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援軍

このターン指定したモンスターの攻撃力が500ポイントアップする。

どうも。

男たちを排除したのはよかった、あの程度の敵がいるから今回の競争は玉石混合だということが分かったからだ。

 だが同時に良くないことも分かってしまっている。向こうは傭兵を雇うなりして人員をかけ争奪戦に参加しに来ている、石と戦い続けるのはいいが玉と戦闘が続いたら負けてしまう。特に俺は石よりは上だけど玉ではない原石程度の価値しかない、磨かれていない原石などただ光るだけの石に過ぎず、玉によって駆逐されるのである。

 「頼むからさっきみたいに烏合の衆だけ来てくれ。」

 ゲームの主人公だったり漫画のワンシーンなら間違いなく俺の成長フラグだろう。一人だけで行動して周りには敵だらけ、包囲網を突破する余力を残しながらの捜索なんて。

 でもここは確かにゲームだが俺は主人公ではない、このゲームは全てのプレイヤーが主人公であり、等しくモブでもある。俺だけの成長フラグなんてものは存在しないし、俺だけのイベントなんて都合のいいものも起きることはない。

 偶然なんてものはない、これは昆虫採集の醍醐味を教えてくれた祖父がよく言っていたものだ。偶然、偶々、そんな言葉はあるけどもそうなるように自らが仕組んだ見えない必然で、それだというのに私たちがそのことに気づいていないから思いもしないことが起きたように見えてしまうのだとか。

 例えば偶然カブトムシがいる木を見つけたとしよう、これを祖父の観念から言うとそこに行くこと自体が自らは無意識下で仕組んだ行動で、発見するという結果に結びつけているのだとか。

 運がいいのもそうなるように行動した結果、それが祖父の考え方だ。

 つまり結局のところ自分がどうにかできる範囲を超えてしまえば、もう偶然という運命のいたずらにも似た現象は発生しなくなるのだ。まあ確かにそうだろう、宝くじだって買わなければ当たらないし、仕事だって行動しなければ失敗も成功もない。

 「つまるところ、災害相手なんてできるわけではないということっすよね。行動すら取れないってことっすから。」

 ゾクッ、後ろから女性の声がかけられる。今までこのゲーム内では聞いたことの無い声、だけども日常においてよく耳にするこの声は

 「亜紀、か。」

 後ろを振り返る、そこには黒を基調とした死神を連想させる服装に身を包んだ女性が立っていた。体格とかそういったものは現実と同じにしているようで、背丈は変わらないものの髪や目が大分違う。まあそれは俺もだけど。

 「先輩、ゲーム内ではそういうのご法度ですよ。」

 むうとむくれた顔をしてそう注意してくる、何でもゲーム内にリアル関係を持ち込むのはあまりよろしくないのだと。

 「私のゲーム内ネームは白蛙、ハクアと読みます。」

 白い蛙ねえ、その服装的にどっちかっていうとアルビノじゃなくてメラニズムじゃないかね。

 「俺は前教えたと思うけどクヌギ。」

 よろしくと手を前に出す、普段あってるけど握手でもしておこうぜ。

 「ええもう、リアルで知り合ってるじゃないですかー。」

 「おいおい、リアル持ち込み禁止なんじゃないのか。」

 さっそく自分が言ったことを覆す亜紀、もとい白蛙。それを指摘されるとテヘっと舌を出してまああざといポーズをとる。無駄だぞ亜紀、私にその攻撃は効かんよ。

 「そういえばどうしてここに。」

 まさか俺を探してここまで来てくれたのだろうか、やだもうそれってネットストーカーも真っ青な行動力よ。正直怖いぞ、亜紀って偶になんか背筋を凍らせるような気配出してる時あるからな。

 「援軍っす!」

 そういって懐から何か巻物のようなものを出す、死神みたいな見た目だけどそれされると忍者にしか見えないな。俺の装備と交換するか、なんつって。

 「装備交換は後で一考するので、ともかく聞いてください。」

 「なあ何でお前ら心読めるんだよ。」

 俺のその心からの疑問には答えずに亜紀はスラスラと中身を読み始める。

 中身は団長からのもので、援軍を送ろうにも人員が思いのほか拘束されていること、それに加えて辺り一帯で妨害が続き集まったメンバーが立ち往生している状態らしい。そのため部外者に協力を仰いで集まったものを送っている、とのこと。

 「もしかして俺がちょん切ったのって……。」

 もしかしてこちら側の増援部隊だったのだろうか、少し汗を垂らしながらそう思い始める。

 「いや増援は今小屋の方に集中してますよ、こっちに来たのは私だけっす。」

 よかった、同士討ちをしていたらわざわざ自分の首絞めたことを後悔する所だったよ。

 「兎に角、皆が待ってるっす。せんp……クヌギさんいきましょっ。」

 先輩と言おうとした亜紀が途中で無理矢理変えていってくる、まあ今回は不問としましょう。


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