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データ喰う虫も好き好きー1

 「ええとこいつはなんだろうな。」

 ペラペラとフィールドワークが発刊している論文集を捲る、こんな生き物だったら誰かしらが調査報告書を書いているだろうし絶対あるだろうなと。だが捲っても捲っても一切紙魚に関する研究論述は見当たらない。

 「虫班の人がこれ見逃すなんて無いと思ったんだけどな。」

 手帳の上にいた紙魚を見る、今はカグヤが大事そうに掌で包んで観察している。ダンゾーも肩に乗っかってじろじろと覗き込んでいる。多分一番興味を持っていないのはセレストとロベリアの二匹だろう。

 『まあワタシからしたらただの虫にしか見えませんしね。』

 「そのただの虫が俺の仲間なんだが。」

 そう、こいつ手の上に乗っけたら強制的に従魔として登録されていたのだ。普段なら確認画面が出てくるというのに今回だけ強制仲間入りということを考えると何かしらのイベントなんじゃないかというのが妥当だろうか。

 「もしかしてロベリアパターンか。」

 『それにしては何も感じませんけどねえ。』

 おやすみなさい、そういってロベリアは黙る。なんでも前の戦闘で幻覚の霧を吐き過ぎたせいで疲労困憊なのだとか。次に使えるのはもう少し先にならないといけないらしいのでまあ思う存分休ませておこう。

 「とりあえず皆に連絡してみるか。」

 久しぶりにチャット爛を使用する、前回は妨害されていて使えなかったもんな。コンソールをトントンとタップして入力していく。さて文はできたな、後は送るだけだ。

 「あ、逃げちゃメ!」

 カグヤが大きな声で叫ぶ、叱りつけるような声だ。振り返るとカグヤの腕からぴょんと紙魚のようなものがこっちに向かって跳ねてきていたのだ。お前ジャンプできるんかい、リアル紙魚はただ動くだけしかできない原始的な昆虫なのに。

 兎に角捕まえ直そうとしたその瞬間、奴はコンソールの上に止まった。正直言ってあり得た話では無い、何故ならNPCはこのコンソールに触れることができないからだ。

 止まったコンソールの上を這いまわっている、一体何をしようと言うのか。兎に角面白い現象を前にして、文を送るのは後回しにすることにした。それがちょっと不味かった。

 「あ、おい嘘だろ。」

 モグモグとさっき書いた文の上を泳ぐように食べていく。一瞬消しゴムのように思えたがそうではない。奴が通って行ったところはみんな文字化けしていったのだ。

 


  クヌギ:逧?&繧薙%繧薙↑逕溘″迚ゥ縺?◆繧薙〒縺吶¢縺ゥ縲

  コナラ:どうしたの?

 

 焦って引き離そうとして送信ボタンを押してしまう。文字化けしていった文がそのまま虫班のグループチャットに送信されて、さらにはコナラさんに確認されてしまう。

 「なんなんだよコイツは。」

 ぷらーんと掴んだ体が揺れている。心なしかさっきよりも体が一回りほど大きくなっているようにも見える、もしかしてお腹が膨れたのだろうか。

 「文字を喰ったのか、いやそれだったら文字自体が消えるはず。」

 一瞬脳裏を某異常物収集団体のオブジェクトがよぎるが、かぶりを振るってそれを否定する。流石に企業がそのネタをパクるのは危ないだろうしな。

 「カグヤ、次は逃げないようにしっかり持っててくれるかい?」

 優しくそういってカグヤにもう一度そうっと渡す。カグヤは手を牢獄のように組み合わせて、絶対に逃げ出さないようにと、じっとその手を見つめている。


  クヌギ:すいません、驚かせました。

  コナラ:問題ない、それよりどうしたの?

  クヌギ:紙魚みたいな虫を発見したんです。


 コナラさんがいち早く返信を返してくる。やっぱこの人ログインしてるときの返信速度ヤバいな。ラインも爆速で返してきそう。

 

  コナラ:紙魚、今まで出てきてないから新種かも

  クヌギ:後で画像送りますね。


 文を送ろうとしたが、また後ろからカグヤの悲鳴が上がったので断念した。流石にもう一回文字化けさせられたら本当にバグを疑いそうだからさ。


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