足らぬ足らぬは普通に何もかも足りていない。
「核が足りねえ」
「……ウラン?」
「そうじゃねえ、この槍の中心になるはずの宝玉だ」
熱気も抜けた工房で、ミミズクさんと槍についての会話となる。しかしどうやらこの槍、この穂先だけじゃ効果を発揮しないようで。
「正直言ってこれじゃあ多少効果の付いただけの穂先だ」
「因みにその効果は」
「微量の呪いを付与する。恐らく宝玉も呪い関係だろう」
あの聖域みたいな霊峰の、それも世界樹に呪われた武器ねえ……。最初誰かが足場にでも使ったのかと思ったけど、何か意図的なモノを感じますなあ。
「切れ味は保障する。が、あんまり呪いの効果は期待するなよ。」
「ありがとうございます」
『呪殺の槍 必要ステータス 筋力25 生命力30
属性:呪い
効果:穢れた怨嗟の残滓
それはありとあらゆる怨嗟を込めた呪いの残滓。一定以上蓄積した場合、対象に恐怖(小)、精神力依存の定数ダメージ(小)を与える。』
…現状だと今の斑大蜘蛛の槍の方が優秀だろう。麻痺に睡眠なんでもござれだからなあれ。流石にそろそろ装備更新したいけどね。
んてあれ、必須ステータスに生命力…?
俺の生命力は現状20の初期値。いやリーチがあるとはいえよくここまでのステでやってこれたとは思うけど、ここにきて生命力かぁ。
レベルを上げるべきか?それともボーナスポイント狙いでクエストを消化するか?レベル上げは一番分かり易いし、あと6レベで重戦士にジョブチェンジが可能になる。それのステータス変更で条件を満たす可能性もある。
クエスト消化は副産物で金が増える。さっき色々買ったから懐が若干寂しい、それに内容によってはレベリングにもなるはず。
「ミミズクさん、今回はありがとうございました」
「鍛冶師は鉄を打つのが本懐、ただ錆びた武器を元に戻しただけだ」
しょ、職人ッ。
「……ボーナスポイントが貰えるクエスト?」
「はい、何分寄り道しかしなかったせいでそういう王道を外してましてね」
「……ここから一番近いのは確かスパンおじさんと空飛ぶカエル」
「???」
「そういうクエスト、内容はフライング・トードを専用の道具で捕獲すること」
な、成程。そういうクエスト名か、なんだかカ〇ルじいさんと空飛ぶ〇みたいだな、いや随分と古典作品になるし知ってる人いないか。
「捕獲だから経験値が入らないけど、内容は簡単だからオススメ」
「何から何まで、ありがとうございます」
これ以上コナラさんの善意に甘えるわけにはいかないな、その他丁度よさそうなのをwikiから探し出してくるか。
このゲームも情報は力になる、が誰でも挑めるというものは秘匿しても旨味が無い。なのでさっさと共有するのが基本だ。
そのなかでもこのボーナスクエストはよく広められる。大抵一人一回までであり、誰でも受注できる仕様であるからだ。まあ一部秘境まで行かないといけないものや特定の条件下で発生するものは秘匿されるけども。
「ダンゾー、カグヤ!久しぶりの狩りだ!」
「おおー!」
カグヤが右手(?)を上に突き上げる。ダンゾーもそれにならって前足を上げる。
『私はー?私のことは忘れていませんかー?』
「はいはい忘れていないからその舌しまいましょうねー」
『だから青柳じゃありません、ハ・マ・グ・リ・で・す・!』
そういうところがハマグリっぽくないんだよ、もっと慎みを持ちなさい。