秘密
本当は0時前に投稿予定でした…。
「おいおい、嘘だろ。こんなところで蛹になるのかよ。」
近くにあった木の幹に糸を巻き付けて繭を作り出し始めたこいつに、焦りながら剥がそうとする。採取ポイントで繭になられたら間違いなく攻撃される。説明しても生糸目当てで攻撃し来るかもしれない。それだけじゃない。もしバカなことしたやつ現るなんて晒されたら堪ったもんじゃない。まだ糸は少ない、外すなら今のうちだ。あ、すばしっこい。さっきまであんなに鈍かったのに、俺の手を躱して背中に引っ付きやがった。
そして今度は俺に糸を巻き始める。おい、まてまて、何してやがる。
「くっそ、背中に巻きつかれた。手が届かねぇ……。」
しかも重い。多分終齢幼虫にまで育ちきったからだろう、体長も体重も最初とまったく異なるぐらい大きく重くなった。繭は肩から尻の先までつけられている。およそだが1メートルほどあるだろう。重さは子供ぐらいだろうか、甥っ子をおんぶしたときと同じぐらいの重さが肩と背中を襲う。
「どうするよこれ。こんな姿で村入れないぞ。」
背中に繭を背負った男性…完全に寄生された姿だろう。来た道戻るにしてもあの婆さんに見つかって大事になる未来しか想像できない。
でも新しいキャタピラーを補充しに行きたい。全部繭を作るのなら蛾であると確定できるし、もし土に潜って蛹になるのなら、エビガラスズメ以外甲虫で確定できる。
もしそうなったら背中のこいつは何なのか説明付かなくなるのだが。
「とりあえず採取しきろう。」
薬草をインベントリに放り込み、繭を落とさないよう気をつけながらコソコソとさっきの柵まで移動することにした。
「よし、誰も見て無いな。」
こちらクヌギ、潜入に成功したオーバー。気分はメタル〇アの某ヘビだ。カモフラ率マイナスつくようなもの背負ってるがな。
柵を超えまた一匹幼虫をいただく。さあ、さっさと出よう。
「あんたそれ、どうしたんだい。」
見つかった。頭の中はいつも日曜日だけど今日という今日ばかりは月曜だ。
「最新のファッションです、気にしないでください。」
ファッションといえば婆さん方は信じるはず。頼むバレないでくれ。
「……ちょっとこっちに来な。」
ハイ、駄目でした。気分は王蟲の子供が大人に見つかった風の谷の王女さまだ。
「それ、どうやったんだい。」
家に入るなり婆さんに尋ねられる。目が鋭い。威圧的というか回答しなければ殺すと感じ取れる、そんな殺気の籠った視線だ。
「キャタピラーの生態を調べてる時にですね、誤って霜降り花を与えてしまったんです。」
はい、迷ってる暇なんてない。ここは素直に答えるのが吉だ。
「誰かに教わったとかじゃないんだね。」
少し安堵を感じる声音で聞いてくる。もしかして門外不出の生育法だったりするのだろうか。
「ええ、偶然です。」
「そうかい、ならいい。」
そう言って婆さんは椅子に座りこむ。何か思案しているようだ。
「お前さん、口は堅いほうかい」
これは秘密を喋ってくれるのだろうか。正直あまり自信はないが
「ええ、約束は守るタイプの人間です。」
もしかしたらキャタピラーの生態について詳しく教えてくれるのかもしれない。
「そうかい。……いいかいこれから話すことは誰にも言ってはいけない。もし話したいと思ったらここに話したい相手を連れてきな。そのとき判断してやるさかい。」
そう断って婆さんは話し始めた。
皆さんはジブリ作品何が好きですか。
私は風の谷のナウシカ…ではなくとなりのトトロです。