍と言わない人はまあそういないだろう。

「お前…武器の為に探してきてくれていたのか?」

 ふんすっとまるで誇っているかのような仕草をしている蜘蛛の頭を撫でる。短い毛がびっしりと生えていてこそばゆい。

 死体に手を合わせてから武器を剥がす、死体にもう武器は必要ないしな。罰が当たりそうだな俺。

 槍を振るには結構ステータスが必要だと言うがこれは大丈夫なのだろうか。

『無銘槍、必要ステータス:筋力10 スタミナ10 技量10』

 一応装備できるけど、もしかしたらそこまで強くない装備なのかもな。無手よりは完全にマシだけども。

「ありがとうよ、ダンゾー。」

 蜘蛛はへへへと鼻を擦るような仕草をした後で、え、その名前確定なのと言いたげな表情してこっちを見てくる。いやお前もう反応したし意外と気に入ってるだろ。

『トリッキースパイダーの名前をダンゾーで決定しますか。』

 当然。



「よくぞご無事で、我々はあなたの帰りを待っておりましたぞ。」

 派出所でさっきと同じおっさんが俺を出迎える。他の職員さんっていないのかね。

「ゴブリン十体の討伐を確認しました、これは報酬金です。」

 そういって200ゲル渡される。あ、これ割に合ってないクエストだ。経験値は美味しいけどゲル稼げないクエストだこれ。

「ええ、また何かありましたら声かけてください。クエスト受けに行きますので。」

「お願いします。まだまだ魔物は襲い掛かってくるかもしれないので。」

 当面の危機が去ったからか、ほっとした笑顔を浮かべながらもそう言ってくる。もしかしたら大変さとゲルの調整が出来てないからここに誰もプレイヤーが来ないのかもな。

「では、私は宿に戻らせてもらいます。」

 そういって踵を返す。視界の端に移ったおっさんの顔には、何故だろうか上手くいかなかった、そんな感じの感情が一瞬覆い尽くしていた。


 宿に戻る。部屋の中から何か物音がする、カグヤが起きたのだろうか。

「カグヤ、今戻ったぞ。」

 そういって部屋の鍵穴に差し込み回す。おかしい、鍵が掛かっていない。

 急いでドアを開ける。そこには

「カグヤ……ちゃんと鍵開けたら閉めてくれ。」

 何処から持ってきたのか、食事を取るカグヤの姿がそこにあった。しかも結構な量だ。

「ぁぅぇ?」

 多分疑問だろうか、何かおかしいとでも言いたげな声音で俺に聞いてくる。

「俺じゃない誰かが入ってきたらどうするんだ。」

 キョトンと首を傾げる。この感じはサバンナのライオンを想起させる。多分自分が強いから誰も襲ってこないとでも思っているのだろう。実際強いし。

 どう説教するか考えているとダンゾーが頭の上から飛び降りて、カグヤの食事に混ざろうとする。いやさっきたらふく食ってきただろ。

 うちの子たちってなんでこうもマイペースというか自由というか、そんな感じなのだろうか。

 ベッドに横になる。なんか疲れたし気も抜けた。今日はもうログアウトしよう。

 食事音をASMRのように聞きながら俺の意識は浮上していく。


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