表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

151/186

文屋の異変

 「なあなんか最近おかしくないか。」

 ナチュレプラネットオンライン中央新聞東街区支社、今日も今日とてゴシップ並みのものから重大事件まで、多くの耳より情報から井戸端会議並みのものを書きこんではばら撒いていこうと、ライター達は紙面にびっしりと文字を書き込んでいっている。

 「何がだよ。」

 やつれた顔と縹渺とした目で妄想でも口にしたのかと問いかける男、最近何かおかしいと言われても何がどうおかしいのか説明してくれなきゃ分かるものも分からないというのに。

 「いやだからさあ……なんかおかしいじゃん。」

 「だからその何かを聞いてるんだよ。」

 こいつの説明は抽象的過ぎて分からない、その何かを俺は聞いているのになんかって返されても望む返事を返せるわけが無かろうに。

 「えーと……そうそうこれ、これだよ。」

 そういってデスクから持ち出したのは結構前に書いたゴシップ記事の一つだった。確かあれは中二病クラン、ジャスティスジャッジのリーダーと一般プレイヤーの熱愛報道と浮気の可能性の浮上だったか。でも半年も前の記事を今更持ってきて何が最近おかしいというのだろうか。

 「…それで、何が可笑しいんだ。」

 いつまでも正体を言わずにニヤニヤとしているアイツの顔がとても気に入らなくなったので、その顔を今すぐにでも止めさせるためにもさっさと答えを出させる。その自分だけ気づいてますよ感を出してくるのが昔から腹立たしくてたまらない。

 「ほら、ここ見てよ。」

 すると顔をさらに明るくし誇らしげに胸を普段より一割増に張ってその記事の一部分を見せに来る。彼が指差した場所を確認してみると別段不思議に思う点は無く、一体何が可笑しいのかさっぱり分からない。

 「なんもないじゃんか。」

 「そう!なんもないんだよ!」

 どういうことだよ、何もないがあるとか言うんじゃないだろうな。無を取得するのは初期のバグだけにしてくれ、あれは物凄く気味が悪かったし、何よりアイテム欄を圧迫してたから嫌いなんだ。

 「いや、そんな顔する内容じゃないよ。ほら思い出してよ、普通ここっていつも担当がコラムを書くでしょ。」

 確かにそうだな、俺らは一応記事を書いた人間が分かるように必ず最後のところにコラムのように感想に近いお気持ち表明のようなものを書くようにしている。これは別に死体蹴りをしたいとかそういう訳でなく、責任の所在をはっきりさせるためにあるものだ。

 これは書いた内容が誤報だった時に使うもので、誰しも何故このような誤った情報が広まったのか、そしてそれを記事にしたやつは誰かを探す。その時に必ず担当が誰だったかをこの新聞社に問い合わせる奴が絶対に出てくるのだ。ようは迷惑をかけた際に、誰が謝罪するかをはっきりさせておこうという取り組みなのだ。

 「ここ、担当したのモッチーさんじゃん。」

 「……そうだな。」

 モッチーさんは最古参のメンバーで、本当に重大なものから笑い飛ばせる与太話だって書く人だ。そしてこのシステムを考案したのもこの人だ。そんな人が書き忘れるなんてことあるはずが無いのだ。

 「こんな感じでさあ、たまにコラムとかが消えてたりするんだよな。」

 そういって取り出したのは先月発刊したフィールドワークの新人に関するネタを書き記した下書きだった。そこには撮ったはずの写真が無くなっていた。さらには担当記者名も抜け落ちていたのだ。

 「一体誰が何のためにそんなことするんだろうって思ってたのよ。」

 「……バグじゃないか?」

 流石にもう発行済みのものを消しに来たところでというのが率直の感想だ。もしもう一回発行し直すとしても予備だったりと多くの新聞がこの世界にはもう存在している。別に今ここのものを書き換えられても困るというものでもない。

 「……それ結構重大じゃね?」

 「まあな。」

 特に俺ら物書きにとってはな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ