もしかしてこの町治安悪い?
「広いな…」
メディウス以来だろうか、ここまで大きい街に入るのは。
道には石畳みが敷かれ、その端は水が流れていくように設計されている。多分雨が多いのだろう、石の表面も滑らないように加工されている。
「お疲れセレスト、少し休んでな。」
門付近には俺らのような旅人を狙った宿が多く立っている。そして大抵馬宿も置いてあるので預け場所にもなっている。俺は別にここに長居する訳でもないので後者だけ利用するといった形だ。
「ついでに店について聞いておくか。」
正直に言おう、俺ここがどんな街なのか知らない。何処の国に属していて、それでいて何処にどういった店があるのかすら知らない。
もしくはここの街にある冒険者協会にでも行って聞くべきだろうか、向こうはプレイヤーもいるだろうしそっちの方がいいのか?
「はい、確かにお預かりいたしました。」
「よろしくお願いします。」
とりあえずセレストを停めておく場所だけは選んでおいた。丁寧そうでちゃんとした場所だ、もちろんその分お金が掛かるんだけども。
でも杜撰な管理体制で盗まれたり病気になったりするんだったら、お金はかけて避けられるのだったらどれだけかかっても払うべきだ。まあ病気に罹るって話は聞いたこと無いけど。
「…宿として使う訳じゃないから冒険者協会に行こう。」
もしかしたら丁度持っているアイテムの納品クエストとかあるかもしれないしね。
兎に角行くか、そう考えながら前からやってくる人を避けようと横に逸れて歩く。
ドンッ!
「うわっと…すんません。」
「……チッ。」
なんだ、コイツわざとぶつかってきたぞ。しかも舌打ちだけして去って行ったし、なにがなんだか分からん。
「……気にするだけ無駄か。」
『…今の人私の事盗もうとしてましたよ、所謂スリって奴です。』
「マジ?」
治安わっる。ここ別に裏通りでも何でもないんだけど、もしかして犯罪大国かここ。
『そんなもんですよ。むしろ今までが幸運だったんですよ。』
「…以後気をつけるよ。」
装備ロック機能があるけどもいきなり懐狙われるのは怖い。なんならモノじゃなくて命も持ってかれそうだから用心に越したことはない。
『ところで冒険者組合の場所、分かるんです?』
「……まあ何とかなるでしょ。」
冒険者組合が分かりずらい場所にある訳がない。だって冒険者が利用する所だぜ?絶対目に入りやすい位置にあるに決まっている。
『いやいやいや、ちゃんと聞きましょ?急がば回れですよ!』
「正論来たな。」
まさかお前から正論で諭される時が来るとは、思ってもいなかったよ。
「分かった、ちゃんと聞いてくるよ。」
宿屋の受付なら大抵知ってるでしょ、客じゃないからあまりいい顔しないかもしれないけど。
案の定利用料金取られましたとさ。