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出撃

セミ、鳴き始めましたね。

 「お、クヌギさん……と切りさ」

 「どうもー白蛙でーす。」

 フソウ君が何かを言う前に、亜紀が言わせないぞと言わんばかりにインターセプトする。もう一度フソウ君は口を開こうとするが、何を見たのかそのまま開けた口から言葉を発さずに排気を空へと送るだけになっている。

 「おーおー、うちの若いのを脅さないでもらおうか。」

 見たことの無い男の人がフソウ君を庇うように前に出てくる。俺より全然大きいな、多分2メートルはあるんじゃないだろうか。日常ではそんなに目線を上げることのない俺でも首を斜め上にあげないと顔をしっかり見えないのだもの。

 「いーえ、脅したつもりなんてないっす。」

 白々しくそう答える亜紀、もとい白蛙。いやあのタイミングで遮るのは確実に脅しだぞ、しかも睨みつけながらだともっとだ。

 「……へえ。」

 何か面白いものを見たかのように反応するヤナギさん、その目は俺と白蛙を往ったり来たりしている。なんだ、リアルの関係性でも知りたいのか。

 「何か面白かったっすか、ヤナギさん。」

 「いえ、何でも。」

 含んだものの内容に気づいたのか、ヤナギさんに対してもそう聞いていく白蛙。だが今回のは音色が違ってくる。さっきまでのは言ったらどうなるか分かっているなというもので、今回のは言わないでくれという懇願に近いものだった。

 「ハハハ、お前さんのも弱点があったんだなぁあ。」

 また豪快に笑う男、フソウ君やヤナギさんが何も言わない辺りフィールドワークのメンバーなのだろう。そう頭の中で推理していると、俺の疑問に気づいたのかああと頭を掻いて自己紹介を始める。

 「そういえば新人にはまだ名乗って無かったな、俺はマツブサって言うんだ。」

 「フィールドワークじゃ私たちより珍しい植物専門。」

 マツブサさんが自分の説明を続けようとした瞬間に後ろからまたもや被せる人がいた。その声の主はコナラさん、あなたもそっち側の人でしたか。

 しかし、うちらって植物も専門にしている人いたんですね。てっきり動物限定かと思っていましたよ。

 「おほん、さて現状を説明しようか。」

 かぶされたことに言及せずに流れを戻そうと咳払いする、まあこのままだと脱線しそうになるからな。

 「今俺らフィールドワークは敵対勢力であるチーム:ラボと戦闘状態に入った。」

 やっぱり敵対勢力か、そしてあのキメラたちはそいつらが生み出した生物兵器だということか。ごめん運営、俺お前らの正気度を疑ってたよ。

 「外周部は今戦場と化している、人数は向こう側の傭兵が多く若干押されている状態だ。」

 質より数の力押し、一騎当千という言葉があるように名将は雑兵千人に勝るが、それ以上にはなれない。フィールドワークのメンバーがいくら強いといわれていても、向こうが何度も人材を集めて送ってくるだけでこっちの消耗は激しいものとなる。

 「それに防衛線を突破してきてるものもいるだろう、向こうで耐えている奴らの為にもさっさと見つける。それが俺らの今の目標だ。」

 聞いていた全員に力が入る、若干名気にしていないような奴がいるが今回は気にしないことにする。向こうの頑張りの為にも、俺らがさっさと作戦成功させてやらないと。

 むふっとカグヤも力が入っているのか鼻息を荒げてぎゅっと握りこぶしを作っている、言葉の意味が分かっているけども、これは周りの雰囲気に流されている感じだな。

 「さあ、探索に出るぞ。」

 そういってドアを開ける、ゾロゾロと出ていく人達を見ていると、まるで出兵を見送っている気分になる。いや俺もそっち側になるんですけどもね。

 「いいかカグヤ、絶対に離れるなよ。」

 「うんっ!」

 指切りげんまん指切った、昔よくやってた奴をカグヤともする。これは俺への戒めでもある、絶対にカグヤを置いて行かないという。


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