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報告

 「まず初めに、コイツを見たことがある人は挙手してくれ。」

 対策会議を練る前に、どれだけ目撃情報があるかを確認するためにワシミヤが情報を得ようと回りに声を掛ける。

 すると手はほんの少しだけ会議場内に挙がっていく、完全に埋めきっていない当クランだが、それにしても目撃例が少なすぎるようにも思われる。

 「少ねえな。」

 声が挙がる、ソイツの顔は深刻そうな表情を浮かべていた。是だけの人数がいて目撃者がこれほどしかいない状態になっている現状を憂いているのだろうか。

 「まずはその紙魚の目撃情報を掲示板で募るのがいいんじゃないかな。」

 すっと手を挙げたのは初老の男性アバターの人、でも声が若い女性なんだよな。多分コスプレ感覚でやってる感じなのだろう、ネカマは正直ハードルたっかいなあ。

 「まあそうだろうな、我々の中で目撃例が少ない以上、断定が難しいからな。」

 うんうんと全員が頷く、ちゃんと危機感を覚えているというのは分かってきた。俺らはいわゆる物書きだもんな、その文字が死んだらその生態を記録するどころの話じゃなくなってしまうからな。それ以上に音声データが飛ぶ方を警戒して欲しいのだが。

 「新入り、ソイツはどっから出てきたんだ。」

 ガラの悪そうな男がそう聞いてくる。目が怖いんだけど、ヤクザとかそういうたぐいの方ですかね。

 「コイツは自分の手帳から出てきました。」

 とりあえず事実通りに話しておこう、嘘つく理由なんてないし。誤魔化しも要らないだろう、もし俺が最初の発見者だとしても他に目撃者がいる以上増えてしまっていることだけは確定できるし。

 「それは何時の事だったか、憶えているかい。」

 次に聞いてくるのは団長、出現時期を特定しようという試みだろうか。

 「そうですね……出てきたのは昨日のことでした。」

 「そうか……ありがとう。」

 サラサラと俺の発言を手元にあるメモ帳へと記入していく団長、マジで所作が男性のようでもあって女性でもあるんだよなあ。確かにこれじゃあ性別不詳って言われるよなあ。

 「…それより先に運営に連絡。」

 コナラさんが最もな意見を放り出してきた。全員が一斉に固まる、だって誰もがこの紙魚を自分たちでどうにかしようとしていたからな。かく言う俺も運営への報告をすっかり忘れていた。

 「何処までが仕様で、何処からがバグなのか、それを見て貰うのが先決。」

 「そうだったな……。」

 連絡の方は私からしておこう、これでも顔は通っているんだ。団長はそう言ってまとめていた手帳を閉じて軽く息を吐く。

 「今回の現象は非常事態だ。何か変化があり次第至急連絡するように。」

 解散、その掛け声でゾロゾロと部屋から出ていく。俺はまだ席に座ったままだった。

 


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