表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

169/186

実績:自由落下運動

 びょうと風が頬を通り過ぎていく、それはあまりにも冷たく普段感じているものとは限りなく離れており、確実に死へと向かっている感覚を覚える。

 「いっそ気絶してくんないかなぁ…。」

 ほんのわずかな時間なのだろうけども、死を覚える瞬間と言うものは味わっていたくはない。ほら、これから復活するよっていうことが分かっていて尚且つ痛みはないとしても、態々飛び降りて死にたがる人なんて多分いないでしょ。

 さてそんな内臓がひっくり返されたかのような感覚を体に覚えさせられている現状ですが、普通の人だったら即気絶できている状況である。人って目の前に迫った恐怖には対処できないようにできてしまっているからね。反射は神経による防衛機能なのでここだと割愛する。

 でもこのゲームにはスキルがあって、特に対デバフ系に関しては貫通しにくくできている。例えば即死を免れるというようなスキルであれば、その耐性を上回るぐらい習熟度を伸ばすかそれとも装備を片っ端から即死強化に回してお祈りするといったものだろうか。

 さてここで問題です、今は天衣無縫の構えとなった鋼の意志の元の効果はどんなものだったでしょうか。はいそこ正解、気絶判定が無くなるというものだ。これを貫通するのは結構難しい、あの化け物じみた恐竜だって眩暈を引き起こすだけで終わったのだから。こんな自由落下では衝撃が来ないのでいつまでたっても気絶出来ない。

 「…長かった。」

 実際はほんの数秒だったのだろう。だけど人は死を目の前にすると時間の流れが緩慢になると言われるように神経が研ぎ澄まされ、興奮物質であるアドレナリンがドパドパと流れて身体能力が一気に上昇する。そんな無駄な機能が今この瞬間に発動したのだからたまらない。

 そういえばセレストってどうなるんだろうか、そう考えながらぐしゃっと地面に叩きつけられる。これ現実だったら周りに臓物まき散らして凄まじい惨状を生み出してたんだろうな。

 視界がブラックアウトする、目の間には文字でデカデカと『貴方は死亡しました。』と赤く表記されている。まあ流石にアレで生きてたら化け物認定試験余裕で突破できるでしょう。もしかしたらトップ層だったら受け身取れたのかもしれんけど。

 『リスポーンします。』

 暗くなっていた視界が徐々に明るくなっていく、いつものログインの感じと同じだ。さて、リスポーン地点は何処になっているだろうか。

 「あれ、クヌギさんいつの間にここに来たんです?」

 声が聞こえる、これはヤナギさんの声だろうか。つまりここって

 「本拠地……だな、ここ。」

 もしかしてカグヤの座標に引っ張られたのだろうか、それは何というか便利というか。兎に角今目の前でハテナを浮かべているだろうヤナギさんに説明しておかないと。

 「いやぁ…実は高所から落下しましてね。」

 「ああ……。」

 それでここにリスポーンしたんですねと納得した顔でヤナギさんは頷いている、多分この反応からこの現象は仕様の範囲内なのだろう。

 「お、セレスト。お前も戻ってこれたんだな。」

 「……もしかして道に迷ってたんですか?」

 おお単刀直入、さては俺の方向感覚疑ってるな。酷いぜ、一緒に山間部散策した仲だというのにさ。なんかこんな感じで言うと気色悪いな。

 「なんか座標バグにあったみたいで、訳わからない場所に飛ばされましてね。」

 「…何処に?」

 ヤナギさんと話していると奥からカグヤを連れたコナラさんが出てくる、おっとカグヤいきなり抱き着かないでくれお腹にクル。

 「いやなんかでっかい木があった森に。」

 「……もしかして霊峰…いやでも……。」

 兎に角腹の衝撃を押さえながらも何処に行ってたのか言っておく、するとコナラさんは思案するようにブツブツと独り言モードに入ってしまった。

 コレどうしようか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ