52 冒険者ギルドのテンプレート
「そうそう、どちらの草も根っこは取らないでくださいね?」
崩れ落ちるジュリアの向こう側でエリが説明を追加した。どちらの草も根を残しておけば、また生えてくるそうだ。かつての勇者様たちはこぞって栽培を試みるも全滅。どうも肥料だけでは駄目なようだ。なにか必要な条件があるらしいがはっきりとしなかった。
「すみません。生まれてすみません。ごめんなさい。ゆるしてください。反省してますから、背中のだけでも外して?」
卑屈になったジュリアが懇願するから、エリが外しに来た。うう優しい娘だよ。幸せになってね。エリが幸せにならないと私達は幸せになっちゃダメな気がするから。そっとマジックバッグから取り出したリンゴを渡した。
「うふふ。ありがとうございます。この間のリンゴも美味しかったですよ?もちろん袖の下も皆で美味しくいただきました」
うわあぁ?ちょっとエリが黒いぞ?そこも含めてエリの魅力なんだね。エリは魔性の女だよ。崩れ落ちたジュリアを立たせてギルドを後にした。
門まできた。今日もサムソンは門番している。
「おーい、サムソーン!」
「相変わらず門番なんだね、サムソンは。膝に矢でも受けたか?」
「お、マチルダにメアリー。それと勇者様だっけ?あとそこの美人は何故元気がないんだ?」
サムソンの美人の言葉でジュリアは復活した。さっきより元気だぞ?
「あら?美人って私のことですか?フフフ?門番さんの言葉で元気が出ました。門番さん、が、ん、ば!」
当社比1.25倍でボディタッチ多めのジュリアにサムソンが顔を赤らめていた。所でメアリー?
「あ、そうそう、近衛の隊長さんも門番とか衛兵とかやるってよ?ウキウキだったぜ?まぁ確かにあいつの近衛するならこっちの方が良いわな。あの時、俺は勇者様の言葉を無視してでも捨ててくれば良かったかもな…」
「あのう、採取依頼なんで通っても良いですか?」
しびれを切らしたキョーコが切り出した。なんでそんなにウキウキなのか教えてよ。
「だって、私からしてみると、異世界ですよ?ギルドで採取依頼ですよ?ギルドに初めて入った時のテンプレはなかったのが残念だけどね?でもこれが私の異世界で、はじめてのお仕事」
ギルドに初めて入った時のテンプレ。これは自称ベテランの冒険者が、勇者様や新人冒険者に絡む一連の行動だ。わりと良くある。何故私達は会わなかったか?それはベテランがいる時間に依頼を受けていないし、人が大量にいる所で物を売っていないから。ポーションも芋も倉庫で買取だったしね。自称ベテランは窓口でないと絡んでこない。
「キョーコ、採取したのを窓口で渡せば、たぶん絡まれるよ?」
倉庫で大量のものを渡している、新人というにはトウのたった女4人組(ジュリアは見た目だけ外れるかも?)に、いちゃもんを付ける輩がいれば頭がかわいそうな人、残念な人としてその名を轟かすことだろう。そんな輩の噂は聞かないので、いないと思いたい。でも新人は絡まれるって聞いた。特に絡まれるのがちょっと仕事に慣れてきた新人。
「おっと時の刻みは俺だけの物じゃないな。悪かった。通ってくれ。そっちの美人も気を落とさずがんばれよ?きっといいことあるからさ。みんな怪我のないようにな?」
「はう!?二度も美人って…私のことを心配してくれる…ぬふぅ!!」
ジュリアそれ出しちゃダメな声だよ?双子じゃないんだから。それ以前にぬふぅなんて乙女が出していい声ではないから。同時に絶頂に達したときの声だからね?
「おう、サムソン行ってくる!土産はゴブリンの生肝でいいかな?」
メアリーの生肝お土産発言にドン引きする周囲の人。あうう、こいつらだめだ。ほっとくと私の羞恥心が破裂する。とりあえず黙らせよう。キョーコ手伝って?あわてて二人を引っ張って門を出た。今日はいい天気だ。
城門を出て道なりに進む。進みながら疑問に思っていたことをギルド職員のジュリアに聞いてみた。
「ところでジュリア、なんでギルドで絡んでくる輩を、ギルドは見て見ぬふりなの?」
「え?あぁ、そうね。かかわって巻き込まれてケガしても何の得もないから。ギルド職員はかかわりません。喧嘩するなら外でやれよって思うね。ちなみにギルドマスターに見つかると喧嘩両成敗で殴られるよ?絡んだ冒険者とみて見ぬふりしてた職員ね。流石に新人さんはこういう輩に気をつけろよって言われるくらいだけどね」
おう。見て見ぬふりじゃなかった。鉄拳制裁だった。あのマッチョの鉄拳は痛そう。
「エリが受付したときにあってね…エリは私のために争わないでって言ったらぴったっと喧嘩が止まったのよ。私も真似したら、あざといって争っていた両サイドから言われて、ギルマスにげんこつ食らったよ…」
ジュリアの思い出話を聞いていたら、分岐に到着した。
「まずは薬草ね!そうするとあの森ね?」
「そうあの森の中に生えてるから。あの森にはたしかゴブリン、ワイルドボア、ウルフ、一角ウサギがでるかな。あと盗賊も…新人が狙われるのよ」
目を輝かせるキョーコにジュリアがギルド職員らしい仕事をしていた。大きな整備された道を外れるとそこは森になっている。森の中にはある程度の道ができていた。新人さんが毎日、毎年来るから草がなくなって道ができていた。整備された道を外れて、新人道を歩いていく。




