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集会

なんとか湧いてきたので……

 「集まってもらって悪いな、まあ席に座ってくれ。」

 俺の懸念全てをグループチャットに書きなぐった結果、フィールドワーク全員での対策会議が執り行われることとなった。場所は初めてだったのでコナラさんたち虫班の皆に迎えに来てもらい、その後ろを追っていった形になる。道中凄かったな、道と呼べるものが全然ないんだもの。回りは鬱蒼と茂る森だし、途中湿地だったから乗ったまま走れなかったし、そして何より狡猾な魔物が多かった。ヤバいよあいつら、可愛い顔して即死攻撃とか普通にしてくるんだもの。

 「今回集まってもらったのは他でもない、これについてだ。」

 今司会を務めているのは団長であるワシミヤさん、見た目は女性っぽいんだけども言動とか身長とか、そういった面がイケメンで男の俺でも少しドキドキしちゃうね。

 「…原因分かったんすか。」

 フソウ君とは真逆で少し暗めの団員が口を開いた。多分これあえてそういう見た目にしているんだろう、カモフラージュかな。

 「ああ、クヌギ君、説明貰えるかな。」

 「あ、は、はい。」

 びっくりした、事前に説明を願うかもしれないと聞かされてたけどもう来るとは思っていなかったから。

 「こほん、皆さんこれを見てください。」

 咳払いを一つ入れ、いまだ籠の中にいる紙魚を机の上へと持っていく。中のコイツはいたって平常で、逆にこれだけの人を前にして緊張も恐怖もないことにこっちが異常を感じるのだけども。

 「虫……ですか。」

 メガネをかけた女性が困惑したような口調で聞いてくる、いやこれは聞いているというより思わず口に出たという所だろう。

 「恐らく紙魚と呼ばれる部類の昆虫だと思われます。」

 「種類は今どうでもいい、それが犯人かどうかが重要だろ。」

 それ、自分たちの担当分野が犯人だった時、同じふうに言われて納得しますか。この人達本当自分たちの範囲外興味ないんだな。

 「現段階では容疑者、と呼べる段階です。」

 そう言って文字を書き込んだ手帳を一度見せてから、紙魚の住む籠の中に入れこむ。紙魚はまた目を輝かせるほど喜んで飛びつき、その名の如く紙面を魚のように泳いでいく。

 ある程度そのまま泳がせてから手帳を取り出す。まだ満足していないのかギリギリまでくっ付こうとしているソレを傷つけないように払って落とし、元の位置に戻す。

 「…彼らによってこのように。」

 日記のように書かれていた場所全てが文字化けする、中には空白もあることから容疑者としてあげるにふさわしいことは、これだけでも主張できるだろう。

 「…ふーん。」

 「おもしろ。」

 意見は三者三様。黙ってまだ見つめている者、興味なさげにしているもの、面白そうにしているもの。興味なさげなのは結局この後どうするかの方にもう頭が行っているのだろう、もうちょっと意見交換に参加して欲しいものだけど。

 「また彼らによるものかは分かりませんが、音声ファイルも攻撃を受けている可能性があります。」

 「…ほう。」

 続けてくれという目が回りからやってくる。成程、紙媒体以外での可能性を先に提示したほうがこれ良かったな。

 「異変に気づいてから録音をしたのですが。」

 そういって昨日録音しておいたアレを流す、日本語ではないし英語でもない、何処の言語でもない訳の分からない形になっていない声が録音機からは流れてくる。

 「適当言ってるとかじゃないよな。」

 「クヌギさんはしょうもない嘘つかないっすよ。」

 フソウ君からの援護射撃、俺だけの反論なら確実に返せなかったからこれはありがたい。

 「このようなケースが多発する可能性もある事を、ここに証言させてもらいました。」

 そう言って着席する、回りは今もしんと静まっている。

 「では、今から対策を練ろうか。」

 団長の一声、その瞬間に辺りには言語が満ち溢れた。


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