キャタピラーの生態観察
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農園からキャタピラーを一匹頂戴する。相変わらず腕でもぞもぞと藻掻くことしかしない。やはりこいつの体液が身を守っているのだろう。
片手に抱えて柵を飛び越える。飛び越えられる程度の柵から、周囲の魔物の脅威度が低いことがまあわかる。やばかったらこんな低い柵立てないし、なんなら堀を掘るはずだ。
閑話休題。
目的地に着くまで思案する。もし仮にキャタピラーをコガネムシの幼虫とした場合、コガネムシの幼虫は普通地中で暮らすという矛盾点が生まれる。間違っても地上で生育しないし何らかの要因で地上にでてもすぐに戻る。
そのためこいつはコガネムシやカナブン、カブトムシといった甲虫系列とは違った種と判断したい。がこれはゲーム。もしかしたらがあるし食性を調べないと分からない。
向かっていたのは野草の群生地。ここで薬草を採取して与えてみる。
「ほら、お食べ。」
薬草を根、葉、茎に三分割し与えてみる。もし根に食いついたらコガネムシ科の可能性が高くなる。果たしてどう食べる?
「キュルルルルウ」
嬉しそう?な鳴き声をあげ葉をもしゃもしゃと食べ始める。そして茎を少し齧って後は見向きもしなくなった。何なら近くの草に目移りしている。
「ふむ。ドウガネブイブイとかそこらの害虫の線は消えたか。」
まだわからないが、少なくとも害虫に指定されているコガネムシとは違った食性をしているようだ。
だが一回の給餌で分かるものではない。もしかしたら今は葉の気分で普段は根を食べるのかもしれない。
キャタピラーは随分と馴れたようでつついても丸まらなくなった。ペット機能とか無いのだろうか、正直飼いたい。
誰もいないことをいいことに採取を続ける。採取ポイントが枯れることはなく、プレイヤーの一日の採取量が決まっている為別に迷惑にはならないのだが、近くにキャタピラーがいる状態だと襲われていると勘違いされかねない。爆散されようものなら、まぁ酷いことになる。多分その人はこのゲーム辞める。
今度は分けないで与えてみる。草の部分だけを食べ、茎は齧るだけ、根には絶対手をつけなかった。
もし明日も葉しか食べなかったら食性は草食で根菜類への商品価値にはあまり被害が無いと判断できるし、コガネムシの路線は完全に消せる。
餌を食べているキャタピラーの姿があまりにも可愛かったから採取したものを全部与えていた。与えれば喜んで食べる、薬草以外の何の効果もない葉っぱでも。
俺はその日採取したすべての薬草類をキャタピラーに与えていた。薬草納品クエスト何回クリアできただろうか、その位の本数を与えていたのだ。結果無事懐かれた。
「給餌はまた明日別の個体でも試すとして、こいつどうしようか。」
虫かごがあるわけでもないし、別にペットではない。食性の違いを調べるだけなのだから逃がしても構わないのかもしれないが、ここまで懐かれると惜しく感じてしまう。
採取ポイントの復活は0時ぴったり。今の時刻は11時半、あと30分で復活する。
「それまで戯れているか。」
お腹を撫でてみる。少し嬉しそうに身を震わせキュッキュと鳴いている。この体のどこに発声器官があるのだろうか。
「名前でも付けてやりたいなぁ。でもそんな機能ないしな~。」
ペットできるとしたらどんな名前を付けてあげようか。考えながらお腹を撫でまわし続ける。段々と鳴き声が大きくなってきた。
そのまま撫で続けるとびゅるるっと音を立てて何か吐き出した。真っ白いその糸は
「綺麗な生糸」
約1%のレアアイテムをいきなり吐き出した。もしかして繭を作ろうとしているのか。
そう思い待ってみたがただ吐き出しただけのようだ。うーん意味が分からない。
とりあえずこれもメモしておこう。特殊な生態なのかもしれないけども。
そうこうしているうちに0時を周った。採取ポイントが復活し再取得が可能となった。
とりあえず一本とってまた与えてみる。美味しそうに葉だけ食べて後は手をつけなかった。ついには茎にすら興味が無くなったのか、また採取してよく確認せず与えた。
するとさっきまでとは様子が異なった。それを見せた瞬間に飛びつき、必死に腕にしがみつき急いで口に運ぼうとしている。その慌て具合はまるで大好物を見せられた犬か、砂漠でオアシスを見つけた遭難者のようであった。
とにかく食べさせる。今回は葉だけでなく茎、そして毛嫌いしていた根まで食べきった。
「いったい何だったんだこの食いつきは。魔物毎に好物が設定されているのか?」
さっき取得したアイテムを履歴から確認してみる。そして与えたことを物凄く後悔した。
「霜降り花」
これは採取ポイントに稀に出現するアイテム。これ一本を納品するクエストがあるらしく、報酬金は10万ゲルと高額。出現率の低さからそれでも足りないと一部から言われている、そんなアイテムだ。
出現地は確定しておらず解析によると毎日7本、各採取地点にランダムに配置されるらしい。そんな希少アイテムを食わせてしまったのだ。
「嘘だろ……。生糸20本ないと割に合わない額だぞ。」
そう途方に暮れている横であの子は、繭を作っていた。
皆さんは繭見たことありますか?
私はイラガとカイコしか見たことが無いです。
因みにキャタピラーの繭はヤママユガ系のふわふわした感じの奴です。