61 ある英雄の死
「まぁ、たくさん狩ったんですね!」
エリの言葉に歓喜の声をあげる草原に吹く風のメンバー達。査定が始まった。確かゴブリンの魔石は一つ1000ギルだっけ?
「ゴブリンの魔石、一つ1000ギルで引き取りますね?合計で7000ギルです。あと、ウルフの毛皮と牙が合計で5000ギルです。頑張った皆さんに、私の裁量で4000ギル追加で査定しておきます。毛皮綺麗に剥いでましたね!」
おい、ジュリア。どや顔しない。確かにゴブリンの魔石の代金は合ってたけどね?ウルフの肉とか、ゴブリンの処理の仕方とかさ?
「ありがとう!お姉さん!やった!半日で一人4000ギルになったんだ!」
草原に吹く風のメンバーが喜んでいた。ウンウン。嬉しいよね。
「お姉さん達、お先に失礼しますね?」
変な輩もでなかったし、良かった良かった。さて次は私達のというか、キョーコが採取を熱望したから行った採取の常設依頼。
「では次の方。あら?旅する乙女たちの皆さんか。ジュリア?仕事しないと!」
ジュリアがしぶしぶカウンターに入る。あれ?何時もならここでチラリズムを炸裂させるのになぜ?
「ほら、回りに若い男がいないからって嫌そうに仕事をしないの!」
「ほら、だしな?魔力草をだしな?」
そういう所を見られてるんだと思うよ?ほらあの辺りとか、向こうとか。見てる人は見てるからね?カウンターの上にみんなでむしった魔力草を束でだした。魔力草は全部で15束。薬草より見つけやすく、わりとある。
「ほら全部で1500ギルだ。受けとれ?」
がらが悪い。そして出された金額は1000ギルだ。ピンはねしやがって。後ろのギルドマスターのことは教えてあげない。
「おい、ジュリア?俺の部屋へこい。良いからこい。ポケットの金は置いてけ?エリ済まんが頼むな?」
「はい。さ、査定しなおしますね?まずは一旦お金を回収します。それで、魔力草は一束、1000ギルです。沢山ありがとうございます。こちら15000ギルです。午前中に薬草も出して頂けましたので、私の裁量で一束1500ギルで買取りしますね。だから、17500ギルです!パーティーの口座へ入れておきます」
ジュリア…酷いピンはねだよ。14000ギルピンはねしてたよ。ギルドマスターの部屋から拳骨が炸裂したであろう音が聞こえた。帰ったらヒルデさんに報告だな。
「おい、旅する乙女たち。俺の部屋へこい」
仕方ないから、三人あわせて部屋へ行く。
「誠に相すみませんでした」
土下座のジュリアがいた。なに?
「みんなごめん。どうしてもサムソンにちょっと良い武器を買ってあげたいんだ。お願い。見逃して?」
「どうしたのジュリア?」
ジュリアの顔が赤い。そうか。サムソンに惚れたか。サムソン大金星だ。
「なら、みんなで買おうよ?」
キョーコそれだとダメなんだと思うよ?
「私の苦悩の梨をプレゼントしようか?」
メアリー?ダメなんだよ。ジュリアが買った武器をプレゼントしたいんだ。それは武器ではなく拷問する道具だから。
「ジュリア自身で買ったものをプレゼントしたいのね?」
「うん。そうだよ。マチルダ。私はマチルダが恋敵だと思ってたんだ…」
「ジュリア…違うよ?サムソンは良い奴だけど。恋愛対象じゃないよ?むしろサムソンはメアリーを見る目付きがエロかったからね?私からこの剣を買ってプレゼントしたら?お爺さんの弟子の弟子の弟子が作ったのだから安いよ?でもあの竹光より切れる。たぶん私の持ってる刀と良い勝負しそうよ?どう?」
「そうなんだ…メアリーは違う気がするから大丈夫かな?それと、剣はいくらなの?」
「ふふふ?高いよ?これからジュリアがこのパーティーで真面目に仕事をしてもらうのと、次回食堂で食べるとき、みんなにおごりね?」
「…うん。ありがとう」
「いや、ちょっとまて?サムソンが私を見る目付きがエロかったって何よ?戦後すぐの時?最近はジュリアしか見てなかったじゃん!えー?サムソン大金星だよ!頑張ってね?ジュリア!」
「キャー恋ばなだわ!応援するよ!ジュリア!」
キャッキャと騒いでいたら、ギルドマスターに怒られた。全員鉄拳制裁は酷くない?
私から鋼の剣を買ったジュリアは大事そうに抱えていた。明日、門で渡すそうだ。ジュリアをからかうようにアパートへと戻った。
アパートへ戻るとヒルデさんが行き倒れている人を介抱していた。誰だろ?
「あ、みんな帰って来たのね?手伝って、ちょっと寝ちゃだめよ!く、こっちに帰って来なさい!帰ってきなさいってば!!帰ってこい、イシカワァぁぁぁ!帰ってこい!!くっ…ハイヒールじゃ効かない!?エクストラハイヒール!!ううう何で効かないの?ねぇ?上級ポーションある?2リットルくらい」
行き倒れの人から手槍かな、短かい槍がはえていた。刺されていたのか。背中から刺さり胸に突き抜けていた。側にいたジュリアが剣を落とした。上級ポーションはない。エクストラハイヒールの余韻で私、メアリー、キョーコのお肌がつるつるだ。あとイシカワって誰だ?
「…え?う、うそ?……サムソン、サムソン!?いやぁぁぁぁ」
倒れていたのはイシカワではなくサムソンだった。血塗れで私もメアリーも気がつかなかった。血塗れのサムソンにジュリアが抱きついて泣きじゃくる。見ていられないほどだ。本当に恋をしていたんだね。そんな空気が漂いサムソンに死の気配が色濃く包み始めたころキョーコの口が開いた。
「先に謝っておくね?この先、私は蘇生スキルは使えなくなる。誰かがこんな状況になっても使えないんだ…使うけどいい?」
「やって!キョーコ!」
「ためらうことないよ。私もメアリーも大丈夫!」
「ありがとう。マチルダ、メアリー。私はここで使わないと後悔しそう…だから…スキル実行!!」
ジュリアにもらい泣きしそうな私たちと、暖かな光に包まれたサムソン。涙を流しながら抱きしめ続けているジュリアを巻き込みながら光が溢れる。
今日はサムソンが死んだ日。メアリーの恋が悲しく終わった日。私達は忘れることができないだろう。




