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生ける蜘蛛生けるクヌギを走らす。

これは昨日投稿できなかった分だーーー!


昨日は用事があり夜間に投稿できませんでした、申し訳ない。

 「お前そんな舐めた動きしてると本当に嫌な名前にするぞ」

 ピタッと動きを止めて、手をそれは止めろと言わんばかりにブンブンと振る。こいつ分かり易いのは助かるんだけど、まるで人間相手にしているみたいでちょっと怖いんだよな。

 「いいのか、お前の名前が鬼形とか景蜘蛛とかにするぞ。」

 それもこれも捕物に出てくる名主人公達をもじったものだ。だが俺がやると絶妙にダサくなるのは何でなんだろうか。ワードセンスだな。

 蜘蛛はというといやいやと言いたいのか地団駄を踏んでいるように地面に足をぷすぷすと抜き差ししている。正直景蜘蛛はいいと思ったんだけどな、遠山の金さんだぞ。

 「カグヤは名前をすんと受け入れてくれたというのに、お前は強情な奴だなぁ。」

 正直餌やっただけで懐いたからチョロいと思ってたけど、そういうとこだけは譲れないようだ。逆にカグヤが例外なのかもな。

 「いっそのこと平造にしてやろうか、江戸川乱歩の蜘蛛男の名前の。」

 これもダメらしい。何なら一番拒否反応示している。おい謝れ、全国の平造さんと江戸川乱歩に土下座してこい。

 しかしここまで名付けに手間取るとは思わなかった。ここは捕物から離れるしかないな。

 蜘蛛…スパイダー…スパイ……忍者?

 「お前、ダンゾーとか名前つけたら怒る?」

 加藤段蔵、鳶加藤とも言われる人物。忍者をあまりよく知らない人でもそれなりに聞いたことのある名前だ。だったら半蔵にしろって?なんかミーハーみたいじゃん。

 蜘蛛はというと、どうやら悩んでいる様子。初めてじゃないか、ここまで迷わせた名前は。

 採用か不採用か、蜘蛛の動向に目をやる。否やりすぎた。

 後ろから近づいてくるゴブリンに一切俺らは気が付いていなかった。

 

 ばしゃっとした泥の音でようやく気が付く、攻撃可能なレンジまで引き込んでしまっていたようだ。

 こん棒が目の前に迫る、がっと鈍い音を立てて俺にダメージを与えてくる。痛覚は無い、だが初めてこのゲームで受けた攻撃というのは重く、そして恐怖の塊であった。

 今の一撃で体力の3割が削れる。ゴブリンは愚鈍だが力は人間より強い、防具も初級であることが災いし、不意打ち以上の攻撃を喰らったのだ。

 「一閃、おらっ。」

 気絶判定を貰わなかったようで何とか武器を取り出し切りつけることに成功する。しかし剣先が少し掠っただけだ。

 こいつ…避けやがる。さっきまでの奴らとは全然違う、剣の間合いを不完全だが知っているのだ。



 「一閃、からの速突、またまた一閃」

 あれから数分、焦りが出始める。どれも掠るばかりで決定打にならない。ゴブリンは嘲笑っている、どうやら俺の分類を完全に格下と認識したようだ。

 そして今度はこっちの番だとでも言うのか、こん棒を上段から勢いよく振り下ろしてくる。それを寸で躱す。

 うきゃきゃうきゃきゃとゲスのような笑い方を繰り返している。恐らく今の攻撃、本気じゃない。現に涎を垂らして舌を出しながらまたこん棒を上に持ち上げている。

 「舐め腐りやがってクソが。」

 一閃、舐め腐ってがら空きの胴体に青銅の剣を横薙ぎ払う。胴体に綺麗に入り込んだ剣は、胴体を寸断する前に砕け散った。

 「はっ?」

 武器が半ばから砕け散ったことに動揺を隠せない、ゴブリンはというと逆にがら空きとなった俺の胴にこん棒を叩きこむ。

 空気が口から漏れ出す。いくら痛覚を消したとしても、そうだと脳が感じてしまうと息が詰まった感覚を夢想してしまう。

 背中から倒れこむ、今ので半分以上削られた。気絶判定が出ない事だけが幸いだけれども、今武器の無い状態で格上に勝つことなどできようか。

 これはリスポーン案件だろうか、やらかしたな。そう思っていると

 「ガギャギャア」

 相手の動きが止まる、よく目を凝らせば見えてくる。首に、足に、手に、体のいたる所に無数の蜘蛛糸が絡みついている。

 いつの間に、いや今はそんなこと考えている暇はない。折れてもまだ刃は残っている。

 確実に仕留める、首に折れた直剣を突き刺す。何なら抉るように回転も加える。

 「速突、さっさと終われや。」

 喉仏をぶっ壊す感触が剣を通して伝わってくる、その次に筋繊維、骨と、生きていたら確実に味合わないであろうものを手に受け、絶命に向けての一撃を叩きこむ。

 喉が潰された奴は声をあげることすら許されない。だが倒れこまない、どれだけ強いんだこいつは。

 「いい加減その首俺に渡しやがれっ」

 アイテム欄からこん棒を取り出して顔に向かってフルスイング、ボロボロになった首はこの一撃で千切れ飛んだ。

 「お前のおかげだよ。」

 蜘蛛に助けられた、独りだったら確実に負けていた、そんな戦いだった。


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