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進む者、追う者

最近暑いですね、クーラーつけたくなりますよ。

 「せいっ」

 休憩中にやってきて、何処からともなく飛び出してくる猿を切る。こいつらはさっきのと違って全然統率が取れていなく、また投石などの厄介な行動を取らないため戦いやすいことこの上ない。

 それに一体一体の火力が高くないことだけが共通している為、レベルがそこまで高くない俺でも少ない攻撃で倒すことができる。倒せなくとも入り込んだ毒でそのままノックアウトだ。

 「群れで差でもあるのか、手ごたえが無さすぎる。」

 猿やチンパンジーといった霊長類に分類される哺乳類は頭脳が優れていることで知られているが、そんな彼らだが地域によってとる行動が変わってくることは知っているだろうか。

 とある観光地では猿が観光客からスマホや時計などの貴重品を盗み、餌の交渉を行うようになったという研究報告もある。また日本のとある動物園で、火を恐れずに暖を取るようになった集団の話もある。

 何故こうも地域差が出るのかと言えば、彼らは基本群れの中でしか知識の継承を行わないからだ。人間が栄えたことの一つにスキルの継承があるが、ここが人間と類人猿などの差だと言われている。

 つまりさっきの奴らは集団で確実に倒すという統率の取られた戦闘方法を実践し続けた群れだということだ。そしてこいつらは個人技だけで戦い続けた集団だ。

 「風車、一網打尽だぜ。」

 まさしくなで斬り、久しぶりに使った範囲攻撃を十分に活用して蹴散らす。学習能力というのは本当に厄介なものだ、もしこいつらがしっかり他の群れから学習していたらこうも楽に行くことは無かったからな。

 「セレスト、落ち着いたか。」

 ある程度倒すとビビったのか、猿たちは尻尾を撒いて逃げ出した。これでようやく気が休まるし、皆の傷がどうなったのかに注力できる。

 「ダンゾー、怪我の具合はどうだ。」

 回復薬を塗った患部を見る為に包帯を一度剥がす。もう肉がくっついて修繕を始めているようで、これなら包帯を巻きなおすだけで十分だろう。よかったよかった。

 「セレストは、目立った外傷も無いし息も落ち着いてきたか。」

 ブルブルと鼻を振ってもう走れるほど体力を回復したと訴えかけてくる。これならもう出発しても大丈夫だろう。

 「カグヤ、行こうか。」

 今度はカグヤを前に乗せて走らせようか、木々の間隔もまあそれなりに開けてきたし枝が突き刺さることもないだろう。それに前にいてくれた方がまだ庇うことができる、覆い被さることができるからな。

 「セレスト、また頼むぞ。」

 首をポンポンと叩いて発破をかける、その心意気に反応するように嘶いてまたその脚を前へと進ませていく。やはりセレストはただの馬じゃあないな。

 


 「止まった。」

 場所は離れて外周部付近、逃走を続けるコナラに移る。今まで執拗に追ってきていたムカデが途端に動きを止める。そう動かない、体を方向転換させて戻るのでもなくじっと同じ体勢を取ったまま固まったかのように動かないのだ。

 ここが活動限界地点なのだろうか、それとも止まるよう命令が出たのだろうか。前者なら喜ばしいことで、ここから迂回して範囲内に入らないように合流地点を目指せばいいだろう。だがもし後者なら、私一人だけでは恐らく勝てる相手ではないだろう。

 「おや、日和見集団の副団長様ではありませんか。」

 後者が確定した。ムカデの上から一人分の影が現れる、服装は白衣であの忌々しい連中であることを一瞬で理解させられる。

 「危険思想のテロリストよりはマシ。」

 「それは僥倖(なにより)、私たちもあなた達よりはマシだと思っていますので。」

 お互い口を開けばただ相手をディスる言葉しか出てこない。それもそのはず、基本理念がもう真逆の地点にあるのだから、仲良くする方が無理あるだろう。

 「何故こんな所に。」

 「それはあなた達が一番知っているのでは。」

 心の中で舌打ちをする。流石に自分たちだけが情報を独占できているなんて思ってもいないが、それでもコイツらが知っているのだけは避けたかった。

 「さて、ここで昔受けた恩を返しておきましょうか。」

 そういってムカデが臨戦態勢をとる。何が恩だ、そういうのは復讐と呼ぶのだ。

 「一人になったことを後悔してもらいましょうか。」

 副団長と因縁のクラン対決は、誰も見ていない外周部にて行われるのであった。


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