フレーバーテキストは背景を知る道具であり、ワクワクさせる最高の調味料である。
〇ンボー感謝の二回投稿。
本当に日時バラバラで申し訳ない。
クエスト終了のアナウンスが鳴る。ああ、シャワー浴びたい、この臭いをどうにかしたい。
その前にドロップアイテムの確認をしよう。アイテム欄を呼び出して何が手に入ったのかを確認する。
「キャタピラーの体液」がほとんどを占める、だが三つだけ別のアイテムがある、「仮死状態のキャタピラー」だ。仮死状態で討伐すると手に入るようだ。使い道は分からないけども、これは試行錯誤と奇跡の証だ。たったの八回の試行と本当の偶然からなる産物だけども。
「終わったのかい。ああ、こっちに近づかなくていい、酷い臭いだからね。」
婆さんが屋内から出てくる。手には桶のようなものが、まさか水をくれるのだろうか。
「ほれ、これで体液を流しんさい。ただしそこの草原で流すこと、いいかい。」
桶を置いて屋内に戻っていく。偏屈なんだろうけど、悪い人ではなさそうだ。
有難く水をいただく。体中に付着した油気質の体液が流れ落ちていく。臭いはまだ若干ついているのが悔しいが、それでも幾分かマシだ。
「桶どうしようか。」
家の外にでも置いておこうか。それともノックして直接返そうか。常識的に考えれば後者だ。しかし体臭を考えるなら前者だろう。好感度が設定されているゲームだ、迂闊なことをして連鎖的に下げることがあっては不味い。
「ノックしてから聞けばいいか。」
折衷案は基本いいものだ。事なかれ主義とは言わせない。
桶を片手に持ちながらステータス画面を開く。
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名前:クヌギ Lv.2 職業:戦士
生命力(体力) 14 +2
精神力(魔力) 5
持久力 11
筋肉(筋力) 17
技量(器用) 8
耐久力(防御) 10 +4
敏捷(速度) 8 +1
運命(幸運) 7
ステータスポイント:2
スキルポイント:3
スキル一覧
狩バチの極意
装備
武器:青銅の剣
頭:傭兵の鉢巻き(生命力+2)
胴:傭兵の皮鎧(耐久力+3)
腕:無し
足:傭兵のブーツ(耐久力+1、敏捷+1)
装飾品:無し
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10匹倒してレベルが1上昇、弱かったから仕方がないとはいえ、苦労に見合ってない。これも不人気の理由なんだろうな。
しかしステータスは後で振るとしてなんだこのスキル、取った思い出が無いぞ。
「狩バチの極意」生物系の魔物に有効な常時発動型スキル。神経系へのダメージと毒攻撃の威力が上昇する。また昆虫系の敵を任意で仮死状態にできる。
取得条件:昆虫系の魔物を三回以上仮死状態にして討伐する。
何だろう、そこまで強く思えない微妙なスキルだ。そもそも毒攻撃スキルを持っていない時点で死にスキルだろう。これなら盗賊でプレイしておくべきだったな。まぁ事前情報なんて一切見てなかった俺が悪いんだがな。
ステータスもスキルも一回情報を整理してから振るとしよう。もう桶を返したら一回ログアウトだ。
コンコン。いい音が鳴る
「すみません、桶返したいんですけども。」
「そこに置いときんしゃい。」
即答だ。こう言ってるのだからそうしておこう。別に、決して怒ってなどいない。
「では、私はこれで。」
もう二度と会うことは無いだろう。そう思いながらログアウトのボタンへと手を伸ばす。
ふと通知に目が行く。『図鑑更新のお知らせ、図鑑に新しい情報が記載されました。』
ログアウトする前に見ておこう。恐らくも何もない、キャタピラーのデータだろう。果たしてどんなことが書いてあるのだろうか。食性が分かればなんであんな悪臭が出るのかも判明するだろうし、成虫の想像もつく。
ワクワクしながら図鑑の項目をタップする。そして唖然として手を止めることとなった。
「キャタピラー」
生息地:北の大地を除く各地。
ドロップアイテム:キャタピラーの体液、仮死状態のキャタピラー、??????
最後のは恐らくキレイな生糸だろう。だが待って欲しい、言いたいのはそんなことじゃない。一体全体これは何なのだ。生体に関しては一切触れられていない、体長もおろか特徴的な悪臭すら書かれていない。図鑑だと、こんなもの小学生だって書けてしまうぞ。
ログアウトしよう。元からそのつもりだったがなんか一気に萎えてしまった。
『ログアウトしますか? はい/いいえ。』
もちろん、はい一択だ。ログインの時のような意識が落ちる感覚、今の俺には失意に感じられるそれを全身で受け、ナチュレ・プラネット・オンラインの初日を終わらせたのだった。
ようはポ〇モン図鑑やド〇クエの魔物図鑑とかみたいにテキスト無いといまいち盛り上がらないよねって話。
今回主人公が取得した狩バチの極意のように、このゲームには○○の極意とされているスキルがあり、特定の手段を踏むとポイント消費無しで取得できます。
狩バチの極意の取得条件である仮死状態にするですが、設定上ピンポイントで狙わないとダメ+急所=神経集合場でないこともあって取得者がほとんどいません。そのくせ一匹でも場所が分かると難易度が激減するため、効果はあまり強くない(仮死状態にするのも倒すタイミングで選択の為某猫皇帝時間みたいにはいかない)。