無垢なる殺意
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すべての眼が、殺意が射殺さんばかりにコナラさんを射抜いている。何がトリガーとなったんだ。分からない、一定以上の接近なら俺はとうに戦闘エリアに入り込んでいるはずだ。
もしくはイベントが発生中に妨害となる行為が発生すると敵対なのか、少なくとも確実にこのままではコナラさんは攻撃される。
レベル2の俺程度が止められるものなのだろうか、そう思考したのも束の間ナニカが周囲一帯にばら撒かれた。
鱗粉、だろうか。咄嗟に吸い込まないように服で口元を覆おうとする。俺の動きに気づいたお婆さんやコナラさんも同様にすぐさま布で吸い込まないようにする。
だが、コナラさんだけが顔色を変え倒れこむ、何があったんだ分からない。
俺もお婆さんにも何も変化が無い、だというのに何故コナラさんだけに……まさか。
深呼吸する、恐らく異常なほど肺に鱗粉が入り込むだろう。だというのに息苦しさも、異常性も何も起きない。やはり、これには指向性がある。この攻撃は選択式なんだ。
恐らく条件は殺意。敵意というべきなのかどうかは置いておくとして、彼女に敵認定された相手のみに作用する、純粋な殺意の塊だ。
その証拠は俺とお婆さんだ。なんの状態異常にも掛かっていないからだ。
コナラさんのステータスはどうなっているのだろうか、あの感じからして恐らくバッドステータス、眩暈か麻痺、それとも毒状態か。
蛾の鱗粉自体に毒があるわけでは無い。アレルゲンとなることはあるが。そう考えるとこれはチャドクガのように体毛を当てているのだろうか。いや、今はそんなこと考えている暇はない。
コノハナ姫は先ほどから動かない。表情は恍惚とし頬は上気して、この状況を楽しんでいるようであった。それとも動けないのだろうか。
─いい気味だ。
阿婆擦れが一人倒れこむ。私の人に唾つけようとしたからよ、いい気味だまったく。
ああ、私はあの人の為なら何でもできるんだ。なすすべもなく死んでいったあいつらとは違って人間にも抵抗できるんだ。ああ、ありがとう愛おしい人、貴方のおかげで私はここまで成長できたのよ?
あなたの外敵はすべて私が排除するの。だから、ねえ。
私を愛して?
声が聞こえる、俺だけだったのだろうか。お婆さんはただ震えているだけだし、コナラさんは未だに蹲っている。この場で声を発せられるのはもう俺以外いないはず。
だけど内容は、確実にコノハナ姫が抱えている心情、そのもののように思われた。
ここでもし俺までも敵対する行動を取ればまず間違いなくこの地は終わるだろう。あれがもう一度散布されれば、周囲一帯は確実に不毛の大地に成り果てる。
正解の行動を模索しろ、彼女の中で何が地雷かを必死に考えろ。彼女は愛を欲している。
今までの行動からして、接触を愛と思っているパターンだと想定する。その場合俺が取るべき行動は彼女を甘やかすことだろう。だがこれを行った場合彼女は外敵を排除することで愛を得られると判断し、各地で人を襲う可能性が出始めてくる。
一番の下策は武器を構えることだろう。彼女が最もして欲しくない行動は俺に裏切られることだからだ。別に自惚れているわけでは無い、状況判断だ。
だから俺が今取るべき行動はもう決まっている。
「ぁぁぁ?」
無理矢理文字に直そうとしても無理な声で彼女は鳴く。
ただ俺はその場に立ち続け睨み続ける。そう何もしない、ただ目で訴えかけるだけだ。
そしてその後に取るべき行動は
そう考えているとまた辺りに鱗粉が立ち込める。瞬間咳き込む、ステータスには弱毒と麻
痺が追加されている。苛立ちからかそれとも俺への不満か、ついに俺にも攻撃を始めた。
─どうして
なんで愛してくれないのだろうか、何でそんな目で私をみるのだろうか。分からない判らない解らないワカラナイ。
鱗粉をばら撒く、弱めになるように調節して吸い込ませる。
ねえ、痛いのは苦しいのは嫌でしょ?嫌だったら早く私を愛して?
……どうして、どうして愛してくれないの。
鱗粉って毒無いんですって。
でもやっぱ蝶、蛾系の敵は鱗粉で攻撃して欲しいですよね。




