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決戦の時

もしかしたらこれから一気に放出する可能性あり。


 「それで、また殺されに来たの。」

 コナラさんが挑発するようにそう話しかける、いやこれはするようになんてものじゃなくて挑発そのものだな。

 「いえ、今回骸を晒すのはそちらの番ですよ。」

 向こうも向こうで飄々としてその言葉を流して送り返す。暖簾に腕押し、それとも糠に釘だろうか。ただ言葉は余裕綽々としているものの、額には青筋が浮かび上がっており相当頭に来ているというのは見ただけでも分かってしまう。因みにこれはコナラさんも同じだ、こんなに顔に出やすい人だっただろうか。

 「さっき使った玩具は今修復中なのでね、こっちを使いますよ。」

 そう言って後ろに控えている多種多様な生物を組み合わせて趣味の悪いパッチワークの人形みたいにした奇妙な生命体を繰り出してくる。その中に森の中で会ったあのカマキリも含まれていた。やっぱり自然界にいる虫じゃなくて遺伝子工学によって生み出されたものだったか。

 「生き物を玩具呼ばわり、本当訳わからない。」

 「私からしたら愛してると言いながら殺して生態を見る貴方たちの方がサイコだと思いますが。」

 ああいえばこう言う、舌戦を繰り広げながらも互いに武器を取り出して隙を見せる瞬間を伺っている。この挑発合戦も恐らくしびれを切らせるためなのだろう。頭に血を登らせて隙だらけにして叩く作戦なのだろう。

 「って、おお。」

 そうやってコナラさんたちの方に注視していた結果、にじり寄ってきていた継ぎ接ぎになった蜘蛛の間合いに入っていたことに気が付かなかった。

 前腕がカマキリの腕を移植され、腹部からはサソリの尻尾が生えている。お前それだと糸出せなくないか。

 「そこから糸だすんかよっ。」

 兎に角槍を構えて迎撃態勢に移行していたら、まさかの口から糸を吐き出してきた。それ鋏角に糸が絡まって食事の時に不便じゃないかな。まあそんなこと考えられて作られてないんだろう。ただ敵を屠るだけの為に作られた悲しき獣、いやまあ多足類を獣と呼称するべきなのかどうかは疑問が残るけどさ。

 「ええい、蜘蛛との戦闘はもう慣れてるんだよっ。」

 飛んできた糸を回避して攻勢に出る。あいつらと戦ううえで気をつけないといけないことは、突発的な組みつきだ。やつらは自然界を生きる生粋のハンター、トラップに入らないのだったら自分の足で捕らえるのみ。そんな生活をずっと繰り返しているのだ。それにこいつはどうなのかは知らないが、鋭い鋏角に噛みつかれたら毒を流し込まれる。そっち方面も厄介だ。

 だから俺がすべきことは一瞬の動きを見逃さないで攻撃を仕掛けることだ。蜘蛛の視界は360度と全方位に精通している、死角を突くということはまず不可能だ。奴が見せた一瞬の隙を叩く、その前に捕まらないように動くのが最適解なのだ。

 「貰いっ。」

 糸ではなく前腕の鎌で捕らえようとしてきた攻撃を躱し、その勢いのまま槍を叩きつけようとする。今までの蜘蛛であったら確実に通った攻撃だが、異常なまでに柔軟な尻尾によってその攻撃は防がれてしまう。

 「…そんな動きしたら節ぶっ壊れるだろ。」

 ぐにゃり、一体元の生物はどんな感じだったのだろうか。兎に角生き物として何か侮辱めいたものを感じますねえ。

 「うえっ、気色わるっ。」

 フソウ君の方に行った奴もまた気色の悪い見た目をしていた。猿の体にタコの頭、腕はイカで足は猛禽類という異色なものだ。体は陸上だというのに軟体で、ぐにゃぐにゃと動いている。そりゃあ気色悪いという第一印象は正しいだろう。

 「あなた達やっぱり狂ってるでしょっ。」

 もう見た目に耐えられなくなったヤナギさんがそう声をあげて魔術を放つ。空間に放たれた赤く燃え上がる熱エネルギーを内包した球体が、異常な彼らへと降り注いでいく。

 「堕ちろっ。メギド!」

 そして俺らも巻き込んで盛大に赤く辺りを燃やしていった。


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