ここはHENTAIの街なんだろうなって
「完成したら伝書鳩でも送るから、その時また会いましょ」
「わかりました」
アイテム欄に買った服を仕舞いこんで店を後にしようとする。なんか熱っぽい視線だけは絶対に頭のなかに入れないし認知しない。
「今度は娘さんも一緒においでなさい」
「ええそれでは」
カグヤをこの人たちに合わせた時、どんな化学変化を起こすか分からないので事前にある程度の準備はしておかないと……。
すっと店前を流れていく人込みに自分の身を任せるように入り込ませていく。激流に身を任せるのだ、逆らうとぶつかる。
『すいませーん…私前みたいに腰にさげて貰えませんかー?』
普段は腰元からする声がどこか遠い別の場所から響いているようなか細い声で聞こえてくる。
「いやだっていきなりでかくなったじゃんお前」
実はこいつ、パンさんの店で装備を変えた時にサイズが変わりやがったのだ。
しかも普通の瓢箪から置物みたいな大きさになるとかいう常識を遥かに超えていった変化だ。まったく、持てないから仕舞うしかないだろ?
『じゃあ背中!背中でいいので!』
「……はぁー…そもそもなんで大きくなったんだよ」
『分かったら苦労しないですし、説明してますよ!』
そうだよな、バカでかい蛤って時点で訳わからないからな。
『今馬鹿にしましたね!?』
「今度から青柳って名前にしてやろうか?」
俺は好きだよ青柳。別名バカガイだけど。
『それ前にも言いましたよね!?』
はいはい分かったからその変な声止めてくれ、煩いのに五月蠅くないとかいう矛盾の塊状態なんだよ。
「後でな、後で着けてやるから」
『約束ですよ!絶対ですよ!忘れちゃだめですよ!』
どれだけアイテム欄って居心地悪いんだろうか、コイツがここまで必死になるのは喋るなと言われることぐらいだというのに。
「うーし…元気にしてたかセレス……ト」
「あっ……」
それは何と言うべきだろうか、言葉にするなら極上のメスに欲情したオスだろうか。
しかしメスはうちの馬で、オスは見も知らない青年で……。物凄く邪魔なのだろう、物凄く気が立っているセレストに、はあはあと息を荒くしてズボンを今降ろそうとしている変人と目が合ってしまう。
「えっと……何をして?」
「あの…その…」
気まずい顔をしていながらも何故かズボンをおろしていく変人、いややめろよ。
「娘さんを私に下さい!」
「あげません、帰ってください」
この町には変人しかいないのだろうか。
「そんな…僕たちはこんなに愛し合っているのにッ…!」
「愛してるとしたらそんな顔して拒絶しないだろ」
ああ分かった、この町には自分の世界を構築してそれが当たり前だって思う奴がすげえいるんだ。そうに違いない。
「一回だけ!一回だけでいいです!」
「そんな先っちょだけみたいに言うんじゃないよ!」
なんだなんだと見物人がやって来るようになってきた、そしてきた連中は半裸の男にドン引きしている。
「お願いします後生ですから!後生ですから~!」
縄を解いて進もうとしているのに俺の足にがっと掴みかかってくる変態青年、せめてズボン履け。
「これ以上引っ付いてると衛兵呼ぶぞ!」
「関係ありません!私プレイヤーですから!」
「大問題だよ!」