山へ
今日の0時でなく、明日の0時に設定していました。遅れて申し訳ありません
木々の間隔が広がり始め、木の背丈もまた段々と短くなり始める。高山地帯へと足を進めた結果だろう、ここはそれでも始まりの地点に過ぎないのだがな。
「さて、合流地点はと。」
先ほど聞いていた地点に着いたか、マップを開いて確認する。どうやら場所的にもう少し登った地点にある山小屋のようで、ここからまた山登りする必要があるらしい。
「カグヤ、ダンゾー、セレスト、疲れてないか。」
俺はまだ進めるが、誰かが疲労困憊なら休憩が必要だろう。この土の間から顔を出しているゴツゴツとした岩は予想以上に体力を奪うだろう、もし戦闘が続いたらいつも以上に消耗するのが早くなる。休めるうちに休むのが、この山岳地帯で最も賢い行動だろう。
「だいじょぶ!」
カグヤはここに来る途中までセレストに乗っかっていたこともあり大丈夫だそうで、ぐっと親指を上げてサムズアップしている。本当最近子供らしさに拍車が掛かってきたな、運営は俺の父性をこれ以上上げるなんて、何が狙いだというんだろうか。
さて、ダンゾーの方は大丈夫だろうか。怪我の様子はどうなっているのだろうか、包帯を解いて確認してみる。もう塞がっていて、先ほどより傷口が盛り上がっている。脱皮しないでここまで回復できるのなら、なかなかに回復薬の凄さが分かるのではないだろうか。
セレストの方も体力にはまだまだ余裕があるようで、走れるとアピールするかのようにグイグイを頭を振って綱を刺激してくる。それだけ体力が有り余ってくれているのなら助かるのだが、これからの道険しくなるだろうから走ることは無いぞ。
「さ、気をつけて進むぞ。」
『いや待って、ワタシには何も無いんですかぁ!?』
「……いやだってお前腰にぶら下がってるだけじゃん。」
『ごもっともっ……。』
「さっきからなかなかに面白いものを見つけるなぁ。」
あれは恐らくカナヘビ系が元ネタなトカゲだろうか、ちょろちょろと動き回っていて可愛らしい。どれ捕まえてみようか、そう思って懐かしき手の構えを取る。カナヘビの取り方として正しいものは一つ、体を抑え込むことだ。
どうしても尻尾の方が掴みやすく、そこを押さえてしまう人がいるが、それではただ自切を促すだけで捕獲なんてできるはずがない。まあトカゲにも自切可能回数は決まっている為、中には切らない奴もいたりするのだが。
「…まあ見てろって。」
なんかダンゾーが駄目そうなやつを見る眼でこっちを見つめてくる。いやいや、大丈夫だって安心しな。これでも昔は一日で十匹のカナヘビを取って友人に分けたりしていたんだぞ、今更ヘボ踏むはずが無いだろう。
「ほらこうやって。」
日向ぼっこして体温を上げているトカゲにゆっくりと腕を近づけていく。こうやって日向に出ている時は食後で、消化を進める為に体温を上げに来ていることが大半だという。
つまり今、こいつは瞬時に動くことができないということだ。そうねらい目、今こそが油断を突く瞬間だ。
「……あっ。」
そうやって上から押さえ込んだ結果がこれだった。どうやら見た目はカナヘビだったけども、体の感じはニホントカゲのものだった。どんなものかというと、体表がスベスベしているのだ。そう、逃げやすい体のつくりになっているのだ。
押さえ込んだ手を自慢のぬめりですり抜けて、そのまま岩の隙間へとその姿を消していった。後ろから来た視線はやっぱりといったもの、そこのカグヤまで加わっていた。
「……こほん、遊んでないでさっさと進めということだな。」
咳払いしてなんとか誤魔化そうとする。ここにもし仲間の一人でもいたら恥ずかしくていたたまれなかっただろう。
『いやぁ、流石にその誤魔化し方はねぇ……。』
いた、そういえば言語を理解してうるさい厄介な蛤がいたじゃないか。
「黙っておけよ」
『善処しますね。』
絶対何処かでこいつは口を滑らせる、何となくだがそう思う。口滑らしたら何してやろうか、塩分濃度でも上げてやろうか。いや、そうじゃないな。
「もし喋ったらシジミにしてやるからな。」
淡水に放り込む、汽水域なんて生温い普通の湖沼にだ。今すぐには叶わないだろうけども、探せば何処かにあるだろう。
口止めの材料を色々と探しながらそのまま進むのであった。
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