データ喰う虫も好き好き-3
うーん、こう見ると俺のアイテム欄って気持ち悪いぐらいに整理整頓されていないな。ソート機能とか一切使ってこなかった弊害が今ここで出てくるとは思っても見なかったぞ。あーあ、こん棒だとか何かの体液だとか、ドロップ品も売りに出していないからもうぐっちゃぐちゃ、これじゃ目当てのものも取り出せなくなるのも時間の問題になるだろう。
「武器とかの出入れはいつもやってるから一番上に来てるけど、それ以外のものとなると面倒が起きそうだな。」
カグヤたちはまだ帰ってこない、今のうちに探しながら整理でもしておこうかな。手に持っていては探れないので、虫かごを中からだしてその中に放り込む。まあこうやってれば逃げないだろう、セレストの首に掛けておいて吊るしておこうかな。
「紙魚が食べそうなものというとなあー。」
紙を喰うという感じからして繊維類を食べる性質があると考えるのが妥当だ、俺あんまり紙魚に関しては詳しくないし身近にもいないから飼ったことないから分からないんだよなあ。
「ログアウトしたら紙魚について調べてみるか。」
もしかしたら虫班の人たちが知ってるかもしれないけど。でも今ここで連絡でも入れようものなら、あの虫かごから暴れ牛の如く飛び出してくるのは明白。他の好物を見つけた辺りで一報入れるのがいいだろう、そうすれば流石にもう一度文字化けさせてくることは無いだろうからな。
とりあえず適当に見繕ったアイテムをそこらへんに放り投げて整理を始める。あいうえお順になるように並べ、普段使いする武器や薬品のみ上のほうに来るように順番を変えていく。
「うーん、まあこれなら綺麗とまで言えないけど、それなりにはなったでしょ。」
普段から整理整頓して清潔に保っている人が見たら卒倒するようなアイテム欄から、軽く眩暈がする程度のものになったアイテム欄をうんうんと頷きながら見る。我ながら自分の才能に目が眩んでしまうよ、よくこうも汚くできるものだ。
「……カグヤはちゃんと整理整頓できるように教育しておこう。」
母親役がいないのが辛い所だ、男の俺の背中を見て育ってしまうのだからこれからは気をつけていかないとな。整理整頓ができるというのはプラスに働きこそすれ、マイナスになることなど無いだろうからな。
「ただいま~!」
トテトテと走ってカグヤが戻ってくる、後ろからダンゾーが蜘蛛糸でぐるぐる巻きにした魔物を引きずってピョンピョンと跳ね歩いて追っている。
ダンゾー筋力増えたのかな、前の敗北から力強さと言うべきかなんというか、雰囲気が変化したように見える。ダンゾーはあれで負けず嫌いというか頑固とでも言うべきか、結構意志が固い方である。もしかしたらもう二度と無様な格好は見せないという意志の表れなのかもしれないな。
「おーいカグヤ、まさか全部ダンゾーに持たせたんじゃないだろうな。」
ダンゾーは袋一杯にバーゲンセール品を詰めたおばちゃんたちの袋みたく、パンパンに膨らませた網に大量のものを入れているが、カグヤは手ぶらのように見える。袋のようなものも見れないし、何か抱えているようにも見えない。
「ぴゅ、ぴゅう~。」
ギグッという擬音が一番似合う表情と体の動き、やはり全部ダンゾーに押し付けていたようだ。まさかカグヤがそんなことするとは思っても見なかったな、これは少し教育の必要性が出てきましたね。
「こらカグヤ、自分の分を押し付けるんじゃありません。」
「ううぅ。」
反省を促す、カグヤはそのまま指をモジモジさせて俯いている。いや可愛いけど流石に今回はそれで流しませんからね。
「はいカグヤ、ダンゾーにいう事は?」
「ありがと…。」
うん、まあそれでいいか。ダンゾーも別になにも気にしている感じでは無いからな。