夜明け前
サブタイトルは苦肉の策です。
「なあ、コナラさんは合流出来てたか。」
山小屋へと逆戻りしている間、向こうの状況をある程度知っておこうと思い亜紀にそう聞く。コナラさんの合流が一番だと考えている向こうにもういるのであれば、もう行動に移れる段階にあるだろう。俺もそろそろカグヤたちの様子が気になる所だったし、そっちもちょっと聞きたいところだ。
「あー、あの人なら確か下の方でお仲間に治療されてたっす。」
なんだか頭の中から精一杯振り絞って拙い記憶をなんとか形にしたような言い方だった。援軍が来たと言っていたがもしかして全員別れた状態でこっちに来ているのだろうか。それとも亜紀が独断専行している状態なのだろうか。……いやそれはないな、亜紀は偶に抜けている所があるけども周りを見てどうするべきかをしっかり考えられる奴だからな。
「多分もう合流してると思うっす!」
さっきの迷ったような言い方を止めてニッと笑いながらそう答えてくる。少しだけ、少しだけドキっとしたのは見慣れない顔だったからか、それとも。
「さあ、早く戻るっすよ!」
「コナラさん大丈夫ですかそれっ。」
山小屋、援軍に肩を担がれた状態で運び込まれた副団長の姿は痛々しいものだった。手足には大量の包帯が巻かれており、先端はどす黒い血の色で染まっている。顔にもあまり生気が無く今にも倒れてしまいそうなイメージが与えられる。
「おうヤナギ落ち着け、お前の力が必要だ。」
担ぎ上げていたのは同じフィールドワークのメンバーで唯一植物の調査を専攻にしている団員、マツブサだった。
「こいつは呪いでできた傷だ、俺の力じゃ治せてもすぐにこうなっちまう。」
マツブサは神官系のジョブを取得している、ヒーラーと呼ばれる立ち位置にいる人物だ。入ってきたときに何故治していなかったのか気になっていたがそういう事だったのか。
神官系なら猶更解呪の術などお手の物だと思うかもしれないが、それが出来ない事情があるのだ。こいつはカッコいいからという理由で邪神の僕というジョブに付いている、簡単に言えば邪神官という奴だ。このジョブは自身への呪い耐性を絶対のものにする代わりに、解呪の術などが一切使えなくなるデメリットがあるのだ。
「分かった、全くそんなジョブとるからこんなことになるのよ。」
そういってアイテム欄から真っ白な杖を取り出す。これは一日に使える回数制限がある代わりに、ジョブクラスを超えた精神力が関係する技を全て使えるという代物で当然魔術だけでなく回復や蘇生、解呪などの行動が可能になる万能なアイテムなのだ。
「白枝の慈悲よ、彼女に掛かった災いを取り除き給え。」
そういって杖をコナラにむかって振る、すると血は止まらないもののその顔から抜け落ちていた生気は取り戻され赤を通り越して黒であった血の色も正常のものへと戻っていった。
「……ありがと。」
ふうとようやく一息つけたコナラがそうぐったりしながらそう言ってくる、こんなレベルの呪いをかけられたなんて相手のレベルは相当ヤバイのだろう。
「……敵はチーム:ラボ。」
私の心の中を読んだのか、それともクヌギさんみたくそんなに分かり易い顔していただろうか。
「そういうこと、だから俺らが援軍に来たってわけよ。」
「俺らって今あんた一人だけじゃん。」
今まで黙っていたフソウが口を開く、タイミングを見計らっているなんてコイツらしくなかったと思うんだけども。
「今外周部で雇われ兵共と戦っている、多分研究員共とも。」
もうドンパチは始まってる、そう伝えてくる。
「こっちが主戦場になるのも時間の問題だ、早く探して勝ち越しちまおう。」
「全く、後からきたマツブサさんが仕切らないでください。」
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