調査
間に合った…今日中投稿できました。
「おや、また来たのですね。」
あれ、あんなにごちゃまぜにしたかのような声だったAIちゃんの声が綺麗になってる。
少し低めの女性、もしくは高めの少年、これがハスキーボイスってやつだろうか。
「ええ、ログインお願いします。」
あの声は何だったんだろうか。バグなのかな、いやまさか、初回限定のイベントだろう。
「では、いってらっしゃいませ。」
ほんの数時間前に聞いた文言、意識を失うって世界に行くのもまた数時間ぶりだ。
だというのに何故こんなにもワクワクするのか。目標を手に入れたからか。
暗闇が襲ってくる。でもとても心地いい。
村はずれの草原にリスポーンする。臭いはもう取れている。これなら中心部に行っても迷惑かけないだろう。まずは報告して報酬を受け取ろう。
駆け足で戻る。今は一刻の時間も無駄にはできない。もちろん金も。
「おや、やっと戻ってきたのか。ほれこれが報酬だ受け取れ。」
受付のおっちゃんが呆れたような顔でこっちを見ている。すまないな、あの体臭じゃ近寄るのも躊躇ってしまうからさ。
「キャタピラーの体液塗れでここに来てほしかったのか?」
「いや、配慮ありがとよ。」
軽口を叩いて報酬金を受け取る。やっぱ少ないな。
受け取ったら即Uターン、目的地は薬草農園、の前に雑貨屋だ。
「おいおい、忙しないな。ゆっくり出てってくれ。」
「わるいなおっちゃん、急いでるんだ。」
ほんの少しの会話。でもこの会話が楽しいのだ。
雑貨屋は出張所を出てすぐの所にある。利用者の大半が冒険者だからだそうだ。
需要と供給にあった位置なのだろう。駅前にあるコンビニみたいに。
「おやおや、いらっしゃい。何が必要なんだい。」
気のよさそうなおばあちゃんが店番をしている。あの婆さんにはこの態度を見習ってほしいものだ。
「手記と羽ペンいただけませんか。」
手記と羽ペン、メモ帳機能がある中でこんなものがある理由、それは共有可能かどうかだ。
メモ機能は自分しか閲覧できない不親切仕様となっており、情報共有の為に一回ログアウトしなくてはならない。その対策の為の苦肉の策がこの手記と羽ペンである。
因みに一つ100ゲル。今日の稼ぎが全部吹っ飛ぶものとなっている、南無三。
ただ使用回数制限が無い永続アイテムというのは良心的なのだろう。
「まいどあり。また利用してねぇ。」
マジであの婆さんはこの人の爪の垢を煎じて飲んでくれないだろうか。
さあやってきました薬草農園。まず不本意だがあの婆さんに許可を貰わないといけない。
本日二度目のノック。果たして
「なんだい、薬草ならやらんよ。」
さっき以上に不機嫌そうな声が向こうから投げかけられる。誰か無心でも頼みに来たのだろうか。
「薬草では無くて、キャタピラーを数匹取っていきたいのですが。」
「……。」
沈黙が返ってきた。まぁ確かに頭の可笑しいことを言ってることは自覚している。あんな腐敗臭まき散らす害虫をいきなり欲しがるのだから。
「好きにしな。でもひと様に迷惑かけるんじゃないよ。」
他人への迷惑を気にするぐらいには良心があったようだ。いやそうじゃなくて
「ありがとうございます。もしよかったら今後採取しに来ても?」
「それも好きにしな。」
許可は下りた。さあ、キャタピラーの研究がついに幕を開ける。
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