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来たれ暴虐の王

肉食竜で好きなのはヴェロキラプトルです。

 『ぐぅっつ、これは……なかなかに強烈だねえ。』

 体中に液体を塗りたくったやつが身悶える。流石に二回目の投薬には副作用があるのか、体中に鱗を剥がすかのように掻き毟っている。マジで脱皮不全を起こした爬虫類が無理やりにでもその皮を破ろうとしているみたいで、正直痛々しくて見ていられない。段々と鱗が剥げては大きなものへと変わっていく。いや鱗だけでない、体全体がどんどん盛り上がっていっている。段々と体形と言うべきだろうかそれとも体格と言うべきか、今まで保ってきたヒトガタを捨て、奴はバケモノとしての体を手に入れようとしている。

 『ああっ……いい、いいよこの高揚感っ。わたシがヒとでナクなっていく感カクッ!』

 言語機能も狂い始めてきた、さっきから言葉の流暢さが失われていっている。まるで言葉を覚え始めたばかりの頃のカグヤみたいな喋り方になっているのだ。恐ろしいな、言語機能を失う代わりに力を手に入れるなんて。

 「……おい、こりゃあ。」

 「恐竜……なのか。」

 俺らの眼前に現れた奴の次の姿はまさしく昔図鑑で見たような、巨大で圧倒的な力を象徴する存在。太古の地球の支配者、全生物の王、暴虐の体現者、その名は、

 「T-レックス。」

 『フーム、ソレニシテハ前腕ガナガイダロ。』

 いや確かに図鑑で見るような奴らより前腕長いけどさ、ここはロマンというかカッコよさ的に認めようぜ。確実にお前はT-レックスだよ、肉食恐竜の王で子供の憧れだよ認めようぜ。

 『ドチラカトイエバドラゴンダロウヨ、コレダカラオトコドモハ。』

 「いやお前をT-レックス呼びしたのコナラさんなんだが。」

 『エエイウルサイ。』

 訂正させようとしてみたら逆切れして大きく息を吸い込み始めた。何をするのかは一目瞭然だろう、ドラゴンと言えばブレスそれ一択だ。

 「カグヤ、もう一回毒を撒けっ。」

 「うんっ!」

 バッと翅を広げて流れていく空気に毒鱗粉を混ぜていく。今までは幻覚状態にして使っていたけど、破られてしまった以上見せていくしかない。俺らの毒は主に体力を削るものでしかなく、足止めをできるのはカグヤのみという状況なのだ。

 「スプレッドフレアっ。」

 そこにヤナギさんが魔法を合わせて攻撃する。奴の肺から焼き切ろうという作戦なのだろうか、散弾のように散らばっていく火球を口元へと発射していく。

 奴はそのまま鱗粉と火球の混ざった空気を自身の肺へと送り込んでいく、縦長の瞳孔は見開いて驚愕しているようである。だが、今俺らのした行動に対しての動揺ではないように思われる。だってこの程度はまだ予測の範囲内に落ち着いているはずだからだ。あんなに息を吸い込んでおいて予測を立てないということはあるまい。

 『ヘエ、キョウミブカイ。』

 その見開かれた目は俺らでなくカグヤに注がれていた。まるで欲しいものが見つかったみたいにニヤリと鋭い歯の並んだ口を歪ませてしげしげと眺め続けている。

 『オモイガケナイシュウカクダ、ソレヒトヲツカッタノカ。』

 正直言って聞き取りずらいその声をどうにかして欲しいのだが、結構俺と生命の事を侮辱したような内容だということだけは分かった。ふっざけんなよこのクソトカゲ。

 「生き物と自然の侮辱、いい加減にしろよマジで。」

 つい言葉に出てしまう。するとそれを聞いた奴はまた驚いた顔をする。

 『へえ、モッとキョウみ深くなってきたねえ。』

 目標変更かもなと流ちょうに戻った声で標的を見定めた目を俺に向ける。おいお前まさか流石に人攫いに転職は不味いと思うぞ、倫理的にも法律的のもさ。

 『それ、頂戴。』

 「誰がやるかこのあほんだらが。」

 『じゃあ力ずくで奪うだけのことさ。』

 だからさっきから言ってるだろう、誰がお前なんかにうちの子を渡すかよ。


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