追討令
最近サブタイトルが浮かばなくなりました、語彙力落ちたかな。
「おいお前ら、絶対逃がすんじゃないぞっ。」
野太い男の声が辺り一面に広がっている、その声に従って一人の女を追い回す集団も一緒に見えてくる。追われている女はコナラ、呪いによる状態異常を受けながらも襲撃を難なく捌いては前に進んで走っていく。
「……鬱陶しい、さっさと帰ってクソでもしてな。」
普段の彼女からは想像も出来ない汚い言葉が口の中から飛び出しては飛びかかってくる野郎共を返り討ちにしている。この集団はそこまで強い部類に入らないようだ。
「おいお前ら、手負いの女一人捕まえられないで何ができるんだっ。」
口だけは達者な男が後塵を拝しながらずっと捲し立てる。そんな男の命令を聞いているのかいないのか、少なくとも男も檄ではなくその裏にあるものを得る為だけに進んでは弾き飛ばされている。
「おい、邪魔すんなよっ。」
「そっちこそ俺の足引っ張ってんじゃねーぞ。」
しかも相手の集団戦練度が酷すぎて目も当てられない。誰もが自分の攻撃を一番としているために味方だけ巻き込んではコナラに切り伏せられる。そう、協調性という文字が頭から抜け落ちたかのような個人技だらけの集団戦なのだ。まあ普通に考えて状態異常のコナラ一人落とせてない時点で明白なのだが。
「何あなた達、コントがしたいなら外でやって。」
いがみ合いを続けていた二人を華麗に一太刀で黙らせると、そのまま後ろに控えていたプレイヤーを一人、また一人と切り伏せる。副団長を襲うにはレベルも装備も、そして何より練度が足りなかった。
「おい、お前ら失敗したらどうなるのか分かってるんだろ。命かけてでもタマ取ってこいっ。」
恐らくこいつらは誰かに雇われた雑兵なのだろう、もしこれが主戦力なのだとしたらもう少し戦い方とか人付き合いとか、そういう人として集団として行動することへの勉強だとか、思いやりの心を養った方がいい、絶対に。
いくら発破をかけたところで雑魚は雑魚、イワシがマグロに敵うだろうか。そんなもの火を見るよりも明らかだろうに。
「……ふん。」
辺り一面生物だったものが転がっている、切り落とされてまだポリゴン消失していない人体部分だ。手負いのコナラ一人倒せなかった、誰も知らないであろう傭兵団はこの時点で競争から脱落した。
「……こんなことしてる暇じゃないのに。」
段々と呪いが体中を蝕み始める、進行度が次の段階に行こうとしているのだ。手先が薄だいだい色から紫へと変わっていく、それと同時に皮膚が剥がれ赤黒くなった血液が指先からポタリポタリと地面に落ちていく。その体液が付着した植物は瞬く間に枯れて死んでいく。
人を呪わば穴二つ、呪具蟲毒の性質は猛毒の呪いを互いに付与するものであり、使用者は時間経過でどんどん蝕まれていく。蝕まれれば体は毒々しい色へと変貌し、皮膚下を流れる血液は全て本人すらを地獄送りにする猛毒と化す。そしてこの毒は解毒剤では解除できず、呪い自体を消しとらない限り継続する。
「……。」
急いで剥がれ落ちた部分に布を巻きつける、痛覚設定を抜けてやってくる痛みに顔をしかめながらもきつく無理矢理にでも止血する。もう少しの辛抱だ、合流すればこの呪いも解くことができる、山小屋まであともう少しだ。
「後続が来る前にさっさと行かないと。」
今の体ではもう武器も持てないだろう、無様にやられる前に早く走って行ってしまおう。
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