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終止符まで

 「あの人は今頃素敵な体を手に入れて、超人的な活躍を成し遂げたでしょうね。」

 ゴロゴロと雷が重く鳴り響く洋館にて、下半身が虫である女性は窓から遠くの地にいる獲物(素敵な人)に思いを馳せ、そっと前に付けられた傷跡を艶やかな指でなぞる。まだ未熟者であった彼に付けられた、ある意味で屈辱の証である傷は、今では再会の証となっている。私がこのようなものを貰ったのだから、一目見て分かるようにマーキングしてあげるのが優しさというものだ。

 「私の祝福は気に入ってくれたかしら。」

 ポツポツと雨が降り始める、ああ今日もこの屋敷に吸い寄せられた愚か者がまた一人やってきたのね。



 「ぶえっくしゅんっ。」

 これからいい感じに決まって戦闘に入るって時に、盛大なくしゃみを爆散させる。こういったのって結構空気感をぶっ壊す恐れがあって、実際横にいるコナラさんやフソウ君はええぇといった感じの顔をしている。いや仕方がないじゃん、生理現象なんだしさ。

 「クヌギさん……そりゃあないでしょう。」

 「……同感。」

 ……いやすんませんでした。

 『はあ……コントはもういいかい。』

 はあ!?誰がコントじゃあ、別に俺はボケてなんかないぞ、偶々あの決まったタイミングで何故かくしゃみが出ただけで別段普段からあんな感じの空気感をぶち壊してきたわけじゃないんだぞ。いいか、分かったか。

 「……瞬歩。」

 相手が呆れた瞬間、その隙を見逃さなかったコナラさんがスキルを使って一気に詰め寄る。さっきまでの瞬歩よりも長く、そして速く動き、奴の反応速度を上回ろうとする。

 奴の目がコナラさんに向いた今が詰めるチャンス、フソウ君とはタイミングをずらして肉薄しようとする。グッと足に力を入れて地面を蹴る。ようやく瞬間的に出していい全力に気づいたので、さっきまでのように上に跳ねたり直線番長にはならない。

 「なんかさっき手に入ったスキル行くぜぇ」

 ピロンと言う音とともに手に入ったスキル、恐らくこの姿になったことによって付与されたものなのだろう。元に戻ったら使えなくなりそうだし、ここはありがたくそのスキルを存分に楽しませてもらうぜ。

 「壁破掌っ。」

 掌底の構えを取り、勢いを付けて前に打ち出す。トンという音がしただけで何か起こりそうな気配がない、もしかして失敗したのだろうか。

 そう思った矢先に、殴った個所がボコボコと膨れ上がり始める。もしかしてこれって内部から爆散するとかそんな感じだろうか。レトロ漫画に確かそんなのがあったな、確か秘孔を突くと爆発四散だったかな。

 『貴様っ、格闘家のスキルまで持ってたのか。』

 「だから今さっき手に入ったって言っただろうが。」

 お前についてる耳は飾りか、それとも蟻みたく小さい俺らの声は聞くつもりもないってか。

 そんなことを考えていたせいでカウンターをもろに喰らう。流石にこの体格差、俺の体はいとも容易く吹き飛ばされた。この体の元となった虫が蜘蛛じゃなかったらまあそのまま飛ばされたままだっただろう。シュウとまさかの口から糸を吐き出してこれ以上飛ばないように奴の背中の突起物に引っかける。蜘蛛糸は結構丈夫な代物で、これぐらいの太さがあれば人一人余裕で支えることが可能になるのだ。

 気分は某アメコミの主人公、地獄からの使者とでも名乗り上げしようかな。

 「鏡花水月、華っ。」

 その隙にコナラさんが見せてこなかったスキルをどんどん開放して攻撃を仕掛ける。彼女が切った傷口から血が迸り、そのスキルの名のように辺りに赤い華を咲かせている。

 「纏針っ。」

 そして腹に攻撃を仕掛けるのはフソウ君、体中に針のようなものを纏って突進していっている。あれは絶対に痛い。

 『はあ…はあ…、貴様ら絶対に許さん、殺す絶対殺す。』

 さっきまで優位に立っていたというのに、たったこれだけの仕打ちで三下になり下がる。勿体ないねえ、もう少し威厳というものを保つ努力をした方がいいんじゃないかな。


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