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44 寸劇の波

「ふー堪能したよ!」


 馬車組合ではずっとポタポタと水滴を垂らしていたメアリーが満足したようだ。ジュリアはもうびっしょり。


「美女だから水くらい滴るわよ?」


 へーきそーだね。


 馬車と馬を購入した私たちは、芋を売るのと、ジュリアの扱いをどうするかを話し合うために冒険者ギルドへ向かう。やんわり、いらないから持って帰れって言われたらどうしよう。もちろん芋ではない。ジュリア以外が何だかドキドキしていた。


 受付にはエリがいた。幸い空いててすぐに受付できた。


「エリ、戻ってきたよ?芋を売りたいのと、これ、お土産ね?」


「おかえりなさい。マチルダさん、メアリーさん、キョーコさん。それとジュリア。あとこちらはジュリアのお母様でよろしいでしょうか?」


「そうよー?ジュリアの母、ヒルデリアンよ?ヒルデって呼んでね?」


「それではお母様。ジュリアの問題行動のあれこれが、ギルドで問題になってまして…ジュリアを懲戒免職にする動きがあるんです。この後、ギルドマスターと話し合い時間をとってください。いただけますか?とか都合のつく日はの時間は過ぎました…今日、今からです。これ見ておいてください」


 エリに何か書かれている紙を渡された。話し合う予定ではあったけど。俯いて汗をだらだら流すジュリアを私たちは見つめていた。


「わぁ、素敵なネックレスですね!ありがとうございます。マチルダさん。似合いますか?」


 イモ村のお爺さんの弟子の一人がアクセサリーも作っていたから、銀で作られた牡丹の花をモチーフにしたトップがかわいいネックレスをエリにお土産として買った。


「うん。似合うね!流石エリだよ。可愛いよ?ところで、シルビアさんは今日出勤してる?」


「はい。出勤してます。今は外に出てますけど、お昼に食堂に行けば会えると思います。話し合いの後でお昼はそこで食べたらどうですか?」


 エリにお土産喜んで貰えた。良かった。ただジュリアの方は深刻だった。懲戒免職ですって。なに?なにした?紙を見ると、エリやその他の職員に対する暴行、冒険者に対する暴行、恥女疑惑などが挙げられていた。


「ジュリアちゃん…お母さん一緒に謝りに行くから…ね?」


「く、くそう…冤罪だ!冤罪だよ!?」


 あれを冤罪とは言えない。だって見てたもん。エリに飛び蹴り食らわす所とか、ジュリアを止めようとしたエリを引き摺って致命傷負わせたりだとか、若い新人冒険者がいるところでわざとか?と思えるようなパンチらとか、ボディータッチとか。


「…行くわよ?ジュリアちゃん?」


 部屋へ入ると、テーブル中央にギルドマスター、右にメガネ、左に知らないおばさんが座っていた。とりあえず、ギルドマスターの前にジュリアを座らせた。隣にはヒルデさん。私たちは後ろに座ろうか。


「それでは、ギルド受付のジュリアに対しての話し合いを始めます。まずはギルドマスターの挨拶」


 知らないおばさんは司会進行だった。メガネはランキングのメガネだよね?ジュリアに次ぐ。


「王の都、冒険者ギルドのマスターだ。お母さん、冒険者の皆、よろしく。この件は、ここの冒険者ギルドが始まって以来の事件と思っていただきたい。それだけ深刻だ。まさか下着を盗むとは。ジュリア覚悟は?」


「はぁ?なにそれ?私はやってない!黙れはげ!そこのキモいの!メガネ割るぞ!おばさん臭さがうつる!帰れ!土に還れ!」


 ジュリアが暴れだした。


「そろそろ白状しなさい?エリをはじめ、ギルドの女性職員の下着を盗んだのはお前だな?この腐ったミカンが!」


「ふん。小娘が。どうせ回りの職員の人気を恨んでの犯行でしょ?それで下着はどこなの?それとも誰かに売り付けたのかしら?」


 あれ?議題と違う?エリの下着を盗むとはふてぇ野郎だ!メアリーさん、キョーコさんやっておしまい?


「ちょっとギルドマスター?先ほどエリちゃんが渡してくれた紙と違うんですけどー?」


「先ほど追加されたんだ。只でさえ余罪がゴロゴロあるからな。エリに対する暴行他は、一応本人達から取り下げるよう訴えが上がってるんだがなぁ。多すぎる」


 お金で解決したから。ここでさらに訴えてきてたらエリは人気でないよ?出来なかったのはわざとらしいパンチらとかボディタッチかな。


「私はやってない!このくそ野郎共!くたばれ!」


 ジュリアのビンタが、メガネの頬に炸裂した。その瞬間、扉が開かれた。おいメガネ、ごほうび頂きましたって顔すんじゃねぇ!キモいぞ!


「スタァァッープ!お前は王の都とその民に対し罪を犯した。何か釈明はあるか?」


「あ、サムソンだ。お疲れ様。今日は衛兵もやる日なの?」


「黙れ!ってあれ?マチルダか、ここ決め台詞だから、ちょっと黙ってて?お願い」


 怒られた。衛兵さんこと、サムソン他数名がジュリアに対して迫っていた。衛兵さんはこいつらと癒着してるんじゃないかと、思える早さで来たけど、我が国の衛兵さんは優秀だから早い。操作ミスって、店のものを盗ってしまってもすぐ来る。チョー早い。膝に矢を受けてるはずなのに早い。


「釈明などあるかぁー!私はやってない!くそう!冤罪だった場合、てめえら土下座してもらうからなぁ!!」


「罪人が暴れてるぞ!捕まえろ!」


 飛び交う罵声、殴られて吹き飛ぶメガネ、飛び蹴りが顔面にめり込むおばさん。何とかジュリアを止めようと、衛兵に食って掛かるも衛兵三人に押さえられるギルドマスター。ギルドマスターを踏みつけるメアリー。泣いているヒルデさん。唖然としてみる私とキョーコ。


 衛兵さんに取り押さえられ縄をかけられるジュリア。そのまま連行されギルドの建物を出て、外に停められていた馬車の荷台にのせられる。城の取調室につれていかれるのだろう。他の罪人ものってる。


 進み出す馬車の最後列にジュリアは座った。走り出すヒルデさん。しばらく走るも追い付けない。ジュリアが連れていかれて崩れ落ち、馬車に手を伸ばし泣き叫ぶヒルデさん。


 ずっと心に響くフルコーラスの挿入歌が聴こえている。


 何?これ?うるっとしちゃうじゃない…ううう感動だよ~と気を取られてたらメアリーとキョーコも連行された。あれ?ちょっと!メアリーはともかくキョーコは何もしてないよ?仕方ないからヒルデさんと追いかけた。うお!ヒルデさん速い!さっきは何で追い付けなかったのよ。


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