まだ知らぬ街へ
「うっお…結構混み始めたな」
町に近づいている証拠なのだろうか、NPCやらプレイヤーやらで道が混み始めてきた。さっきまではど真ん中を進んでいたとしてもぶつかることもなく、なんならすれ違うことも無かったんだけども、今それやったら確実に迷惑になるだろう。ということで馬なりに戻れセレスト。
「…なんか見られてるな。」
なんだ、さっきからジロジロと何か動物園のパンダに向けるような物珍しいモノを見たかのような視線があちらこちらから飛んでくるんだが。
『そりゃあ目立ちますよ、なんて言ったってこの私がいますからね!』
「いやお前は腰に下げられた瓢箪程度にしか思われないだろ。」
お喋り二枚貝はどうやら勘違いしているようだ。いいか、最初から喋ってあのでかい体を見せているのならお前が確実に注目の的だろう。だけど今のお前は瓢箪の中、誰も分からんぞ。
『いえいえ、瓢箪程度では私の絶大なオーラが漏れて見えてしまっているんですよ。』
「だったら猶更入れ物変えないとな。」
そんな~と恨めしそうな声が腰元から響く、この声が回りのプレイヤーに聞こえていなかったら確実に馬上で独り言をぶつぶつ漏らしている不審者だ。
「なああんた…」
『え私ですか!?いや~困っちゃうなぁ~』
「……こいつのことは無視していいですよ、何でしょうか。」
おい馬鹿、この人ドン引きじゃねえか。
「ぁああ…、その馬なんだけど、何処で捕まえたんだ?」
「?……セレストは競馬場付近のセリで購入した奴ですよ。」
「いやいやいや、そんな馬見たことないぞ、頼む本当のこと教えてくれないか?」
うーん本当の事なんだけどもどうして信じてくれないのだろうか、いやこの角が原因か。
まあ普通に考えて角の生えてる馬なんていないだろう、ここゲームだからいてもおかしくは無いんだけど。現に山ほどデカいムカデいたしな。
「この子も最初は普通の馬だったんだ。角生えた理由は正直俺も分かりません。」
「…そうか、ありがとよ。」
そう言うと男はちょっと恨みがましい目でこっちを見ながら人ごみの中へと消えていった。
「なんだってんだよ。」
何かそういうプレイヤー引き付けやすいのだろうか俺って。いや、今はそんなこと忘れてさっさと服買ってこないと。
「服の中に翅を収納できるようゆったりめで、尚且つ可愛い奴かあ。」
プレイヤーの店だったらあるだろうか、それとも普通にNPCの店でも売っているのだろうか。後者の方が正直楽だから売っていて欲しい。
「俺の装備はどっちでもいいよな…」
戦闘用じゃなくて不審者扱いされないモノが欲しいだけだし。
「そうなると普通に顔が出て尚且つ黒ずくめにならなければいいよな。」
この今のシノビ装束じゃなければ正直何でもいいと思うけど、一目見ただけでああコイツは冒険者かと分かる感じにしておきたい。
「……先に俺の普段着見に行くか。」
この格好で女児モノの服を買おうものならすぐに衛兵が走ってきてお縄だろうし。