カグヤ観察隊
「はーいカグヤちゃんこっち向いてねぇ。」
「うっわ…ヤナギが猫なで声なの違和感半端ないわ。」
場所は変わってフィールドワーク本拠地、ここでは亜人に分類されているカグヤの調査を行うために団員たちが集まって四方八方から観察していた。男子メンバーは護衛兼調査員と言う形で。
「ちょっとフソウ、聞こえてるわよっ。」
「今の聞こえるとかマジかよ…地獄耳って奴?」
今この場所にいるのは虫部門であるコナラ、フソウ、ヤナギ、そして哺乳類部門のメンバーが数名という所だ。もちろん一人でレベリングに行ったクヌギはいない。
「カグヤちゃん、眼帯外しても大丈夫?」
「うん。」
クヌギがいないからだろうか、カグヤの受け答えは少し雑だ。まあ自分の父親の友人たちに預けられた子が、借りてきた猫のようになるのは不思議ではない。特に人見知りと言うか、あまり外との交流が無い子とかは。
「うーん、これって複眼って言ってもいいのかな。」
「…単眼の集合体。」
このように虫部門がなにやらどうやらと話すだけで、基本カグヤは受け答えのみしている状況であった。
「はいじゃあおてて広げてねー。」
「…そうそのまま。」
コナラとヤナギが手を開かせて、手相や関節、それ以外の要素を見て人間と虫の要素、どちらが現状強く残っているのかを調べようとしているのだ。
「手相と言うには難しいかな…これ。」
「薄い……元が虫だから?」
チンパンジーなどの霊長類とは異なり、カグヤの手のひらにはあまり手相のようなものは見られなかった。その代わり爪の先端が鉤状になっており、物を引っかけるには適している作りをしているのだが。
「…第二の腕をもう少し見たい。」
「ええ…それ俺ら参加できないじゃないっすか。」
カグヤの体で一番虫の要素が色濃く残っている部分は、肩甲骨付近から脇腹にかけての位置から生えている第二の腕、先端が人間の腕ではなく鉤爪状のまさしく昆虫のモノ。
「ちょっと脱いでもらえるかな?それと男性メンバーは回れ右。」
「…覗いたら目潰す。」
おおーおっかねえと言いながらフソウを含めた男性全員が顔を背けて覗きませんアピールをする。正直こいつらは女体よりも好きな動物だ、目の前の少女に欲情するわけが無いのだ。
「ふーん……見た目は甲虫に近い。」
「でも確かモチーフは蛾なんですよねぇ。」
そこが謎なんだと二人はぼやく。カグヤの鉤爪は蝶や蛾のような柔らかで草花を握るモノではなく確実に硬い木を掴む鋭いものだった。掴むではなく引っかけるというところに重きを置いた機能性のものだ。
「結構謎だよねえ。」
カリカリとカグヤの体の特徴を書き込んでいく、これはクヌギが帰って来るまで行われていた。