鍛冶場って絶対暑いよね
お待たせしました。
そしてまたお待たせすることになるかもです。
「…鍛冶の様子見てみる?」
「大丈夫なんですか?」
あそこまで寂れた槍がどうなるのか、どうやって復活させるのか正直気になっていた所、コナラさんがそう提案してきた。いや本当大丈夫なのか、あの人結構怖いし絶対仕事中に後ろに立ったら殴ってくるタイプの人だよ。
「私が話をつけとく、どうする?」
「…見ます。」
ここまでしてくれるというのだったらその話に乗る方がいいだろう。お前葛藤無いのかって聞かれそうだけど、いやほら、鍛冶の現場覗いていく?って許可でたら覗いていきたくならないか?
俺だけかもしれないけど、工場見学とかそういう系の奴って今でも興奮するんだよな。なんか普段覗けない場所って感じがして眩しいっていうか、知ってしまった興奮と言うかなんというか。
「お邪魔しまーす……。」
「あまり近づきすぎないでね。」
うおっ…一気に熱気が顔に届いてきた、ここでこの熱量ということはあの場所はもっと暑いのでは……。いくら人が死なないように設計されているゲームの中とはいえ、よく涼しい顔して耐えられるな。脱水症状に陥って緊急搬送とかありそうで怖いんだけど。
「あれは?」
「ひょっとこのお面…火の扱いが上手くなるようにっていうお守り。」
「何か効果は?」
「鍛冶技能に補正。」
ちゃんと意味のあるお守りだったようだ。まあひょっとこって火を噴く男って意味の火男が変化したものだって説があるぐらい火に関連するものだもんな。
「じゃああの神棚って──」
ガーン、ガーン、ガーン、途端に鉄を叩く音が大きくなる。するとコナラさんはこっちを見てしーっと静かにするように指を口元で立てている。どうやらいつの間にか声が大きくなっていたようで、煩くしてしまったようだ。
「……もう少し静かにしろ新入り。」
「うっす……。」
やっぱ怖えよこの人、多分今顔みたら血管浮き出てるよ。ピクピク動いて怒りの表情表してるよ、もはやアニメか漫画だよ。
そう思いながら鍛冶作業を見続ける。剛腕が槌を持ちあげては熱した鉄を打ち、刃を蘇らせようと仕事を続ける姿は正しく職人のそれである。もしかしてリアルでも鍛冶に関する仕事でもやってらっしゃるのだろうか。
「あのコナラさん…ミミズクさんって」
「女の人…とある流派の宗家の子だけど女だから鍛冶職を継げなかった。」
重い…くっそ重いし絶対聞いちゃいけなかった奴やん。え、俺この後受け取る時にどんな顔してお礼言えばいいんだ。
「お前ら…聞こえてるぞ。」
「す、すいませんッ。」
「……コナラにも言ってるんだぞ。」
「…知ってる。」
うーんやっぱ俺この人のことよく分からないかもしれん。それともこういったことになっても許されるような関係性なのかもしれないから何とも言えないんだけど、なんかやっぱりズレてるよな。
「とと様…あつい…。」
「ああカグヤ、汗だらけじゃないか。お外出ようか。」
流石にここは暑すぎたか、カグヤからは玉のような汗が流れては落ちていっている。不味い、この子の替えの服持ってないんだよ俺。この服って言わば装備的な面も持ってたから宿屋のクリーン機能使えば脱がす必要が無かったんだけど、ここにはそういう施設ないらしいし。
「あのコナラさん、ちょっとだけカグヤに服貸してもらえません?すぐに買って返しますので。」
「分かった。」
ということでカモンクイーンセレスト、一気に町まで直行するぞ。