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本番での危機回避能力

私にはありません

 「だーっ、お前らウザすぎるんだよ。」

 二匹が回りをかき乱しながら、死にたがりの特攻野郎たちが組みついて酸を吹きかけようと躍起になりながら突っ込んでくる。片方だけの相手なら楽に済むだろうに、この編成にしたやつは戦略が分かる奴だ。数の暴力で一を圧倒する、対プレイヤーにはもってこいの使い捨て兵器と言えるだろう。これ考えた奴とは絶対仲良くできないと思うけども。

 特攻隊の一匹がその腕を利用して組みついてくる。背中に付かれたせいもあって攻撃を入れることも振りほどくことも難しい。成程、こいつらの腕はこういったことの為につかうのかと、当事者意識を忘れながらそう考えた。でもそれなら人の手じゃなくて他の鉤爪状の腕にしてグリップ力を上げるとかしたほうがいいんじゃないだろうか。

 「あっつ、やっぱそうなるよなぁ。」

 背中で蟻が爆発する、途端に背中に熱湯をかけられたようなヒリっとする熱さが肌を侵略し始める。ヤケドするレベルでは無いのかもしれないけども、ヒリヒリとするこの感覚だけは痛覚を貫通してくるのか最悪だ。

 「……でももうこれでお前らの爆弾はあと一つだけだぜ。」

 持続的に効果のあるあいつらの酸だが、俺程度も倒せないぐらいのダメージしか与えることができない。こいつらの真価はこの酸よりも見た目のえげつなさにあるのかもしれない。ようはアブだとかトラフカミキリとかがスズメバチに擬態するのと同じで、こうやって不気味な見た目になるのが第一の武器なのだろう。

 これからは確実に俺のターンだ、今まで攻勢に上手く出ることができなかったがここで戦略家となっている二匹のうち片方でも落としきれば確実にこちらのもの、負けるはずなど無いのだ。

 「ほらそういう事だ、さっき以上に苛烈に行くぜ。」

 走りこむ、それと同時に今まで使用してこなかった装備スキル「隠密」を発動する。正直ロベリアがいるのならこのスキルの使い道無かっただろうけど、今なら十全にどのスキルよりも有効に有用に扱うことができる。

 今まで突っ込んできていた一匹が目標を見失ったかのように辺りをキョロキョロと見回している、俺のことが見えていないのだ。

 スキル隠密、効果はその名の通り的に発覚されることを避ける逃走または潜伏用のスキルだ。このスキルは俺自身を消しているのではなく、回りにいる相手の視野を狭めているというもので、普段なら確実に見られている現状でも避けることができるようになるのだ。

 何故それを最初にしなかったのかというと、流石に数いる相手を誤魔化せるスキルではないからだ。囲まれてたし少なくとも一匹に見つかる状態だと意味が無くなってしまうからな。

 突撃野郎を無視して二匹に近づく、もちろん視線に入り込まないよう気をつけてだが。奴らは俺の気配すら感じ取れていないのだろう、滞空は続けるものの前にも横にも行かずにずっと同じ場所にいる。

 「偃月。」

 後ろに回って強烈な振り下ろしを思いっきり叩き込む、お前が倒れれば残る爆弾は機能しなくなるだろう、さっさとくたばってくれ。

 「ミツケタ。」

 だが予想外のことがあった、さっきまで頭脳として立ち回っていたもう一匹の知将が目も触れずに勢いよく飛びかかってきた。そしてそのままさっきと同じように組みついてくる。それに乗じて特攻野郎もまた俺に組みつきにくる、流石に三体同時爆発を受けて耐えられる程俺は硬くない。

 それに俺の体力は残り6割、鋼の意志の効果範囲外だ。ここでやられてしまうと麓のベースキャンプ地にリスポーンだ、作戦に支障をきたしてしまう。

 「これだけはしたくなかったけどっ。」

 三匹が同時に爆発する寸前、自身の足に手短に持った槍をぶっ刺す。そうマッチポンプ、発動範囲外なら発動できる範囲内にもっていけばいいじゃないという悪魔な戦法だ。

 そして同時に回復薬を口に含む、爆発と同時に飲むことでスリップダメージを無効化する算段だ。一発勝負、果たして成功するのか。

 三匹の腹が弾けて酸の散弾を辺りにまき散らす、爆風ダメージも相まって俺へのダメージは、本来なら消し飛ばす所まで来ている。鋼の意志の効果で一だけ耐えた状態だ。

 そしてそうなる寸前に回復効果を割り込む、これによって瞬時に回復。スリップダメージを回避することに成功する。

 「……マジか、成功した。」

 本番に強いタイプでは無いのだけども、まあよかったよかった。終わり良ければ総て良しって言葉があるじゃない、うんそういうことだよ。

 後ろを振り返る、まだ小屋から煙は立っていない。


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