67 決意
煙が収まる頃、食堂にはワナワナと震えるメアリーとヒルデさんが立ちすくむ。
「あいつは絶対にゆるさん!!」
「決めたわ。私はあの頃の私に戻るの。勇者様と魔王を倒した私に!!」
二人の決意を聞いた。丁度その時、宿にあの馬車が横付けされた。そして乗り込むメガネ、おばさん、キモデブハゲ、取り巻きたち。取り巻き達の数人が騎士の鎧を着て馬車の上に。そして走り去る馬車。
「まーちゃん、メアリーちゃん。作戦開始よ!!」
「ういうい!!」
「アイアイマム!!」
私たちは特殊遊撃隊。走り去った馬車を追いかける。シュババ!
ここは本来なら日中に走るべき道。モンスターが出る。そこそこのモンスターのはず。
「まーちゃん、メアリーちゃん。ここにはオークも出るからね?あとホブゴブリン」
オークも出るからね?ということはオークは少なそうだな。メインはホブゴブリンかな。確か、ホブゴブリンはゴブリンより強いけどオークより弱いくらいのモンスター。でも鎧着けて武器を持ってる。走りながら考える。シュババ!!
前を走る王の紋章の入った馬車はスピードは速いが、装甲は薄そう。昔見た街からの馬車は鉄の箱に見えたもん。前を行く馬車は豪華だけど木だね。馬車の煌々とする光にモンスターが集まってきた。ホブゴブリンだ。
車輪に巻き込まれるホブゴブリンもいるが、馬車に飛び付くホブゴブリンもいた。そして……
「ぐわ!?あ…」
「おい、オルテガ!!」
上に乗っていた騎士の一人が落ちた。ホブゴブリンの体当たりによって吹き飛ばされたからだ。無駄にキラキラした鎧が闇に落ちていく。断末魔の悲鳴が聞こえた。そして静寂。
「お前ら情けないぞ?せめて一緒に落ちろよ?」
少しスマートな鎧を着た騎士がいた。たぶんあいつがサムソンを刺した奴だ。そいつはホブゴブリンの首を刺し貫き馬車から落としていた。
「助かった。お前には負けるよ。ギード!」
そうか、ギードって言うんだね。覚えた。シュババ!
馬車が少しスピードをあげた。一人落ちたからかな。私達もスピードをあげる。シュババ!!
モンスターの第二陣だ。今度はオーク一体にホブゴブリン沢山。全部馬車に向かっていく。私たちには魔物避けの魔法と結界の魔法がヒルデさんによりかけられている。もちろん速く走ることができる魔法もね!シュババ!!
オークの棍棒が馬車の屋根を吹き飛ばす。豪華な鎧の人が巻き込まれてミンチになった。騎士は残り一人。ギードだ。屋根が吹き飛んだけど、客室部分は被害が無さそう。中には焦るメガネとおばさん、キモデブハゲと取り巻きが見えた。馬車が停車した。私達も止まる。
「おらぁ!!」
ギードの一撃が取り付いていたホブゴブリンを凪ぎ払う。手に持ったホブゴブリンの剣をオークに投げていた。残念!オークには刺さらない。
空が白み始める。かなり遠くだが、イモ村が見える。馬車が再び走り出した。
「まーちゃん、メアリーちゃん。イモ村で挟み撃ちにするわよ!連絡済みだからね!!」
ヒルデさんがお爺さんに連絡してくれたようだ。向こうも準備をするのだろう。
「おらぁ!!死ねや!!」
客室を開けたキモデブハゲが魔法を放った。ショボい火の玉だった。オークの顔に当たるも既にオークは追うことを諦めていた。私達も走り出した。シュババ!! *オークはヒルデさんがお肉と魔石にして持ち帰りました。
太陽が昇る。村の門にはお爺さんと門番をしていたとなりのおじさんと別の近所のおじさん。あとキョーコとジュリアが見える。シュババ!!
既にモンスターはいない。馬車が走り続ける。
「まーちゃん、メアリーちゃん、散って!!」
ヒルデさんの指示で道を外れる。門の向こう側でキラリと何か光った。その光が馬車に吸い込まれ、馬車が四散した。逃げ足す馬車馬、放り出されるギード。転げ落ちた客室内のキモデブハゲ達。
放り出されるギードが地面に激突。手足が変な方向剥いていた。そんなギードに幾つもの光が吸い込まれ、砂煙がまう。朝の風が、砂煙を運ぶと、そこには矢が大量に刺さっているギードの姿があった。門まで30メートルほどだろうか。鉢巻をしたジュリアがミスリルの弓を構えていた。
「サムソン、敵をとったよ!」
「ガハハハ!いい腕だな!ワシの弓と矢はどうだ?」
「最高よ?お爺さん!」
ギードに突き刺さっている矢を見る。竹矢だね。矢筈がミスリルだよ。これが光って見えたのかな。山に生えてる竹で作られた矢だ。手首辺りに当たったのは矢じりが見えた。この矢じりはあえて体内で留まるようにお爺さんが作った形状だった。確か子供の頃教わった。抜けるよりもダメージが高くなるって。鎧は関係なく貫通、体内で矢じりが壊れながら進んで深い部分で止まるそうだ。どういう仕組みかは分からなかった。
ジュリアとキョーコ、お爺さんと門番のおじさん二人がこっちに向かってきた。私達、特殊遊撃隊もキモデブハゲ達を包囲する。
ジュリアがギードの隣を通るとギードが立ち上がり襲おうとするが、キョーコの槍がギードの肩を貫いた。おじさん達の槍は足を大地に固定していた。
「いかせないよ?」
キョーコが疲れた顔で槍を繰り出していた。
「貴方が生きているのは知ってたよ?即死する場所は避けたし、そういう矢なんですって。助からないけど、なかなか死ねない矢だそうよ?ねぇ痛い?」
肩を貫かれ倒れたギードを見下ろしジュリアは訪ねていた。メアリーが興味津々で矢を見ていた。




