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手記は書けども可に至らず

祝!3000PV突破!

そして、な、なんと!日間ランキングVRゲーム部門で、20位になっていました!!!

皆様のご支援あってのことです!いくら感謝しても足りません!

これからもどうか当作品と浮遊亭海月を応援してください!

 現在の時刻は昼の11時。7時間睡眠をしっかりとったため眠気はそこまで無い。

 今日はキャタピラーの生態を手記にまとめる作業をしよう。もちろん昼食はもう取ってある。準備は万端だ。


 ナチュレイといつもの挨拶を交わしてログインする。背中の繭は無事のようだ。

 「さて、書きだしますか。」

 手記にいままでの調査から得られた情報を書き記していく。食性、臭い、そして気づく。

 「天敵の調査してないや…。」

 キャタピラーを差し出して食べる魔物はいるのかの調査をしていなかった。今まで飼育してきたお婆さんに話を聞こうか。いや、間引きを頼むということはいないのか、でもあれは困っているというスタンスを演じる為だろうし……。

 「調査したいけど、でも背中にこの子いるしなぁ。」

 俺が何と言われようが、そんなことはどうでもいい。背中の子が死んでしまう事だけは避けなければならない。もしかしたらそこまで軟じゃないのかもしれないが、勝手な憶測で動くことはできない。

 「天敵の話は一旦置いておくしかないか。」

 わかっている部分だけで書いていこう。情報を後々足していけばいい。


 「しかし、どう書くべきか。」

 ただ情報を羅列するだけでは面白くはない。しかし主観的感情が入り込めばそれは図鑑では無く小説となってしまう。

 「フィールドワークさんのを参考にしたいけど…」

 この村では手に入らないだろう。まず彼らは本拠地を持っていない渡り鳥のようなスタイルで各地を回っている。

 そして集めた情報で書かれた図鑑を発行して売り歩いている、らしい。

 しかし、この村には売っていなかった。売り切れていたのか、それとも最初から売っていなかったのかは分からない。重要なのは今無いということだけだ。

 

 あれから2時間は経過した。書いては消して、表現を装飾しては簡略化するを繰り返している。初めはこれでいいと思っていた書き方が、見返してみると自叙伝みたいな感じになってしまっていて、小っ恥ずかしい気分になり全て消した。

 それ以来大学で論文を書いたときを思い出しながら模倣して書いている。

 しかしこれがなかなか久しぶりで、であるとですますがごっちゃになる。会社で書類を書いているのにもかかわらずこの為体。社会人として恥ずかしくなってきた。

 「本物の論文でも一回目を通して来ればよかったな。」

 そうだ、何故俺はしなかったのか。素人同然の俺がいきなり書ききれるとでも思っていたのだろうか。お前はいつもそうだ。誰も俺を愛さない。例のポーズは繭によって阻まれた。

 

 「とりあえず形にはなったけど……」

 人様に見せられるようなものでは無いな。恥ずかしい、己の未熟さが歯がゆい。俺のゴールは完璧な調査書を書き上げること。これになりそうだ。

 「フィールドワーク、かぁ。」

 今の俺じゃ入れないだろうな。ゲームキャラのレベル的にも文才的にも。

──────

─────

───


 「フウラン、あの子はいた?」

 私が見かけた彼のフレンドコードを持っている友達に聞く。友達の友達に会いに行くにはまず友達に話を通してもらわないといけない。

 「ログインはしてるね。チャットでどこにいるか聞いてみる?」

 「お願い。あの子は私と同類の匂いがする。」

 同類意識、フィールドワークの同志となるには十分の素質。逆に言えばこれが無ければ入団は厳しいものになる。同志意識のないものに書けるものはない。

 「了解、ちょっとかけてみるね。なんて送ればいい?」

 「フィールドワークに興味あるか、これでいい。」

 もし私たちの活動を知っているのならこれだけで十分。知らなくても生態調査に興味があるならこのワードで釣れるはずだ。

 (必ずものにする……同じ数少ない虫好きとして…。)

 その日どうでもいい欲望がライ村に渦巻いていた。


虫好きってカミングアウトすると結構引かれますよね。

私はありました(2敗)。

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