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死骸検分

 手ごわい相手だった。カグヤの能力と、奴らが舐めとばすといったある程度の知性をもったが故に持ちえた傲慢さに救われた。

 地に伏した死骸からは粘性のある、青色の体液が流れ出ていた。恐らくは血液だろう。

 「…軽い、しかも薄い。」

 奴らの甲殻は、薄くそれでいて非常に軽かった。とても刃物から身を守れるほどの硬度をしているようには思えない。

 アイテム化した部位はあるだろうか。消し炭になった二体と比べて、回収できそうな所は多いんだけども。

 「……オオアゴか頭部がトロフィーとして持っていけそうか?」

 とりあえずナイフを頭にぶっ刺してみる。

 「?」

 予想していた硬さは無く、多少の抵抗の後にさっくりとナイフが入っていく。あのイカれてる硬さは死後消えるのだろうか。だとしたら外骨格を持っていくうまみはなさそうか。

 『インベーダー・ロングホーンビートル(ワーカー)の頭部:を入手しました』

 このバケモノはインベーダー・ロングホーンビートルというらしい。長いな名前。

 名前の感じからしてカミキリムシの侵略者、分かりやすくすれば侵略的外来種指定のカミキリムシだろうか。

 モチーフはなんだろう。クビツヤアカカミキリだろうか、ちょっと首元赤色入ってるし。

 「何らかの形でこいつらが霊域に侵入。その後繁殖したって感じ、か?」

 俺たちに襲い掛かってきた感じからして、攻撃性が高い。アゴの位置的には葉や茎、樹皮を食べるカミキリムシだが

 「胃の中身的に、肉食性の強い雑食っぽいんだよなぁ」

 腹を切り開いて中身を確認してみたが、樹皮や葉といった植物はあまり入っておらず、代わりに動物や昆虫といった、明らかに肉であると分かる物体が八割ほど内容物として占めていた。

 不審な点が非常に多い。ヒト型なのもそうだし食性もそうだ。それにまだ引っ掛かるところがある。

 「……ワーカーか」

 名前に追加されていた、ワーカーという文字。基本昆虫でワーカーと名前が付くのは蟻や蜂で、女王の個体の為に餌を確保し、巣を拡張する役割を担う個体たちだ。

 カミキリムシはもちろん、社会性を形成する昆虫ではない。そもそも社会性を形成する昆虫の方が種としてみると稀なのだけども。

 「見た目はカミキリムシだが、その性質は蟻と酷似している可能性がある。っと」

 とりあえず現状で把握できた事柄をメモに纏めていく。後でログアウトしたときにでも、Wikiで調べるか。

 「……ダンゾー、もう食べてもいいぞ?」

 いつもだったら速攻で死んだ奴を食べにくる、腹ペコ蜘蛛を呼ぶ。カグヤはともかくとして、あいつが来ないのは珍しいな。

 そっと近づいてきたダンゾー。いつもと違って恐る恐る口に肉を運んでいる感じだ。

 ぺっ

 吐き出した、それも速攻で。どうやら相当不味かったみたいだ。

 「肉は不味い……と。」

 俺は流石に食べない。態々不味いと分かってるものを食べたくはないのでね。


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