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反撃

 さて、あれほど勇ましく宣言したものの、どうやってあの憎いツラをかち割ろうか。一番最初の奇襲、あれは制御できていない力任せの一撃であったのにも関わらず、できたのは奴の顔に土をつけるのみ。骨に皹が入ったかもしれないが目立った外傷が無いのが現状だ。流石にもうパワー不足ということは無いだろうけども、これでもまだ足りないのだとしたらちょっとお手上げのような。

 カチャと横で音が鳴る、振り向くと刀を支えに立ち上がろうとするコナラさんの姿がそこにあった。どうやらようやく気絶状態から復帰できたようで、まだ何かしらのバッドステータスが残りながらも立ち上がることができるようになったのだろう。

 「面白い体してるね。」

 「起き上がり一番に言う事がそれですか。」

 やっぱこの人もしかしなくとも結構イイ性格してるんじゃないだろうか。いやもしかして真面目で寡黙なんだけど少し抜けてる子というのは俺の独断と偏見によって塗り固められた偶像だったんじゃ、いやまあ多分と言わなくともそうだろう。

 「4対、蜘蛛かな。」

 「ええ多分。」

 カチャリ、武器を抜く音がする。ポンと地面に鞘が投げ捨てられる音も同時に聞こえてくる、恐らくコナラさんが得手を抜いたのだろう。

 『おや、目覚めてしまったのか。』

 グルルと喉を鳴らしているような音を立てながらこっちをようやく直視する。あいつの目に、俺という存在がしっかりと刻み込まれている。そうだその目だ、ようやく俺を認識したな。

 『残念だが君の速度にはもう慣れてしまった。悪いことは言わない、さっさと回れ右でも。』

 「するのはあなた。」

 まさしく閃光、だらりと脱力した姿からは考えられない速さで真横から姿を消した。この体になってようやくその姿を追うことができるようになる速さ、彼女はまさしくこの瞬間、音すら置き去った。

 「疾風怒涛、あまり私を舐めるな。」

 バシュっと音がして腕が切り落とされ、奴の右手が体から離れ宙を舞う。切断面からは鮮血が雨のように降り注ぎ、雲居から顔を覗かせる太陽の光を反射して虹を作り出す。ここまで感動できない虹は生まれて初めてだ。こらカグヤ、キレイなんて感じの顔にならない。ばっちいからちょっとあっちまで行ってなさい。

 『へえ、まだ速くなるのかい。でもそれだけじゃ』

 「余所見してる余裕あんのかよクソ蜥蜴。」

 入れ替わるように今度は俺が奴の目を殴りつける。流石に反射で瞼を閉じられてしまったが、途轍もない衝撃が眼球を襲っただろう。これで眼球にダメージ行ってなかったら正直泣くぞ。

 『痛いなあ、目が見えなくなったらどうするんだい。』

 殴られた目を閉じたままそううめき声のように低いだみ声で発声している、もしかして完全に破壊されないと瞬時に再生できないのだろうか。だったら穴ぼこまみれにでもしてやろうか。

 「すみません、遅れました。」

 ヤナギさんを庇い切ったフソウ君が今のタイミングで合流する。プスプスと焦げ臭いにおいがする感じからして、結構火球被弾したんだろうな。

 「ここで決め切る。」

 『ああもう、計算が狂うな。』

 蜥蜴がぼやきはじめる。まあそうだよな、お前の頭の中だともう終わってるはずの任務だもんな。

 「計算し尽くした計画ってXが変わるだけで崩壊するぜ。」

 『ああ、今回の独立変数は君だよ。』

 おい、会話途中に火を吐き出す奴がいるかよ。かーっ、これだから最近の若い蜥蜴はよお。昔はそんなこと許されてこなかったんだからなあ、知らんけど。


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