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7 勇者様降臨

 ババアはどうも私達の素性を知っているようだ。メアリーと二人して構える。


「何もかも見ていたからね?城壁の上からだけども」


 なんだ同業か。構えを解くとババアが語り出した。メアリーもババアだから手加減したんだね。あのパンチは鉄兜も砕く。


「あの戦は酷かったよ?指揮するのが今のへなちょこだろう?もうな、余裕で勝ててた戦だったんだ。勇者様がついてたしね?それをやらんでもいいにの、敵を殲滅させるんだって城壁の際まで呼び込んでね?だから彼処が城壁の際が最前線になっちまった。ワシは上から攻撃魔法を放ち続けるのがやっとだった。敵に腕利きの弓使いがいてねぇ」


 戦の話をし始める老人の話しは長いからね。まぁ、私達も当事者だし、へなちょこロビンの被害者の会があるなら入会したいよ。


「ワシ達魔法使いも弓使いにやられたり、凄い剛弓でねぇ。あたるとちぎれてくんだよ?あとは魔法使いすぎてMP切れで倒れたりねぇ。ワシは立ったまま気絶しとった…意識を取り戻すとお前さん達6人があの戦場の真ん中に立ってたのう。何故かへなちょこの手柄になってたが…」


 そのあとも、ババアが気絶してる間も、私達は知っている。魔法がなくなったあとは矢と投石が降ってくる。敵味方関係なく死んでいった。もちろん正面から飛んで来る矢も同じ感じだった。あ、あのポーション飲んだ上司の腕と首をもいだの腕利きの弓使いだったのか。ちょっとすっきり。


「で、そんな英雄がコンロかい?近衛隊辞めるのか?まぁ、好きにすればいい。自分の人生だ。あんなへなちょこに尽くす必要なんざないね」


「そうですね。なんだかすっきりしましたよ」


「そうだよね。あんなうんこもらしについてこうとは思わないよ?」


 ごそごそとババアが魔道コンロの魔石をはずし始めた。ちょっと大きな魔石をはめてくれた。


「よし、これで5年は持つだろうよ、毎度あり!魔道コンロ、サンキュッパだよ?」


 これはあれだね?3980ギルと見せかけて39800ギルだね?


「お、わかるかい?398000ギルだ、鋭いね?」


 魔道具高かったけど、隣の一口コンロ見ると同じ値段だった。まさか…値引きしたのかしら?


「ふふふ、戦友だからね?冒険者カードから引いておくよ?」


「うん、私のから引いといて?」


「良いの?メアリー?」


「うん、美味しい料理つくってね?」


 はっ!やられた!私だってそんなに料理できないよ?村に帰ったらお母さんに習おう。うん、そうしよう。


「それじゃババアまたね?」


「またよるよ。おばあちゃん」


 魔道具屋を出る頃には夕方になっていた。でも面と向かってババアは酷いよ?せめて心の中で留めて?お年寄りの戦の話は長いなぁ。宿舎に戻った。


 宿舎のベッドでゴロゴロしていると、見たことのない女性が廊下を歩いているのが開けっ放しの扉から見えた。誰?聞き耳を立ててみる。メアリーのイビキがうるさい。とりあえずそっと濡れたフキンをメアリーにかけておく。よし、静かになった。


 更に聞き耳をたてると、ひそひそと聞こえてくる声から推測するに、召喚された女勇者様のようだった。黒に近い、濃い茶色の髪が背中で揺れている。


 美人だからへなちょこロビンの部屋行きになるところを、自力で自分自身のステータスを確認し、勇者としての力を手に入れて、ロビンの指示で槍を突き出した右側の兵士を槍ごとぶん殴ったそうだ。ひしゃげる槍と鎧を見て、ロビンが漏らして今日の召喚は終了したそうだ。兵士は壁に投げつけたトマトみたいだったとか。


 部屋の開けっ放しの扉に張り付いて聞き耳を立てていたから、女勇者様にばれた。


「あら、貴女は見てない顔ですね?」


「がはぁ!!ちょっと、なにしてんのよ?マチルダぁ!!!」


 同時にメアリーが濡れフキンを弾き飛ばしながら起きた。あぁもう。どんなタイミングよ?


「マチルダって言うのね?貴女。私は今日召喚された、鈴木京子よ。日本からきた大学院生なの。今年23歳よ?よろしくね?キョーコで良いわよ」


「おいボールクラッシャー、やって良いことと悪いことがあるでしょ?寝ている、か弱くて美しい私に濡れフキンを被せるなんて、まずはそこに正座!そこのお姉さんは黙ってようか!こっちが先よ!」


「え?あ、はい。私も23歳だよ?よろしくね?勇者様」


 正座しながら答えると目の前には苦悩の梨を持つメアリーがいた。やめて、それが初めては嫌だ。


「もう、キョーコで良いって!」


「お姉さん勇者様なんだ。よろしくねキョーコ。私はメアリー。か弱き乙女よ?」


「うふふ、よろしくねメアリー。所で右手のそれは、乙女が持つには過激すぎない?」


「あ、やっぱりキョーコもそう思うよね?うん、乙女の私はこんなのはポイで、いけない娘にはげんこつだぞ?えい!」


 ガゴン。という音が響き、星がとんだ。目がチカチカする。そして絶対に縮んだ。座高縮んだよ?もしくは体に頭めり込んでない?


「ねぇ、メアリー?マチルダ息してないけど?」


「あれ?いっけなーい!私のげんこつは鉄兜も割るんだった!?キョーコは治療魔法使える?あ、痙攣し始めた…耳からも血が…」


 私は川原にいた。川の向こうにはひいおじいちゃんとひいおばあちゃんが手を振っているけど?あれ?ここどこだろう。向こうに行こうかしら?


「ハイヒール!」


 遠くの方でハイヒールと聞こえた。ひいおじいちゃんが「アップルかのう?」ひいおばあちゃんは「ピーチですよ」なにそれ?急激に意識が覚醒し始めた。


「ぐはぁ、ちょっと川原まで翔んでたわ。メアリーげんこつはやめて?えーとキョーコ助けてくれてありがとう」


「おかえりマチルダ。鼻血と耳血拭いてね?」


「まぁ、お互い様だからね?濡れフキンはやめて?私は渡りかけたよ?」


 キョーコから受け取ったハンカチで私は血を拭った。


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