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蜘蛛と蜥蜴

 体が物凄く軽い、まるで重力が気圧が、ありとあらゆる束縛が俺から取っ払われたようで、羽が生えてもこれほどまでに浮遊感を得るほどの爽快感は発生しないだろう。まあ今まで羽が生えたことなんて一切ないんだけど、いや当たり前か。

 ドシンと奴を地面と口づけさせるほど威力をたたき出した腕を見る。俺の目に飛び込んできたのは合計6本もある自分の腕。それはカグヤのように関節が全て節となり、角ばっているかのような印象を与える。さらにその腕ははち切れんばかりに躍動し、中に凄まじい筋肉が隠れていることを視覚に訴えかけてくる。うーん、ナイスバルク。

 「この程度で人外か、カグヤに謝れこの野郎。」

 (あらあら、益荒男になっちゃって。)

 おい謝罪は無しか。お前も虫から成りあがったんだから気持ちぐらい理解できるだろう。聞こえていなかったとしても俺個人としては許さんぞ。

 (普通人に節なんてないわよ、あと腕もそんなにね。)

 それじゃあねと言い逃げだけして俺の返事に一切答えずにパスを切る。まったく押しかけ女房だってもうちょっと緩急のある会話をするぞ、あれかマシンガントークをご所望かいいだろう望むところだ。

 『本当に君って面白いねぇ、モルモット追加だよ。』

 グググと重苦しい音を立てて、亀裂の入った地面から顔を引っこ抜いた奴がケラケラ笑ったように顔を綻ばせて俺を見つめ続ける。

 「残念、俺は自ら被験体になろうとするほどマゾじゃなくてね。」

 『入団資料がキャタピラーな奴がノーマルな訳ないだろう。』

 口をつぐむ、正直そればかりは言い返せない。だってノーマルではないもの、回りが制止するなかそれでもとあのクエストを受けに行く初心者なんてさ。

 『その特徴からして蜘蛛……かな目は二つしかない辺りまだ未完全なのかもしれないけども。』

 「人間に360度見渡せる目があっても使い余すだけさ。」

 そう言って6本あるうちの一つで槍を持つ。すげえなこの体、普段両手で握ってやっと振っている武器を軽々と持ち上げられる。こう見ると昆虫の体って凄いんだな、蜘蛛は昆虫には分類できないけども。

 ついでにと昔使っていた無銘槍も取り出して装備する。二槍流、現実だと短槍を二本もって戦うのだろうけども今の俺なら長槍二本でも軽々と扱える。問題は取り回しだな。

 跳躍する、一歩駆け出したつもりでもこのように飛び跳ねてしまう。強く地面を蹴り過ぎたのかそれともハエトリグモのように一瞬の飛びつきを再現されているのか、まあこれは要調整だな。

 『おや、もしかしてまだ慣れていないのかい。』

 自分はもう慣れたよとでも言いたげに問いかけてくる。誰が馬鹿正直にいうと思っているのか、そう考えているとホレとでも言うかのように尻尾で攻撃してくる。まるで鞭だな、同じムチでもムチムチのほうが俺は好きだぞー。

 『君、今くだらないこと考えているだろう。』

 尻尾を掴んで大きく遠心力をかけそのまま跳ぶ、こっちも力が強すぎるなもう少し弱めに調整だな。

 「失礼だな、俺はいつだって真面目な人間だっていうのにさ。」

 今度は飛び跳ねないようと、軽く前に走る程度の力加減で動き出す。へえこの程度でも全速力の俺より速いや、虫の筋力に感謝でもしておこうか。

 また尻尾が迫ってくる、今度は無理矢理その丸太のように太く長い尻尾に乗る。そして持っている二本の槍を力任せに突き刺す。二本の凶器は簡単に肉を抉って入り込む、まあベースが蜥蜴だからここは柔らかいよな、硬いと自切なんかできないもんな。

 まあ今そんな巨体になった状態で自切なんかしようものならバランス崩して倒れるだけだからもうそんな機能要らないと思うんだけど。

 『ふうん、まあ確かに少しチクっとするけども、殴ったほうがまだ火力が出るんじゃないかい。』

 「別にこれで殺せるなんて思ってもいねーよ。」

 これはただの事実確認だ、刃が通らなかったのは槍の切れ味をお前の鱗が上回っていたのか、それとも俺が活かしきれていなかったのかのな。

 「反撃の時間だ、ドタマかち割ってやるよ。」


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