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データ喰う虫も好き好きー0

新章もとい箸休め

 「えーと、この虫はなんだろうか。」

 暇な時間ができたので、うちの子達を連れて久しぶりに昆虫採集及び調査を決行した。思えば中央の草むらとかあの村の森もよく調べていなかった、これって虫を調べるために、図鑑を作る為にフィールドワークに入った身としては不味いのではないだろうか。そう思ったならすぐに行動、クイーンセレストを走らせて来た道を逆走させた。

 「あああった、なになに、『スティンクボム』……まさか。」

 一目見たときから嫌な予感はしていた、だって見た目がカメムシみたいだったからさ。でも流石にね、ヤバくて農業的にも害虫であるコイツを態々実装する意味なんて無いしプレイヤーも嫌がるだろうって少ない楽観的希望を見つけて現実逃避してたんだよ。

 そうだよただの現実逃避だよ。よく考えれば分かる事だった、キャタピラーの体液をあんなふうにしていて、成虫は農作物を食い荒らすコガネムシにするような運営が、態々手を抜いた生物を実装するはずがないことぐらい。

 「うっ……吐きそう。」

 一緒に見ていたカグヤは必死に鼻をつまんで翅をばたつかせる、風を送って臭いを一刻も早く別の場所に移したいのだろう。その横でダンゾーはひっくり返って足をピクピクさせている。臭いにやられたのだ、南無三。

 「こいつでこんなに臭かったら、ゴミムシとかどうなるんだろう。」

 オサムシ科の昆虫は基本臭いことで有名、今の所ザ・そいつらみたいな生き物とは出会っていないが、もし実装されていたらどんな悪臭になるのか、想像するだけで怖気が走ってくる。

 「まだ臭い……。」

 カグヤはまだ鼻を押さえている、臭いに敏感というのもここでは最悪になるのだろう。臭いの薄れた空気でもまだこうやって鼻を押さえたがるのだから。

 「…カグヤ、まだ我慢しててな。」

 俺も嫌だけどこれも調査、俺の犠牲によってこれからコイツの被害者が減るのなら。それとこいつのことをもっと知れるのならと嫌々転がって死んだふりをする奴に手を伸ばす。

 触ってしまった、絶対指に臭いが付くだろう、だがそれでもいい。なんなら臭いが対象に付着するかどうかの調査にもなるからしなければいけなかったことだし。

 「意外とやっこいな。」

 カメムシのような硬い感じではなく、ぷにぷにとした触感でありどちらかと言うと吸血後のダニを思い起こさせる。マダニはマジで危ないからみんなも気をつけような。

 次に触った指を嗅ぐ、うっ臭い。流石カメムシと言うべきか、しっかりとこの不快な臭いをはっきりと付着させてくる。急いでアイテム欄から清潔な水と布を取り出して洗う。正直このままは耐えられないだろう、俺もカグヤも。

 「おーいダンゾー、いつまで伸びてるんだ。」

 洗った手で小突く、ようやく悪臭から解放されたのかくるり回って立ち上がる。そして地面に転がったやつに向けて蜘蛛糸を投げつけた。どうやらダンゾーにとってこいつはいてはいけない虫に認定されたようだ。

 「さて、こいつも書き込みますかな。」

 最近あまり開いていなかった手帳をパラっとめくる、山とかで折角虫を見つけたのだから書いておけばよかったなと思いながら前のページまでめくっていくと、何かが間からニョキッと這い出して来る。

 「……なんだこいつ。」

 それはフナムシをデフォルメして足を昆虫並みに減らしたような見た目をしていた。ササっとページの端っこから端っこへと忙しなく走っては書かれていた文字を出鱈目なものにしていっている。

 「あっこらっ。」

 急いでそいつを捕まえようとする。すばしっこいようだったが、あまり警戒心がないようで、簡単に捕獲ができた。

 「これって…紙魚か。」

 なんでそんなもんが俺の手帳に入り込んでいたんだろうか、まあいいか。今回はこいつに興味が出てきたから、こいつをとことん調べ尽くしてやろう。


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