表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

115/186

キメラ

某漫画のキメラア〇ト編ってなんか記憶に残りますよね。

 「いてて、痛みは無くてもいててのて。」

 さっき追突された場所をついついさすってしまう、こればかりは癖でどうしようもないものだ。実際痛覚を閉じていたとしても、脳は追突されたという事実から身体に損傷が出たと認識しようとする。その結果、別に痛みも何ともないというのに、患部でもできたかのように何処か落ち着かなくなるのだ。

 「やっぱりまだこの世界に慣れていないんだな。」

 俺的には結構やっているつもりなのだが、まだこの環境に慣れていないのだろう。いい加減に適応しないと、ただ時間かけただけの人間になってしまう。まあこれゲームだからそうだったとしても別に構わないのだけどもさ、例えそうであっても何かいやなことってあるじゃん。

 「でももっと嫌なのはちゃんと。」

 そう言って思いっきり槍を振り抜く、その穂先は何かを捉え青緑色の液体を周囲にまき散らす。見えないというのに羽音を立ててちゃ自分の位置ばらしているようなものだろうよ、お前の開発担当は相当頭が回らなかったか、結構プレイヤーを考えていると見えるぞ。

 「ってなんだお前、その見た目はよお。」

 切りかかった羽虫、確かにあの音や体液からして俺が切った生き物は虫だったはずだ。だというのに俺の目の前に落ちていたのは人の腕だった。見間違えるはずがない、いつも見ている俺ら人間の腕だ。それも二本、俺の槍で断ち切ったのだろう。

 苦痛でその姿をようやく現す、羽虫それも翅蟻の体に人の体のパーツが組み込まれている。手足に人のもの、顔も人のものだ。おいおい運営、さっきから悪趣味過ぎないか。

 「キマイラって奴かこれ、自然界にいていいものじゃないだろ。」

 いくらここがゲームだからと言ってここまで冒涜的な存在がいていいはずが無いだろう。もはやこれは生き物ではない、アンデットとかそういった悪魔や死霊系の魔物だろう。生命溢れるこんな場所にいていい生き物じゃない。

 「きわめて生命への侮辱を感じるフォルムだな本当。」

 まだ残された腕を使ってどうにか立ち上がろうとしている蟻人間、顔が普通にそこら辺にいそうな顔をしているのが何より不気味で恐ろしい。兎に角精神衛生面でもここで始末してしまおう、恨むならお前たちをそんな見た目で作り上げたアートディレクターたちにするんだな。

 「助けてぇ、殺してぇ。」

 掲げた槍がおもわず止まる、この蟻言葉を話し出した。ずっと同じ助けてと殺してを譫言にように繰り返しているだけだけども、まるで救済と死を望む実験された被験体みたいなことを言っている。

 「助けてぇぇぇええええ。」

 振り下ろす手が鈍っていると、途端強烈な叫び声をあげて口から刺激臭のする蟻酸を吐き出してくる。おい、蟻は口からじゃなくてケツから放出するだろうが、お前みたいに吐しゃ物攻撃じゃないんだぞ。

 蟻酸のかかった個所がブシュウを音を立てて爛れ始める、肉の焦げる香りが鼻を侵略し、胸のムカつきを誘発する。しかもこの臭いの源が俺だというのがさらに吐き気を冗長させる。

 「ああ今楽にしてやるよ(助けてやるよ)。」

 流石に人の顔してようがなんだろうが関係なくなった、お前はもう外敵だ。そうやって振り切った頭で体を冷静に動かす。穂先を確実に脳天に取らせるために足で腹を押さえ、勢いよく突き刺す。

 「助け……て……ありが…。」

 最後にもしかしてありがとうと言おうとしたのだろうか、言い切ることができないまま絶命していった。

 「……ふう、悪趣味すぎるだろ。」

 あまりにも生命というものを軽視した姿に、この助けを求める要素。これを設計した奴はそうとうイカれた野郎だろう。頭を割ってその中身を見てみたいものだよ。

 「……まだいるな。」

 ぶうんぶうんと割と重めの羽音が辺り一帯から鳴り響く、その数およそ5匹。

 「ふう……掛かってきな、もうタネは割れてるんだよ。」

 槍を肩に乗っけながらそう挑発する、おらさっさと掛かってきな。


ブックマーク評価感想よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ