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科学VSオカルト

あれぇ、おかしいなこうなるはずでは無かったんだけども。

 どうしようか、勝ち目がさらに薄くなってしまったな。正直に言ってこの結果は予想外だった。奥義三千世界を使って倒せなかったものはほとんどいなかったし、あそこまでいったら勝ったと思ってしまうのはしょうがないのではないだろうか。

 もはやホースから出る勢いある水というより消防車の放水並みに威力のついた毒液を回避しながらそう考える。さっきまでの勝率はおよそ4割程度はあったが、今は2割残っていればまだ良い方だろう。あまり見せたくは無いけどもやはり必殺技を喰らわせないといけないようだ。

 「おや、考え事しながら避けるなんて随分余裕そうだねぇ。」

 向こうはもう万に一つも負ける要素など無いとでも思っているようで、青白く外敵を寄せ付けない絶対の壁に守られながら余裕綽々な態度でこっちを見降ろしてくる。

 「直線的、見てから回避余裕でした。」

 「ほう、そんなこと言ってしまうんだな。」

 煽り耐性いきなり下がったね、カルシウム足りてないんじゃないかな。毎日ちゃんと栄養摂取しないと健康的に生きられないよ、研究者失格じゃないかな。

 「失礼なことを考えていそうだね。それとカルシウムの話だが、イライラするまで欠乏するには栄養失調にでもならないと無理だよ。」

 イライラを隠せず貧乏ゆすりをしながらも、超えてはいけないライン上に留まる為に理論然とした話をしてくる。

 「それだから胸が育たない。」

 「誰が妖怪ムネナシじゃあごらぁあっ。」

 あ、怒った。何となくだけどリアル方面で胸が大きくない動きをしていたから気づいた違和感だった。腕を振る間隔だったり、胸ポケットからの取り出しに手間取っていたりと、確実に無い人が盛った結果の動きだったからね。

 「そこまで言ってな」

 「言ったも同然じゃあ、吐いた唾飲み込ませんぞワレぇ。」

 もういい、そういってまたモタモタと胸内ポケットから薬品を取り出して、今度は注入せずにそのまま振りかけ始める。くう、バリアに内側から強化するなんて、なんて卑怯な奴なんだ。

 「さあ、人のコンプレックス刺激したあの女をさっさと潰しなさい。」

 顔に青筋を浮かべた状態でムカデにそう命令を出す。メキメキとまた体がはち切れんばかりに肥大化し、その体を二回りほど大きくする。

 また毒液を吐いてくる、しかしこれはさっきと打って変わって散弾状に発射され辺り一面に拡散されて降り注ぐ。これを回避するのは造作もないことだが、そうなると如何せん防戦一方になってしまい面白くない。

 かと言って攻勢にでればもろにこの酸性の猛毒を浴びて一発退場だろう。さっきの薬品によって強化された以上、もうちょっと警戒レベルを上げておかないといけない。

 「そうそう、いいよ。あは、最高傑作かも。」

 この毒、酸以上に厄介なのは着弾時の威力の方かもしれない。いま横に着弾して木が吹っ飛んでいった。これはカウンター狙いしか勝ち目無くなってしまったかも。

 まあ済んでしまったことは仕方がない、煽った私のせいであるのだから。でもその煽りも仕方がないものだった、だって気になるのだもの。あの不自然さはどうしても自然を観察するものとして指摘する以外どうすればよかったのだろうか。

 「ふふ、ククク、防戦一方じゃない。貧乳いじりを倒す時ほど気持ちのいいものはないね。」

 もう勝った気でいるみたいだ、ここから逆転される屈辱でもプレゼントしてあげようかな。今装備している刀をアイテムボックスに送り、代わりに自身の影から禍々しいオーラを放つ太刀を取り出す。

 「……へえ。」

 ずっと笑みを浮かべ薄ら笑いまでずっと繰り返していた表情が真顔になる。流石にこのレベルの品物がどれ程危険なのか、相手も理解しているようだ。

 「それ、どれだけ切ってきたの。」

 「さあ。」

 鞘を放り投げて抜く。刀身はどす黒い紫色をしていて、確実にいわく付きだと強調してくる。

 「目覚めなさい、『蟲毒』」

 そういってこの武器の銘を開放する、途端辺り一面に異様な空間が広がり始める。足元からはツチハンミョウにムカデ、ゲジにスズメバチと、ありとあらゆる毒を持った生物が現れては死んでいく。

 「科学をオカルトで破る気?」

 「貴方を倒すならこの程度で十分。」

 「ほざけっ。」

 ムカデの顔が勢いよく迫ってくるがそれを避けそのまま顔に傷をつけて横移動を続ける。毒が中に入り込み苦悶の声をあげる、が流石にそれだけだ。まだ大丈夫だと言いたげに首を振ってまたこちらを標的に定めて首を勢いよく突進させてくる。

 「…なんだ、毒で殺そうというのなら無理な話よ。」

 私の狙いに気づいたでも言うかのように呆れた声を勝手に出して、嘲笑を投げかけてくる。うるさいな、これから良い所が来るというのにさ。

 「……整った。」

 通算九回目の傷をつける、普通の生き物だったら三回目でアナフィラキシーを起こしたかのように死んでいくのに、やっぱり丈夫だな。あわよくばは狙ってたんだけど。

 あとはタイミングだ、今発動しても決定打にはならない。ただ一つ言えることは、私の牙はもう奴を捉えたという事だけだ。


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