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祝福転じて禍となれ

ジャンル別日間、週間ランキングともに30位以内に入っていました!

皆さんの応援のおかげです!


今回はコノハナ姫の思考と行動原理のようなものです。

 ようやくあの狭い繭から出られる、あの人にふさわしい姿で、あの人の隣に行くことが出来る。ああ、久しぶりに感じた愛情も、まだまだ足りない。もっともっと貰うのだ。

 私だけが、あの人の寵愛を貰うんだ。

 冷たい月光が私に差し込む。世界は私に冷たい、私は必要とされていない。でも違う。

 あの人は、あの人だけは私に温かさを与えてくれる。わたしを必要としてくれる。

 私の、私だけの人。私の姿を見てあの人はどう思うだろうか、また愛情をふりかけてくれるだろうか。私はニンゲンになることを一心に願った。そうしたらカミサマは私に姿を変える力をくれた。

 ああ、私を見てね。


 空が見える。昔と違ってとても鮮明に見ることが出来る。あの憎たらしいババアも、あの人の姿も、そして全く知らない女の姿も。

 あれは誰なのだろうか、苛立ちが少し募る。もしかして私の座を脅かす奴なのだろうか。

 まだうまく焦点を合わせることが出来ず、よく顔を見ることが出来ない。目が機能するようになったらいの一番に顔を見てやろう。私に外敵になりうるかとしてだ。

 胸が、腕が繭から解放される。後は足だ、足が出れば彼はこっちを向く、そのはずだ。

 繭から完全に開放される。さぁ、私を見て?


 彼が私を見る。ねえどう、あなたのためにわたし、頑張ったのよ。彼はじっと私を観察する。顔を髪を翅を腕を胸を、そして気まずそうにしている。彼は私の姿を見て恥じらったのだ。

 ああ、私の体に魅力を感じてくれたのだ、私は番として認識できるところまで行けたのだ。

 だったら花嫁装束を着なければ行けない。自身の糸を使って服を縫う。

 確かこうだったはず、薄桃色の綺麗な羽織を作る。これで私も文明的でしょ。

 彼は私をじっと見つめている。だから私もずっとすべての眼を使って彼を見つめる。

 ああ、とろけてしまいそう。ねえもっと蕩けたいの、私を撫でて。

 彼の手が私に伸びる。ああ、愛だ。愛が私に与えられるのだ。

 至福、天に上る気持ちとはかくのごとく、もう多種への恨みなんてどうでも良くなる。

 思わず声が出る。でも彼とは違うその声に少し嫌気がさす。彼と一緒がいいというのに。

 だがそれすらも今はどうでも良く感じる、それほどまでにこの時間というものに私は気に入っていた。

 もっとこの愛を、時間を味わいたい。だというのに何故邪魔されるのだろうか。

 女だ、もしかして彼を狙っているのだろうか。許さない、私から奪うなんて絶対に。

 疑わしきはまず滅すべき、先手必勝だ。

 祝詞を唱える。祝福転じて禍となれ、この世界に、あの女に未曾有の災いあれ。



 彼女の持つ力は自身の負の感情を爆発させ具現化させるといったものだ。もしその感情が殺気という外敵への攻撃宣言だったらどうなってしまうのか。

 鋭利で冷たく、ただ外敵を排除することに特化した負の集合体、彼女の本性が今、コナラ

を捉えた。


神様というものは古来から執心深く、それでいて嫉妬深いのが定石ですね。

特にオリンポスの神々は反省して、どうぞ。

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