旅立ちの日に(開始から6日目)
ゴールデンウイーク最後の更新。
恐らくこれでキャタピラー編は締め。
背中から繭が無くなってはや一日、残業もなく上手く事が進み手早く家事を行ってゲームを起動する、この間二時間因みにご飯は惣菜。
もう見慣れ過ぎて実家のような安心感を得ているお婆さんの畑の横にスポーンする。俺の横ではコノハナ姫がすうすうと寝息を立てて眠っており、こちらの睡眠欲求を刺激する。
ようやく背中の縛りを外すことが出来たのだ、この村からもついに旅立つ時が来たというものだ。
思えばあれから6日間、色々なことがあった。キャタピラーに悪戦苦闘し体液をぶちまけられ、怒りから狩バチの習性を思い出したり、図鑑の情報の無さに憤慨したり、餌やりしてみたり、背中に繭を作られたり、草を毟ったり草を毟ったり草を、って後半全部採取しかしてないじゃないか。
不味いな、どう考えても俺と同じ時期に始めた奴はずっと先を行っているだろう。
つまりは俺が見ることのできない虫をもう見ているかもしれないということだ。
次はどこに向かおうか、お婆さんの故郷のある東国に向かおうか、それとも昆虫の宝庫があると思われる南国方面だろうか。
色々思案しながらも一番の問題にぶち当たる。俺そもそもまだレベル2じゃん。どこ行くなんて決められるレベル帯じゃない。
それにゲルも全然無い。クエストやってないからね、しょうがないね。
しないといけないことが山ほどやって来る。もう何もしたくなくなるね。
まずはできることをやっていこうか。お婆さんにお別れの挨拶したりコノハナ姫の名前を考えたり次の目的地に行くためのレベル上げをしたり。
とにかく考えたら吉日、お婆さんにお別れしてこよう。
いつものようにノックする。
「なんじゃい、用件があるならまず言いな。」
煩わしそうな声が中から聞こえる。変わらないなこの人は。
「クヌギです。そろそろこの村から出発しようと考えていたので別れのあいさつでもと。」
「……そうかい、達者でやりいや。」
少しの沈黙の後にぶっきらぼうに、でもどこか温かみのある声音でそう答えてくれた。
「…はい、またいつか戻ってきます。その時はまたよろしくお願いします。」
そう少し涙ぐんでそこから離れる。このお婆さんはまた一人になるのか、そう思うと涙が出てきてしまうのだ。
することが一つ終わった。よし次だ。まだ眠っている彼女の横に腰を下ろし名前を思案する。
まあ昨日からそれなりに名前については考えてきていた。彼女のモチーフとなったアポロ、俺の中では月面調査船のイメージが強い。そして月の光を浴びて羽化するその生態からも、月に関する名前が良いだろう。それでいて女性らしい名前となると色々考えた末にカグヤとだけ思いつく。
いいじゃん別に!良い名前じゃん、女らしいじゃん、和っぽい格好してるじゃん。
安直だなんて思わないで欲しい。まず伝承であること、月、女性、和、ここまで共通点が多ければ名付けなければ逆に失礼というものだ。そんなことないけど。
とにかく今日から彼女の名前はカグヤだ、決定ボタンを押す。
『コノハナ姫に名前が付けられました:カグヤ』
コノハナ姫の頭上にカグヤとネームタグが現れる。これでよし。
レベル上げどうしようか、多分だけどカグヤは俺より強い。だけどこう、なんかそういうのって嫌じゃん?
初心者の誰もが通る道、中央の国の首都メディウスを目指し道すがらレベルを上げていこう。
さて、この村にも結構長居したな。次の都では何日滞在することになるのだろうか。
あまりにも重い腰を上げて、ようやく最初の村、ライ村から旅立つのであった。
……カグヤ?起きてくれ、これじゃ締まらないじゃないか。
次回、モチーフの虫「未定」。
急いで構成練ってきます。




