幕間:あの日見た人の名前を僕はまだ知らない。
祝、総合PV2万5千突破!
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構成を練っている時も、執筆している時も、皆さんの評価が後押ししてくれます!
今回は箸休めのような回となっています。
これはとある初心者のお話。よーは話の本筋にあまり関係ないお茶濁しって奴だ。
ゲームにログインする。凄い、草のテクスチャが地面から離れていないなんて…。
軽い感動を覚えながら掲示板で読んだとおりに村の方向に進んでいく。風がリアルだ。
一昔前の人たちは風を再現するために扇風機を顔前において味わっていたと聞くが、もうそんなものも必要ないと思うと技術が進歩した現代に生まれたことに感謝の念を覚える。
回りに人がいないのも事前に確認済み、別に不安など一切感じずに村の中へと入っていく。
「おや、ライ村へようこそ。身分証見せて貰えるかい。」
お姉さんじゃない、だと。確か事前情報だと綺麗なお姉さんが村の入り口から案内してくれるって聞いてたのに。目の前にいるのはハンサムな好青年、く、悔しい。
「紛失したのかい?だったら作り直さないと、こっちに来て。」
なんて眩しい笑顔なんだ、イケメンとはかくありきかな。涙が出そうになる。
それからは掲示板通りのチュートリアルのような町紹介を経て身分証作って終了。
瞬間回りに人だかりが生まれる。さっきまであんなに閑古鳥が鳴いているレベルで人がいなかったのにいきなり増えると少し騒がしいな。
「ねえ君、初心者さん?」
綺麗なお姉さんが俺に話しかけてくる。俺にだよな?
「ええ、はい、そうです。」
どもるな俺、何やってるんだ俺。こういう時は爽やかに返すのが定石だろうに。
「ははは、いきなり話しかけられたら驚くよね。ごめんねっ」
か、かわいい。あざといとも言えるその言動に振る舞い、世の男性が描く小悪魔系とはこのことか、いや悪魔要素ないんだけども。
「私ここで初心者さんに色々教えてるんだ。何かわからない事ってある?」
どうしようか、事前に色々調査しているから大抵のことは知っている。だけどここでそれを言ってしまったら折角のお話のチャンスが……。
「すいません、何もわからないような感じなので。」
「そうか、そうか。このゲームわかりずらいもんね。」
よしっ、心の中でガッツポーズを取る。
そして掲示板で見た情報とほぼ一致した内容の話を聞くことにした。同じなのになぜこうも違って聞こえてくるんだろうか、この世の神秘だ。
聞き終えた俺は席を立ってあるクエストを受ける。
「え……それを受けるの?」
絶句するのもわかる。キャタピラーの討伐クエスト、このゲームにおける不遇クエストだ。
でも絶対なにかこのクエストにはある。小説の展開だったら超激レアなスキルが手に入ったり職業が増えたり、色々思いつくことがあるように何か隠されているはずだ。
「ええ、大丈夫です。」
指定された畑に向かう。すると向こうから誰かが歩いてくる、横に誰か連れて。
瞬間目が合う、横の人にだ。
綺麗だった、虫人、そう言えばよいのだろうか。マニアックなその見た目、そういったのが性癖の俺に深く突き刺さった。向こうは目が合ったと同時にふっと視線を逸らして隣の男に目をやっている。
名前だけでも、そう思っていたら頭上に何か見えた。よく見ようと思っていたらもうそれなりに離れてしまって見えない。確かにあの表記の仕方は間違いなくNPC、でも隣にいたのはプレイヤーだ。
まさか従魔か!?俺の考えは間違っていなかったんだ。こっちにあるクエストなぞキャタピラーのみだ。
駆け足で向かう。気分はチーターにでもなった気分だ。
この日キャタピラーの体液塗れになり死んだ目をしながら周回する男がライ村で確認されたのだった。
設定:実は最初にあうNPCには6通りあって、主人公のようにおばさんパターン、おじさん、おじいさん、おばあさん、青年、少女のパターンがあります。
因みにランダムです。昔は何故か乱数が偏っていて少女のパターンを引きやすい時間帯とかがありました。現在は修正済みです。




