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真化

いきなり接続数が跳ね上がったのですが、何かあったのでしょうか……。

これからもよろしくお願いします。

 セレストの姿がどんどん変化していく、薄らぼんやりした頭でもその程度のことは分かる。銀の鬣が風に靡いている、青鹿毛の体はどんどん真っ黒へと変化し、真っ赤に染まった目は段々と理性の色を取り戻していく。そして何よりも額から出てきた鋭い角が印象的だろうか。

 眩暈の状態異常が切れてくる。さっきまで靄のかかったような脳はようやく雲の隙間から日光を浴びせられるようになってきた。簡単に言えば何とか現状を認識できるようになったということだ。

 「セレスト、お前ただの馬じゃなかったんだな。」

 ようやく眩暈の引いた目でその姿を見ることができるようになる。ユニコーンのようなその見た目、だが体色やその目から真逆のものに見えるのは残念なことだろう。まあ男である俺を乗せている時点でユニコーンでは無いだろうけども。

 というかいつの間にあの集団から出ることができたのか。それすら分からない状態に陥るとか眩暈判定厳しすぎないですかね、これ弱体化してくれないと鋼の意志の意味が……。

 「ゴフルルル。」

 段々と減速を始める、鼻血によって妨げられてきた呼吸がようやく落ち着いてできるようになったからだろうか。いやよく低酸素血症にならずに走れたな。簡単に言えば何枚もマスクを重ねた状態で登山マラソンしているようなものだからな、走れる方が異常なのだ。

 そしてついに一歩も動かなくなる、別に死んだわけではないがな。ここまで走って逃げてくれたんだ、よっと背から降りて休ませてやろう。アイテム欄から大きめの桶を取り出してそこに水を注ぎこむ。セレストはそこからがぶがぶと水を摂取していく。鼻血はどうなったのだろうか、止まってくれていると幸いだが。

 「ダンゾー、背中の傷大丈夫か。」

 ダンゾーは普段より弱った姿で俺の前に躍り出る。先ほどカグヤを庇って受けた傷を見るが、結構深く刺さったようで内部が抉れてしまっている。これだと薬草だけじゃ駄目かもしれない。

 「沁みるかもしれないけど暴れるなよ。」

 そういって回復薬を取り出す。飲めば瞬時に体力を回復し、患部に塗ればたちまち傷を治していく代物だ。ただこれは等級が低いからそこまで早く治せないけども、薬草を練りこむよりは断然こっちの方がいい。

 直接かけると不味いかもしれないが、南無三、我慢してくれ。傷口に薬が塗られていく。多分激痛なのだろう、足を暴れさせようとしてはどうにか止めると繰り返している。見ていて辛いがそれでもやらなければならない、塗り切ってから包帯を巻く。

 「よく堪えた。」

 暴れず、癇癪を起して噛みつくこともなく耐えきったダンゾーを褒める。今できることはそれぐらいだからだ。

 「チャットが送れない、何が起きてるんだ。」

 とにかく現状を伝えようとチャットを開こうとするが、システムが応答していませんというメッセージが流れるだけで反応しない。もしかしてこれも妨害の一つなのだろうか。

 連絡機は先ほどコナラさんに預けたまま別れてしまったため、今俺の手元には連絡手段がない。目的地は山岳地帯となっているが、辺りの木が鬱蒼と茂ってしまっているため、視認性が悪くどこが山なのかも分からない。

 「まずは一旦セレストを休ませる、これに専念しよう。」

 セレストのスタミナ回復速度は目を見張るものがある、鼻血の影響さえなければもう数分すればまた走れるようになるだろう。その間にダンゾーの傷が塞がり始めれば御の字だ、馬体に揺られる程度なら可能の範囲内になるだろう。

 しかしあの図体のデカいカマキリにムカデ、一体どんな生態系をしていれなあんな生物がここで成長するのだろうか。あの見た目からしてもう成虫のはず、つまり人並の幼虫が必ずどこかにいるはずなのだ。

 「もしかしてあそこまで行けるのはほんの一握りなのだろうか。」

 幼少期に捕食されてごく一部だけ残るというのはまあ理解可能の範囲内だ、だけども人並を簡単に食べる奴がいるのだろうか、今まで会ってきた虫や魔物からしてあり得ないの一言が正しいはず。

 「本当にあいつらはここの生物なのだろうか。」

 もしかして外来種、何処の誰かも分からない馬の骨がまさか飼えなくなったとかで逃がした結果ああなったのではないのか。もしそうならこのテントウムシの少なさを招いたかもしれない。あいつらが捕食した可能性もあるのだから。

 「いつだって環境を壊すのは人間か。」

 妄想の範囲を抜けないことを仮定にしてそう呟く。もしそうだったら悲しいを通り越して怒りが湧いてくるだろうけども。


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